新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『けいおん!』第2期、各話感想

BSプレミアムでの『けいおん!』再放送、その第2期について感想を書きました。

第1期の感想はこちら→『けいおん!』第1期、各話感想 - 新・怖いくらいに青い空

第1話「高3!」

第2期の最初ということで色々見所があるんですが、りっちゃん研究者としてまず第一に挙げたいのが、猫背気味で気だるそうに校歌を歌うりっちゃんの横顔が最高に美しかったという事ですね。あと、「廃部なんて駄目っス!」と言う唯に続いて「自分もそう思いマッス!」と力強く言うムギちゃんが最高に萌える。

第2話「整頓!」

トンちゃんを買うだけの蛇足回、だけど全然蛇足じゃないインパクトのある回。これは第2期全体にわたって言えることですが、話の本編とは全然関係のないキャラの何気ない仕草とか台詞とかが、何故かすごく印象に残っている。例えば、じゃんけんの前にやる腕をクロスさせるやつを唯がやって、それを見よう見まねでムギが真似するシーンとか、メチャクチャ可愛くないですか? あと、律がポケットに手を突っ込みながら制服パタパタさせてるのとか、マジで可愛すぎて何度もそこだけ見返してしまう。

第3話「ドラマー!」

りっちゃんで始まりりっちゃんで終わる奇跡の神回。ドラムやだ!とか言って泣きだすりっちゃん、ギターを持つりっちゃん、集合写真撮る時に背伸びしてるりっちゃん、ドラムを始めた頃の感動を思い出し笑顔でドラムを叩くりっちゃん、「みんなの姿を見ながらドラム叩くの大好きだ!」って宣言する笑顔のりっちゃん、マジで可愛すぎやろ…。素晴らしすぎだろ…。

第4話「修学旅行!」

新幹線の席で胡坐をかくりっちゃん可愛い。意外と方向音痴な和さん萌え。修学旅行の引率で教師然としてるさわ子先生が新鮮で良い。笑いのツボにはまって笑いを押さえきれない澪の演技が実に素晴らしい。声優の演技が全体的にすごく自然体で「ああ確かに、女子高生の修学旅行ってこんな空気感あるよなあ」と思う。

第5話「お留守番!」

憂が史上最高に可愛かったです。まず、純や梓と一緒に3年生の教室に行くところが何か可愛い。そして、お姉ちゃんが帰ってこないと気付き涙目になるのも勿論可愛いんですが、その直後のナレーションで気恥ずかしそうに「というわけで…」と言うところがまた最高に可愛いんです。この素晴らしさに気付いてない人は是非もう一回見直してみてください。

そして、憂に匹敵する可愛さだったのが純ちゃん。平沢家で泊まってる時に、ドーナツ食べ散らかすわ、梓に頭突きしてくるわ、勝手にマンガ読み出すわ、もうやりたい放題すぎてびっくりした。挙句の果てに梓も「友達無くすよ」とか言っちゃうし、口には出さないけど憂もムカついてたんじゃないかなあ。でも純からしたら、自分にだけ先輩からメールが送られてこなくてちょっと寂しいなとか思っていて、憂も梓もメールに夢中で構ってくれないから拗ねて漫画ばっかり読んでるわけですよ。本当は凄く繊細で寂しがり屋な子なんですよ、純ちゃんは! これは誰に感情移入して見るかによって、話の印象がガラリと変わるだろうなぁ。

第6話「梅雨!」

これも蛇足だけど蛇足じゃない不思議な回だわ。唯の制服のボタンを直すりっちゃん萌え。あと、唯と憂が一緒に歌う『あめふり』が凄く良かった。こういうアニメで童謡が流れると、普段何気なく耳にしているメロディが実に良く聴こえるから不思議だ。

第7話「お茶会!」

「律先輩、会費はいくら取る、なんて言い出さないでくださいよ」でクソ笑った。梓の律先輩ディスりもなかなか板についてきたな。澪ちゃんファンクラブのお茶会で意気揚々と司会を務めるりっちゃん可愛い。

第8話「進路!」

『うさぎとかめ』の音楽が良い感じ。余談ですが、『ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』でも同じように『うさぎとかめ』が流れてて、そちらも凄く良い映画なのでオススメ。小学生りっちゃんが可愛すぎて生きるのがつらい…。あずにゃん、律に向かって「昔は良い子だったんですね」って、そりゃないよ(笑)。澪から「やっぱり律に助けてもらうんじゃなかったかな」とか言われて、割とマジで泣きそうになってるりっちゃん萌え。

第9話「期末試験!」

進路の話の後で唐突に近所のおばあちゃん出てきたから、私はてっきり唯が福祉とか看護の学校に行きたいとか言い出すのかなあと思ってたけど、結局何の関係も無かったなぁ。あずにゃんの「ででれこでん」は至高。何の変哲もない公園でこじんまりと開催される演芸大会の絶妙なショボさがリアルで良い。

第10話「先生!」

さわ子「な、何よ、こんなとこまで電話して来て!」、律「な、何よ、こんな所に急に電話して来てぇ!」←微妙に間違ってるのが死ぬほど萌える。先生を尾行する時ムギちゃんが一番ノリノリで大爆笑。廊下に立たされてる時のりっちゃんの「忘れていたのかっ!」の言い方が可愛い。今から振り返ってみれば死ぬほど恥ずかしい青春時代の黒歴史、でもそれは完全に無かったことにしていいものなのか?というテーマは、『中二病でも恋がしたい!』『たまこまーけっと』へと連綿と受け継がれていますね。

第11話「暑い!」

部長会議(の練習)で反論に答えられないりっちゃんが死ぬほど可愛い。何というか、修学旅行で道を尋ねてる時も思ったけど、普段と違う場面ではいつもの明るい性格が封印されてモジモジしてるのが超可愛いんだよ!

第12話「夏フェス!」

下の参考記事でも言われていますが、夏フェスではしゃぐ澪をどこか冷めたような目で見つめる律が本当に素晴らしいですね。それと、部屋でスク水着たり(11話)、夏フェスで焼きそばに執着したり(12話)、駄菓子屋に興奮したり(14話)と、夏のムギちゃんは全体的にテンション高くて可愛いですね。

第13話「残暑見舞い!」

梓の夢が4回も挿入される不思議な回。この辺りから梓の「もうすぐ先輩たち居なくなっちゃうんだ、うわあああああ」的なセンチメンタルな内面が描かれることが多くなる。最終回までの1クールはずっとこんな調子なので、ぶっちゃげ少しくどい感じ。唯たちが3年生の時を2クールもかけてやってるので、まあこうなるのは仕方ないが、「やはり第2期も1クールでやれば良かったのでは?」と思ったりもする。

第14話「夏期講習!」

第1期の11話、13話、そして第2期の3話に匹敵する、りっちゃんファン歓喜の神回。ムギとりっちゃんのゲーセン&駄菓子屋デート、からの、予備校でのムギちゃん叩かれ大作戦、か~ら~の~、おデコ絆創膏りっちゃん様が最高に可愛くて萌え死ぬ。どのシーンも最高でメチャクチャ笑えるんだけど、でも一番大爆笑なのは、あずにゃんの「私ジャンケン弱いから嫌です」だよな。どんだけケーキ食いたいんだよ、あずにゃん…。

第15話「マラソン大会!」

マラソン大会でも安易に視聴者に媚びず、服装をジャージにするあたりが京アニの真骨頂ですよ。それにしても、こんなどうでもいい行事で丸々1話使うあたりが第2期の一番の特徴と言えるんじゃないでしょうか。唯はあの後、さわ子先生にメチャクチャ怒られて泣いてそう。

第16話「先輩!」

「私も大人になったら大人になるのかな」(2期10話)とか、「あずにゃんあずにゃん」(2期16話)といった、深いのかそうでないのか分からない唯の名言(迷言)は、そこはかとなく野比のび太臭がする。そのうち「なぜだ?なぜお菓子は食べると無くなるのだ?」とか言い出すんじゃないか。このままではいけない、自分を変えたい、と思っている人に対して「君はこのままでいいんだよ」と言って安心させる手法は、『日常』第16話における「なのちゃんはなのちゃん」に受け継がれています。

第17話「部室がない!」

「ムギちゃんがお茶なんか淹れるからだよぉ」「一番おかわりしたの唯ちゃんですぅ」は最初聞いた時、結構衝撃だった。あと、歌詞発表の場で自分だけ歌詞を発表せず(恥ずかしくて出来ない?)司会に徹してるりっちゃんの言動がいちいち可愛い。

第18話「主役!」

りっちゃんのいつもとは違う姿が満載の神回。梓に向かって「中野~!」って言いながら首絞めてくるりっちゃん可愛い。ブレザーのボタンをちゃんと閉めてる律が狂おしいほど可愛い。澪や聡に笑われて顔赤くしてるりっちゃんマジ天使。

第19話「ロミジュリ!」

ジュリエットりっちゃんという神々しい天使。ウインクする時まぶたピクピクしてるりっちゃん可愛い。あと、鬼太郎ちゃんこと木下しずかさんがメッチャかわいい。唯たちのクラスメイトの中で一番好き。

第20話「またまた学園祭!」

学園祭ライブもその後の部室での会話も最高でしたが、多くの記事で語り尽くされていることなので、この記事ではあえて律に焦点を絞って見ていこう。

これまで律は部長として、部のムードメーカーとして、常に元気いっぱいで皆を導いてきました。合宿や修学旅行で誰よりもはしゃいで楽しんでましたし、1年の時の学園祭では皆を笑わせて澪の緊張を解いてあげてました。その一方で、普段の律とは全く正反対の一面が垣間見えることが何度かありました。澪と喧嘩して落ち込んでしまったり、澪が書いた歌詞をラブレターと勘違いして動揺したり、部長会議の練習で言葉に詰まってしまったり、ジュリエットの台詞が気恥ずかしくて上手く演じることができなかったり。

それを踏まえた上で、今回の学園祭ライブを見てみましょう。唯のMCでジュリエットの台詞を言うようにせがまれてメッチャ恥ずかしがる。ようやく前に出てきたと思ったら、台詞を言い終わるやいなや、そそくさとドラムの位置に戻って恥ずかしそうにしてる。メンバー紹介の時も、他の皆が堂々と自分の気持ちを声にしていたのとは対照的に、一言挨拶しただけで次の曲に移ろうとしてる。これは本当に言葉では言い表せないくらい凄い描写だ…。

部活やクラスの中では常に明るくて活発で、澪をはじめとする周囲の人達を支えて引っ張っていくのが得意で、でも本当は繊細でシャイなところもあって自己表現が凄く苦手で…。この学園祭ライブの中に凝縮されているりっちゃんの素晴らしさ、皆さん理解していただけましたか?

第21話「卒業アルバム!」

賛否両論渦巻く第2期の中でも特に否定意見が多い第21話。何がいけなかったんやろうなぁ。やっぱ、推薦蹴って別の大学行く理由が「みんなと同じ大学行きたい」だけじゃ弱すぎるんじゃなかろうか。これが「皆とバンドを続けていくためにちゃんと音楽を勉強できる大学に行きたい」とかだったら、かなり印象が違っていたと思われる。

第22話「受験!」

陰鬱…。重い…。気持ちは分からんでもないけど、バレンタインのケーキ渡すだけでそんな動揺せんでもよくない?あずにゃん? ここら辺はちょっとねえ、2期が長くなり過ぎた弊害みたいなものが出てきてる感じするのよねえ。学園祭が終わってからの話はずっとこんな感じで、もうちょっと短くても良かったと思うけど、でもこればっかしは仕方ないのよねえ…。

第23話「放課後!」

傍から見れば「人生の無駄遣い」にしか見えないけれども、唯たちにとってはかけがえのない特別な時間。残りわずかしかないこの大切な時間をじっくりと噛みしめて、一点の後悔もないようにその全てを心の奥に深く刻み込もうとする姿。そこに涙はないけれども、視聴者はもう泣かずにはいられません。

第24話「卒業式!」

唯たちを徹底して泣かせない演出がすごい。文化祭ライブでは3年生が大泣きして、梓は一切泣いてなかったけど、今回はその逆。原作版では澪がラストでこらえきれずに泣いてたけど、アニメでは一切泣かせない。この徹底してる感じがホント凄いなぁ。

総評

卒業式の日、唯たちが梓に贈った曲が「天使にふれたよ!」でしたが、私たち視聴者は第1話の時点で天使に出会っていたのです。そう、りっちゃんという天使に。美しく輝くおデコも、その太陽のような笑顔も、時折見せる泣き顔も、その胸に宿る強さも弱さも、本当に全てが愛おしい。まさに地上に舞い降りた天使でしたね。

全体的なストーリーとしては、1クールで綺麗にまとまっていた第1期の方に軍配が上がりますが、日常の中に宿る唯たちの可愛さを生き生きと描いて見せたという意味では、第2期の方が格段に優れていました。例えば、澪=恥ずかしがり屋、紬=お嬢様キャラ、というような表面的・記号的な描写ではなく、各キャラクターがまるで本物の人間のように生き生きと描かれていました。そして、それらを実現するためにはやはり、2クールという長い時間が必要だったのでしょう。

けいおん!』第2期が放送されたのが2010年。あれから「日常系」と呼ばれる様々な作品が登場してきました。『Aチャンネル』『ゆゆ式』『きんいろモザイク』『ゆるゆり』『ご注文はうさぎですか?』、実にたくさんの名作が生まれましたが、『けいおん!』の素晴らしさは全く色褪せてはいません。これからもずっと、平成時代を代表するアニメとして語り継がれることでしょう。

残りの話数と劇場版については、また後日感想を書きます。

『かぐや様は告らせたい』のかぐや様が最高すぎる件

年末年始に『かぐや様は告らせたい』第1巻から第3巻までを読んだんですけど、これ、本当に素晴らしい漫画です。内容をざっくり言うと、エリートが集う名門校の生徒会長・白銀御行と、副会長・四宮かぐやは、もうすでに両想いの関係なんですが、2人とも超プライドが高くて「自分から告白したら負け」とか考えてるので、どうにかして相手に告らせようと奮闘する、っていうクッソ面倒くさい2人の描く学園ラブコメなんですが、以下の参考記事にもある通り、キャラクターがみんな魅力的で、特に、かぐや様が死ぬほどお可愛いんですよ!

『かぐや様は告らせたい』3巻、やっぱりかぐや様は大変お可愛いんですよ! | ヤマカム
『かぐや様は告らせたい』1~3巻が面白い!/告白一歩手前というラブコメの一番美味しいところ! やまなしなひび-Diary SIDE-

まず第一に、超一流企業のご令嬢らしいクールで清楚な外見がお可愛いんですが、そんな外見とは正反対の子どもっぽい行為をしてくるのが、ギャップ萌えで凄いお可愛いんですよね。

例えば、御行が持ってきたお弁当を見て目をキラキラ輝かせてもの欲しそうにしてる。お可愛い。使用人に勧められてネイルを付けてみたのに、それを御行が気付いてくれなくて拗ねる。お可愛い。御行に電話するだけなのに超テンパってあたふたしてる。超お可愛い。

それだけなら普通のラブコメとあまり変わらないんですが、かぐや様の場合、超プライドが高いので「子どもっぽいところを見られたら恥」みたいに考えて平静を装ってるんですね。御行のお弁当に入ってるタコさんウインナーが欲しくても、プライドが邪魔して言えない。携帯のアドレス知りたくても、自分から聞いたら負けなのできけない。実にお可愛い。

そんな感じで自分の感情を押し隠そうとしてるんだけど、全然隠しきれてなくてメッチャ表情に滲み出てるのも超お可愛いですし、そんな葛藤の末に、思考回路がパンクしちゃって言動がもう訳分かんないことになっちゃってるのがもう、最高にお可愛いんですね。

もうすでに多くの人が言っていることですが、とにかく、かぐや様の言動すべてが最高にお可愛いんですよ。

作者・赤坂アカさんの前作である『ib-インスタントバレット-』(関連記事:「インスタントバレット」、これは正義の物語ではなく悪者の物語でもない:ヤマカムセカンド)、その第一巻を読んだ瞬間から、この作者は天才だと思っていましたが、まさか次作がここまで素晴らしいとは…。個人的には、今、一番面白い漫画だと思いますね。

2016年下半期アニメ総評

2016年下半期に見たアニメの総評です。

上半期のアニメの総評はこちら→2016年上半期アニメ総評 - 新・怖いくらいに青い空

Re:ゼロから始める異世界生活

ナツキ・スバル、愚かだねえ…。やることなすこと全てが論理的じゃない。ただ感情に流されるまま、何も考えずに行動して、自分で自分の首を絞めていく。人の話を聞かずに突っ走って、闇雲に暴れまわって、他人を傷付け、自分を傷付けていく。そんな愚かさを反省するどころか、完全に開き直って、自分の心の醜い部分を臆面もなく曝け出して、周囲に喚き散らして、ますます自分を窮地に追い込んで行く。本当に、愚かだねえ…。

でも、愚かさもここまで突き詰めれば、伝説になる。特に、スバルが王都で心身ともに追い込まれていく第13話から第18話までは、悔しいけれど、メチャクチャ面白かった。その中でも第13話は、極限状態でただ闇雲に暴れることしかできなかった他の回とは異なり、ほぼ100%スバル側の落ち度、身から出た錆、弁明の余地なしという感じだったので、スバルの痛々しさと見苦しさが、その迫真の顔芸とも相まって、一番鮮明かつ印象的に描かれており、本作の白眉とも言える回だったと思う。

この美術部には問題がある!

以前の記事でも書いたように、内巻君が可愛すぎて生きるのがつらい…。次点で、宇佐美さんもメチャクチャ可愛かった。でも、他のキャラクターがすごく微妙。特に、部長とか立花先生はちょっとウザすぎて、こんなタイプの人とはなるべく関わり合いたくないなあって思ってしまった。

NEW GAME!

第4話で八神さんが「青葉が楽しそうな顔してるうちは大丈夫。ゲームがつまらなかったらあんな顔しない」って言ってたのが何故か印象に残っている。なんというか、「自分達の作ったものがちゃんと売れるか?」みたいな細かい心配をするのは、八神や遠山みたいにある程度キャリアを積んだ人の仕事で、入社して日が浅いうちはただ無我夢中で楽しみながらスキルを身につければそれでいい、という作中の仕事観みたいなものがよく表れてる台詞だと思うのだ。

一番好きなキャラはぶっちぎりで八神さんだった。良くも悪くもガサツであっけらかんとした性格のように見えて、意外とシャイで繊細だったりするのが可愛いのよね~。

91Days

最初は復讐のためにアヴィリオがネロに近づいただけだったのに、いつしか憎しみや怒りを超越した複雑な関係性になっていくというストーリーは、『僕だけがいない街』とも似ている。大切な人を奪われ、復讐を果たした後に、抜け殻のようになってしまったアヴィリオと、全てを失ってもなお「生」に執着し続けたネロ、という対比も良かった。

ラストの浜辺のシーンでネロはアヴィリオを殺したのだろうか。私は殺したと思う。ガラッシア・ファミリーの関係者(?)がネロ達の後をつけていた描写は、「ネロが殺そうが殺すまいが、どのみちアヴィリオは死ぬしかなかった」ということを表しているのだと思う。

第4話が丸々全て蛇足だったり、最終回が謎演出すぎて意図がよく分からなかったり、いくつかの不満点はあるが、何やかんやで最後まで楽しめた。

クオリディア・コード

アニメ『クオリディア・コード』総評 - 新・怖いくらいに青い空

上の記事に書いた通り。残念だねえ。期待していたのになあ。

クロムクロ

個人的にロボットアニメはあまり好きじゃないし、正直、2クールもかけてやる内容かと思う時も多かったけど、結局最後まで視聴できた。かと言って特段面白かったかと言えばそういうわけでもなく、終始可もなく不可もなくという感じ。

バーナード嬢曰く。

1話3分という短い時間でさわ子と神林が早口でセリフを捲し立てているのが気持ち良かった。久しぶりにキタエリの当たりキャラを見た、っていう感じ。エンディング曲も良かった。

ブレイブウィッチーズ

びっくりするほど前作と差があるなあ。作画にしろ、演出にしろ、ストーリーにしろ、本当に全てにおいて、『ストライクウィッチーズ』の方が優れていた。まあ、若干の思い出補正があるのは否定しないけどね。

才能のない人が努力によって這い上がり仲間から認められるまでを描くというのは分かるんだけど、主人公だけじゃなくて他キャラクターについても深く掘り下げていかないと、一体何のための502なのって話になる。視聴者に対して、【1】まずこの子はこんなキャラですってのを見せて、【2】次に実はこんな意外な一面もあるんだよという部分を見せて、【3】最後にそのキャラクターを形作る芯となる部分まで見せていく。501の方は、いつもハチャメチャなことやっているようで、そのへんはしっかりしていたんだけどなあ。

好きなキャラクターはロスマン先生。普段はクールで厳しい先生なのに、クルピンスキーがキャビアを台無しにした時は、メッチャ取り乱してて可愛い。だからこそ、もっと内面を掘り下げて描かないとダメだ。今作は各キャラせいぜい【2】くらいまでしか表現できてません。残念。

終末のイゼッタ

世間ではイゼッタとフィーネの百合描写が素晴らしいと言われているけれども、個人的にはその周辺に魅力的なキャラクターが多くて群像劇的な見方もできる作品だと思った。敵であるゲール側のキャラも、祖国への忠誠心や野望や復讐心など、それぞれ異なる動機に突き動かされて戦っているのがきちんと描かれ、作品に重厚感が増していた。台詞のほとんどないモブ(例えば、最終回でジークハルトを撃った新兵)に至るまで、かけがえのない物語を背負って生きているんだということが感じられた。

戦争映画で例えるなら、『史上最大の作戦』とかに近いものがあると思う。敵・味方に関係なく、それぞれの登場人物にそれぞれのドラマがあって、単なるイゼッタとフィーネの物語として終わっていないのが素晴らしい。

響け!ユーフォニアム2

『響け! ユーフォニアム2』総評 - 新・怖いくらいに青い空

上の記事で述べた通り。2016年のNo.1アニメでした。

フリップフラッパーズ

まだ最終回は見てないので、見終わったら感想書くかもしれない。

毎週楽しみに見ていた作品だけど、ちょっとよく分からないなあ、というのが正直なところ。ピュアイリュージョンとは一体なんなのか? ヤーコプ・フォン・ユクスキュル(作中に出てくるユクスキュルの元ネタと思われる人物)が提唱した「環世界」という概念と関係ありそうですが、まあ、よく分からないですね。

『響け! ユーフォニアム2』総評

ひとまず、各キャラについて、これまでいくつかの記事で述べてきたことをまとめました。

久美子の成長

すでに他の方も指摘している通り、第2期になって改めて、久美子役の黒沢ともよさんの演技の素晴らしさを実感できましたね。私の第1話の記事でも述べましたが、場面場面によって声のトーンがガラリと変わるのが本当に素晴らしかったです。葉月とかと一緒にいるとき(猫かぶりモード)は全然普通なのに、麗奈といるときは心底面白いものを見るような「隙あらばじゃんじゃんいじめてやるぞ~(ゲス顔)」みたいな声になって、家族や秀一の前ではとにかく面倒くさそうな無愛想な声になってる。この切り替えが素晴らしいんです!

あと、泣きながら必死に絞り出すようにあすか先輩に気持ちを伝える時の演技も良かったし、誰かに声かけられて「わっ」とか言って驚くときの声とか、面倒くさいことに遭遇してすごい嫌そうに話してる感じとか、もう今年のアニメで一二を争う名演だったんじゃないでしょうか。

一方、久美子の内面的成長という観点も第2期は特に強調して描かれていました。最初のころの久美子は自分の気持ちを極力表に出さない、エゴを通さない、ただ周囲に流されるだけ、という感じでした。それは、そうしているほうが人間関係の波風も立たなくて楽だし、そのぬるま湯的な場所からあえて出ていく明確な動機もなかったからでした。ところが、どんなことがあっても自分を曲げない麗奈や、親に言われるがまま吹奏楽を辞め大学に進んだ麻美子さんと心を通わせる中で、次第に自分も「後悔」しない選択をしたいと思うようになります。そして、最後に久美子は、自分の意志であすか先輩に戻ってきてほしい、一緒に全国に行きたい、と言うことができたわけです。

しかし、この作品において、そうやって自分のエゴを通すということは、それによって生じる「責任」を受け止めるということでもあるわけです。たとえば、年功序列じゃなくて一番上手い人がソロを吹くべきとエゴを通すことで、香織先輩はソロを吹けないということになります。これは「犠牲」と言い換えてもいいかもしれません。これは久美子の場合も例外ではなく、あすか先輩が戻ってくるということはまた、夏紀先輩が本番で吹けなくなるということを意味しているんですよね。そういった「犠牲」をすべて受け入れて、それでもなお「後悔」しない選択をしたいと、はっきり宣言することができたからこそ、ああ久美子は変わったんだなあと我々は強く実感できるわけですね。

小笠原晴香さんについて

以前記事でも書きましたが、まあとにかく晴香部長が可愛いんですよ。葵が退部して泣く、葉月たちが選抜メンバーのために演奏してくれた時も泣く、コンクールの後でも泣く、部の送別会でも泣く、とにかく泣き虫で、早見さんの泣き演技も素晴らしいんだ。

でも、こういう頼りなさそうな姿も良いんですが、慣れない仕事を任せられて頑張ってる姿もまた魅力的であります。あすかや麗奈は、どちらかと言うと天才型の人間であり、自分をあるがままに表現できれば十分に称賛されるだけの力がある人間であり、それを実行するために他人とぶつかることを恐れない人間なのです。でも、小笠原さんは、人前に出るのも緊張してしまうし、リーダー的な仕事もお世辞にも得意とは言えない、それでもなお皆のために一生懸命がんばってる姿、それが本当に尊いです。他の登場人物が自分のエゴを通そうとして他人とぶつかっていく中でも、部長だけは終始「皆のため」に行動していたように思うんですよね。

おそらく彼女は努力型の人間と言えるんじゃないでしょうか。駅ビルコンサートのソロだってきっと、緊張しても大丈夫なように、ものすごい努力をしてるんだと思う。部長の仕事だって、あすかに頼りっぱなしの自分を変えようと必死に努力して、当然つらいこともいっぱい経験したでしょう。それがあったからからこその、あの全国大会の後の大泣きなんだと思うと、本当にもう感動で胸が詰まりそうになりますよね。

あすか先輩の家庭問題

以前の記事でも述べた通り、作品で描かれているのは、個人のエゴとエゴとのぶつかり合いと言っても過言ではないわけです。例えば、テキトーに部活やる組と、全国を目指して頑張る組との対立。ソロパートは3年生が吹くべきだという主張と、最も実力のある者が吹くべきだという主張との対立。

なかでも第2期は、部活よりも将来のことを考えて勉強してほしいという親の論理と、後悔にしないように今の部活を頑張りたいという子の論理とのぶつかり合いが描かれていました。特に、あすかの場合、母親が異様なまでにヒステリックで、何としてでも部活をやめさせようと学校まで押しかけてくる人物として描かれていました。

ところが、これは原作を読んだ時も思ったのですが、久美子の説得によってあすかが部活に戻ると、母親の件はまるで何もなかったかのようになり、母親がその後登場することもなくて、「え~、あすか先輩の件はこれで終わりかよ~」と思いました。あすかが部に復帰しようと思い直したのは久美子のおかげではありますが、実際に戻ってこれるようになったのは、模試で良い成績をとって母親を説得したからという部分が大きいわけです。実際に、母親とあすかの問題が根本的に解決したわけではなく、作品でもそこに深く立ち入ろうとはしないんですよね。

だから作品の構成として「正直どうなのかなあ」と思う気持ちはあります。ちょっとだけでも母親が再登場してきて、これからあすかと新しい関係を築いていけるような描写があれば良かったのですが…。でも、家庭の問題が最後まで曖昧なままで終わり、久美子も他の誰も部活動から外れた問題については結局踏み込んでいけないという感じは、現実の部活動を見ても分かる通りすごくリアリティはあると思います。

みぞれと希美

みぞれと希美との関係の描き方もまた、あすかと母親の話と動揺の問題を抱えています。これについては以前の記事で嫌というほど述べているのですが、簡単に言うと、「努力は本当に報われるか」という作品のテーマと、「あすかは何故希美の復帰を認めないのか」という主軸となるストーリーとが上手く一致していないという問題です。散々話を引っ張っておいて、結局、みぞれさんが希美のこと大好きすぎて色々ややこしいことになってただけという。

でも、そういう欠点を補って余りあるほどに、みぞれと希美の関係性が魅力的に描かれていました。その描き方についても、原作とアニメでは大きく異なっていて、それぞれ別の良さがあるということは、第4話の感想記事で書いた通り。

その後も、文化祭で客より優先して希美にケーキを渡そうとするみぞれなど、イチャラブっぷりを見せつけていましたが、何といっても圧巻なのが、全国大会へ向かう途中のバスで2人が向き合うシーン。わずか数十秒のシーンですが、第1話の中学時代のバスのシーンともオーバーラップして、これまで2人の辿ってきた道がすべてこのシーンに集約しているようで、個人的に2期で一番好きなシーンでした。

みぞれさん、希美さん、これからも末永くお幸せに。

その他の登場人物

あすか先輩が部に戻ってきたときにメッチャ泣いてる梨子先輩かわいい。集合写真でもちゃっかり後藤の近くにいる梨子先輩かわいい。部一番のラブラブカップルとしてこれからも夏紀や久美子を支えていってほしいですね。

麗奈と優子に関しては、久美子の場合とは逆の成長を遂げたように思います。例えば優子は、第1期では「ソロは香織が吹くべき」という自分の主張を執拗に叫んでいるだけですが、第2期ではまだ納得してないと言いつつも、自分の主張を抑えて「全国を目指すためには麗奈が吹くのが正しい」と認めるようになっていきました。麗奈も、最初は周りに弱さを見せずに一人で突き進んでいくだけだったのが、次第に自分の弱さを認めるようになり、久美子以外の人とも良い関係を築きつつあるように思います。

久美子が自分の意志を通そうとするとき、いつも割を食っていたのが、我らが夏紀先輩でした。まあ、これは第1期でも変わらないんですけどね。窓際で寝ていた夏紀に声をかけて練習に戻したのも久美子だし、夏紀がオーディションで負けたのも久美子でした。そして第2期でも、「あすか先輩が戻ってきたら夏紀先輩が全国出れなくなるやんうわあああああ」的な葛藤を乗り越えて「それでも私はあすか先輩に戻ってきてほしい」と宣言するのは久美子なのです。それでも、不平不満を一切言わずに久美子やあすかのために自分が犠牲になる夏紀先輩、これはもう天使という他ないですね。

話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

毎年恒例のアニメ話数単位10選です。例年通り、こちらの記事を参考に、

・2016年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

というルールで、今年最も印象深かった10話を選びました。

ハイスクール・フリート』、第10話、「赤道祭でハッピー!」

  • 脚本:吉田玲子
  • 絵コンテ:藤森カズマ
  • 演出:たかたまさひろ
  • 作画監督:古矢好二、丸岡功治、植竹康彦、大西秀明、江間一隆、福地和浩、成松義人、相澤秀亮、王國年
  • 総作画監督:中村直人、奥田陽介、山田有慶

赤道祭やろうと言い出したのに周りが全然盛り上がってなくて拗ねるマロンちゃんかわいい。航海科による後悔ラップは「寒すぎて凍える」「恥ずかしくて見ていられない」など散々な評判だったが、バカ野郎!テレビを直視できないほど寒くて痛々しくて恥ずかしいからこそ逆に良いんじゃねえか!と言いたい。

僕だけがいない街』、第8話、「螺旋」

  • 脚本:安永豊
  • 絵コンテ:こさや
  • 演出:こさや
  • 作画監督:古住千秋

これはアニメだけに限らず、最近の映像作品は分かりやすさを求めるあまり、回想・台詞・その他の演出などが説明過多になってしまうケースが多いように感じる。そんな中でも『僕だけがいない街』は、必要最小限の情報で物語を進めて行く演出の力が際立っていたと思う。特に第8話はそれが顕著だった。
関連記事:『僕だけがいない街』総評 - 新・怖いくらいに青い空

響け! ユーフォニアム2』、第4話、「めざめるオーボエ

みぞれ先輩が最高。下の関連記事でも書いたように、決して目新しいというわけではないがグッとくる表現技法によって、原作屈指の名シーンを見事に再構成していた。第1話や第10話も良かったけど、あえて一つに絞るならやっぱり第4話かなあ。
関連記事:『響け! ユーフォニアム2』第4話と原作小説との比較 - 新・怖いくらいに青い空

この素晴らしい世界に祝福を!』、第3話、「この右手にお宝(ぱんつ)を!」

久々にアニメ見てテレビの前で笑い転げた。スティール魔法でパンツを奪うくだりは、見る前から結果が予想できるけれども笑える。アニメ第2期も早く見たい。

この美術部には問題がある!』、第6話、「気になる美少女転校生」

内巻君が宇佐美さんを肩車するシーンのリアルな質感というか肉感が凄い。恐る恐る太腿を肩に乗せていく感じとか、立ち上がった時の身体の揺れとかがリアルで、TV画面から体温や匂いまで伝わってくるようでした。

ストライクウィッチーズO.V.A.』、Vol.1、「サン・トロンの雷鳴」

『ブレイブウィッチーズ』第4話の放送延期に伴い代替放送された『ストライクウィッチーズOVAの中の1話。この企画の趣旨に合ってるかは分かりませんが、一応今年がTV初放送なので選出しました。とにかく、エーリカマジ天使としか言いようがない素晴らしさ。トゥルーデを心配するあまり妹ウルスラにきつく当たってしまうエーリカがもう…。特に、ウルスラが開発したジェット機にイチャモンつけて、「ジェットとはそういうものなのです」と言い返された後、「なんだよ!そういうものって!」とマジなトーンで声を荒げるエーリカが本当に尊い…。

3月のライオン』、第10話、「Chapter.20 贈られたもの①」「Chapter.21 贈られたもの②」

  • 脚本:木澤行人
  • 絵コンテ:黒沢守
  • 演出:宮本幸裕
  • 作画監督:よこたたくみ、野道佳代、藤本真由、杉藤さゆり、西澤真也
  • 総作画監督:杉山延寛、潮月一也

昨日見たばかりの第10話。前話の感動的な対局とは大違いだ。笑っちゃうくらい胸糞悪い。でも、これこそが『3月のライオン』という作品の真髄なのだ。見終わった後に心の中に残る、なんとも言えないモヤっとした感じ。おそらく作者自身もまた、他人の何気ない一言とか、小さな悪意とか、エゴイズムとかのせいで、何度も理不尽に傷付けられてきたんじゃないだろうか(Twitterとかの発言を見てるとそう感じる)。そうでなければ、こんな繊細な物語は描けないだろう。

91Days』、第11話、「すべてがむだごと」

  • 脚本:岸本卓
  • 絵コンテ:小島正幸
  • 演出:鈴木孝聡、平向智子
  • 作画監督:西川絵奈、北山修一、川添政和、大島貞生、岸友洋

ファミリーを守ろうと戦ってきたヴィンセントやネロの人生が、まさに一晩で全て「むだごと」になってしまう衝撃。ああもうメチャクチャだよ!と叫びたくなる。見終わった後に残るのは言いようのない虚しさだが、あまりにも虚しすぎると人は逆にカタルシスすら感じるのだ。

NEW GAME!』、第4話、「初めてのお給料…!」

八神さんの「青葉が楽しそうな顔してるうちは大丈夫。ゲームがつまらなかったらあんな顔しない」という台詞が凄く印象に残っている。「自分達の作ったものがちゃんと売れるか?」みたいな現実的な心配をするのは、ある程度キャリアを積んだ人の仕事で、入社して日が浅いうちはただ無我夢中で楽しみながらスキルを身につければそれでいい、という作中の仕事観みたいなものがよく表れてる台詞だと思うのだ。

Re:ゼロから始める異世界生活』、第13話、「自称騎士ナツキ・スバル」

  • 脚本:横谷昌宏
  • 絵コンテ:長山延好
  • 演出:古賀一臣
  • 作画監督:中田正彦、渡邉八惠子、浅利歩惟、池上太郎

演出や作画や声優の演技が全て「本気」だった。スバルという主人公の痛々しさと見苦しさを表現するためだけに、全ての力を注ぎ込んで作られている。こんな回は今後二度と見ることができないだろう。