読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『侵略!?イカ娘』エンディングテーマから見たイカ娘の心境

代わる代わる鍵を開けてく 何も知らない私の心の

イカ娘は地上の事をほとんど知らないまま、たった1人でやってきた。唯一、人類に対して抱いているのは、海を汚すひどい奴らというイメージ。だからイカ娘も、最初は心に鍵をかけて人間を受け入れようとしなかった。ところが、栄子・千鶴・たけるを始めとする沢山の人間と代わる代わる接してゆく中で、少しずつその鍵が開けられていった。

歌詞にある「何も知らない」というのは、「地上や人類のことを知らなかった」というだけでなく、「家族や友達の暖かさとか、人間と心を通わせてゆくことの素晴らしさを知らなかった」という意味でもある。イカ娘が地上に来る前にどういう生活をしていたのかはよく分からないけど、彼女は故郷にある全てのものを捨てて地上に侵略しに来ている。敵である人類には心を開けないし、海での生活もとっくに捨ててしまっている。海とも陸とも相容れず、イカ娘はいつも孤独感を味わう。だけど栄子・千鶴・たける達との生活を通じて色んなことを理解してゆくことで、イカ娘の「何も知らない心」は満たされてゆく。

夏の匂いは臆病な気持ち カラリと飛ばして笑っていた

イカ娘は侵略が上手く行かないことを真剣に悩んでいる。自分に自信が無くなって臆病な気持ちになることもある。でも、そういった気持ちをカラリと飛ばしてしまうくらい、地上での生活は楽しくて暖かいもので、気付けばいつでもイカ娘は笑っていた。

イカ娘の本来の目的は地上の侵略。だから、それが上手く行かなくて悩んでしまうのも当然。イカ娘は侵略者と呼ぶにはあまりにも無力で心が優し過ぎた。だから、侵略行動はほとんど失敗に終わる。そのたびに落ち込んだり泣いたりする。でも、地上での生活は、侵略という本来の目的を忘れてしまうくらいに楽しくて、笑顔に満ちている。

大切だけど 恥ずかしくて背を向けたり

今やイカ娘にとって、海の家のメンバーはとても大切で掛け替えのないものになった。けれども、時々自分の使命を思い出して「こんなはずじゃなかったのに」と思ってしまう。本来は敵同士のはずなのに、なんでこんなに仲良くしてるんだろう。そんな風に考えると気恥ずかしくて、ついつい背を向けてしまう。

上でも述べたように、イカ娘にとって地上の生活は、本来の目的を忘れてしまうくらいに楽しい。けれども、自分が侵略者だという使命とプライドもある。イカ娘は地上で掛け替えのない家族を得、その関係が「大切」だと思うようになってしまった。言うなれば、イカ娘の心が逆に人類に侵略されてる状態。それでも、侵略される事を心地良いと感じてしまう自分がいる。何故なら、その侵略が、「臆病な気持ち」を「カラリと飛ばして」、イカ娘を笑顔にしてくれたから。けどやっぱり、それを「心地良い」と感じてしまう自分に腹が立つ。ここにイカ娘の葛藤が見え隠れする。

すれ違うたび近づいた 繰り返し人を知っていく

イカ娘と人類は未だに対立し、感情がすれ違うことも多い。種族が違うのだから当たり前だ。でも、そういった対立を繰り返すことで少しずつお互いを理解していき、距離が近づいていることも事実。

世界の人種差別・民族問題などに代表されるように、文化や思想の異なる者どうしは何度も対立し合う。ましてや、「人類」と「自然」との対立になると、溝はさらに大きくなる。『もののけ姫』でも描かれたように、人類と自然は最後の最後まで和解しない。それでも、何度も何度もぶつかり合うことで、お互いの気持ちを知ることが出来る。自分の感情を相手にぶつけて、時にはお互いに傷ついたりもする。それでも、そうすることで無知と偏見は確実に消えていって、世界は変わってゆく。

時を重ねて君を知ること こんなに嬉しいと思えるから

他人を理解することは難しい。けど、時を重ねることでそれは可能になる。行き着く先には、今までとは違う自分がいる。人類を知ること、彼らと心を通わせて理解し合うということが、こんなに嬉しいなんて思ってもみなかった。

イカ娘は地上で色んな事を知る。お金や傘の使い方も知ったし、山や学校や鎌倉にも行った。夏祭りやてるてる坊主といった風習についても学んだ。けれども、イカ娘にとって最大の成長は、栄子・千鶴・たける達と心を通わせることができたということ。そして、それを「嬉しい」と思えるようになったということ。他者と共に生き、心を通わせることが出来る、という喜び。イカ娘は、地上に来ることで、生きる上で最も大事なことを学んだ。

喧嘩をしても傷ついても すぐにお互い許してるんじゃないかな

それでも、時には喧嘩をすることもあるし、傷つけ合うこともある。けど、そこにはもう、お互いを思いやる「配慮」がある。独りよがりな自分だけの視点で判断するのではなく、相手の立場になって考えることができる。だから、すぐにお互いを許すことができるようになった。

「その人を知りたければ その人が何に対して怒りを感じるかを知れ」(『HUNTER×HUNTER』単行本第1巻、54P)。人は、ぶつかり合うことで真に理解し合うことが出来る。イカ娘と人類は何度も対立を繰り返すんだけど、その度に、イカ娘の考え・人類の考えが相手に伝達され、相互理解は深まってゆく。このようにして対立を繰り返しながら進歩していったのが、人類の歴史。イカ娘と人間との関係もそれと同じ。

だけど素直になれないのは 分かり合えると信じてるから

イカ娘は地上の人間達が好きだけれども、彼らのやっている環境破壊は許すことは出来ない。だからどうしても素直にはなれない。けれども、いつかは人類と海が手を取り合って分かり合える日が来ると信じている。

イカ娘が地上に来てから変わったように、いずれは人類もイカ娘によって変わる日が来るのだろう、とイカ娘は信じている。人類は相変わらず海にゴミを捨てるし、放射性物質ですら垂れ流す。けれども、イカ娘は人類の持つ暖かさも同時に知っている。もちろん、両者が完全に和解することは難しいだろうが、互いに配慮して共生することはできる。そんな未来が来ることを、イカ娘は心から願っている。