新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『ゆるゆり』と『けいおん!』の比較―「律・澪」「京子・結衣」の共通点とは

ゆるゆり』の京子と結衣の関係って、『けいおん!』の律と澪の関係に似ているのかもしれない。まず、結衣と澪について。両者とも外見は黒髪で高身長、性格は真面目。相方(京子・律)に対しては、ツッコミ役で言葉遣いが少し乱暴なところも似ている。一方で相違点もあって、澪は引っ込み思案で寂しがり屋なところが強調されているが、結衣はどちらかと言うとクールな感じが強い(京子いわく、本当は寂しがり屋らしいけど)。ただ、両者とも表面上はクールでカッコいい感じがするという点は共通している。

次に、京子と律について。両者とも、性格が明るく、集団の牽引役。一夜漬けで良い点数が取れるところも同じ。そして何より、周囲に対する気配りが上手い。京子も律も、あんまり深く考えて無いようで実は、周りの人に結構気を使ってる。部室を明るくするために、あえて明るいキャラを演じてるようなふしがある。一方で相違点としては、一番大きいのは幼少期の性格。りっちゃんは子供の頃からりっちゃんだが、京子は幼少期は泣き虫だった(そう言えば、律もあずにゃんに「昔は良い子だったんですね」と言われていた気がする)。

そして、関係性について。両者とも幼馴染で同じ部活に所属してるのは当たり前として、他に共通点として挙げられるのは、後輩の存在。あずにゃんは澪を慕っているが、りっちゃんについては「あの人はいい加減で大雑把だからパス」。ちなつは結衣のことが大好きだけど、しつこく付きまとってくる京子のことはdisってる。ようするに、後輩に慕われてるのはどう見ても澪・結衣の方。三角関係についても似てる点がある。『けいおん!』では、澪と和が仲良くしてるのを見て律が嫉妬。『ゆるゆり』でも、結衣とちなつのスキンシップを見て京子が嫉妬(残念ながら、綾乃は片思いで留まってるので、この関係性の中になかなか入って行けないでいる)。

ただ、後者の場合、京子はちなつのことが好き、という設定が話をややこしくしてる。私は正直、京子がちなつに付きまとうのは、そうすることで結衣の気を引こうとしてるから、という可能性もなくはないと思ってた。けど、結衣がいない場面でも京子はちなつとスキンシップを取ろうとしているし、ちなつがミラクるんに似てる云々の設定からしても、京子がちなつを好きなのはガチだと思う。京子・ちなつのスキンシップを結衣が止めるのも、嫉妬心からではなく、単に後輩が迷惑してるから。そう考えると、京子・結衣の関係って、あんまり百合百合してないように見える。

一方、律澪の場合、原作のエピソード(律の彼氏疑惑とか)を見てると、やっぱり澪は律への依存度が高いように見える。ただ、そうとも言い切れない部分もあって、例えば、入学当初の澪は律と一緒の部活ではなく、手芸部に入ろうとしていた。要するに、京子・結衣でも、律・澪でも、普段はあんまりベタベタしてない印象が強い。京子はちなつに浮気するし、澪は別の部活に入ろうとしていた。結衣も澪も、相方に悪態を付けるし、殴ったりもする(まあ、それがスキンシップでもあるけど)。

京子・結衣も、律・澪も、普段はあまり強固な関係性を意識するようなことはないが、それを再確認するようなエピソードが時折入って来る。『けいおん!』で言えば、1期の第11話や、2期の第8話とか。『ゆるゆり』で言えば、アニメ3話とか、11話とか。そういう話を定期的に入れることによって、読者・視聴者はこの関係性が非常に強固なものだってことが分かる。非常に上手い作りになってる。

要するに、百合を売り物にしている作品であるにも関わらず、京子・結衣が実はあんまり百合百合していないということが、逆説的に二人の関係性の強固さを証明してしまっている、ということ。他のカップリングが常に何らかのイベント――千歳が鼻血を出すような百合描写――無しでは成り立たないのに対し、幼馴染2人はただ一緒にいるだけでお互い通じ合っているって分かるし、読者もそれで満足してしまう。正直これはずるい。幼馴染2人の関係に割り込もうとしている綾乃・ちなつが不憫だ。

ゆるゆり』のアニメで京子・綾乃の関係性が結構フィーチャーされてたのは、その辺りの都合もあったんじゃなかろうか。京子・結衣のラインは何もしてなくても心が通じ合える状態にある。それくらい両者は物理的(同じ部活に所属している)にも経験的(幼馴染で小学校も同じ)にも親密な関係にある。けれど、京子・綾乃のラインは、とにかくイベント数を稼がないことには進展しない(これは京子・ちなつラインにも言えることだけど、ちなつの方は若干ネタキャラになっちゃったね)。だから、通常回では他カップリングをやって、ここぞという場面では京子・結衣の関係性をクローズアップする、という路線が取られたわけだ。