新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『うさぎドロップ』を見ていて気になったこと―やっぱり日本の社会制度は間違ってる?

『うさぎドロップ』は確かに感動的で良い作品だし、大吉は素直に「親の鑑」みたいな人だと思う。でも、大吉みたいな献身を世間一般に期待してはいけないんだろうとも思う。

別に、親が子どもを育てるために自分の夢を捨てることは悪くない。アニメ『CLANNAD』でもテーマになってたけど、やっぱり親にとっては子どもの幸せは自分の幸せでもあるし、そのためなら自分を犠牲にしてもかまわない、と思える。自分が親になったことないから分からないけど、たぶん普通の親ならそう感じるはず。

けど、仕事を異動しなきゃ子どもを育てられない、ってのはやっぱりおかしいでしょう。大吉がおかしい、って言ってるんじゃないよ。この日本の社会制度が間違ってる、という意味。働いている人でも安心して子供を育てることができるような環境を整備するのが国や自治体の義務でしょう。子供を産みたくても産めない会社、育てたくても育てられない職業、っていうものは有ってはならないものだよ。国に頼るな、親個人の努力で何とかしろ、ということになったら、それこそ世の中の漫画家全員子供作れなくなる。それこそ大吉のような聖人君子みたいな人しか、子供を育てられないということになってしまう。

話は変わるけど、自分は大学で理系の学科に所属してるんだけど、そこの教授陣は全員男性。助教授・助手・事務員で女性がわずかに居るだけ。日本の大学全体を見ても、理系分野の教授に限ればおそらく男女比99:1くらいだと思う。つまり、子の日本で未だに女性の進出が難しい職業が存在しているわけだ。はっきり言って、これほどひどい状況になってるのは先進国では日本だけだ。その証拠に、欧米各国では女性でも理系分野のノーベル賞をじゃんじゃん貰ってる。要するに、先進国では日本だけが依然として、子どもを育てながら大学で研究する環境が整ってないということ。

『うさぎドロップ』では、大吉が残業のない部署に異動出来たから良かったものの、それが出来なかったらどうなっていただろう。大吉には親戚もいるからまだ良いけど、親戚にも頼れず本当に男手一つでりんを育てざるを得ない状況になったら? そういう時に、国がきちんとバックアップする体制ができているのか、正直疑問だ。

私の祖母は夫(つまり私の祖父)が遊び人だったせいで、大変な苦労をして、ほとんど女手一つで母を育てた。その祖母が、「もし生まれ変わったら、きちんと大学まで行って手に職をつけ、一人で自立して生きて行きたい」と言っていた。それくらい、親一人で子どもを育てるということは大変なことなのだ。『うさぎドロップ』を見て「大吉カッコいい」と思うのもいいけど、私はもっとその背後にあるものを考えたいと思う。何故、私の祖母や大吉が、これほど苦労しなきゃいけないのか。そういう人達をサポートする体制はきちんと出来ているのか。もしそれが出来てないのであれば、やっぱり日本の社会保障や労働政策が間違ってるんだよ。