新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

話数単位で選ぶ、2012年TVアニメ10選

今年、最も良かったアニメを話数単位で選びました。評価方法は記事「話数単位で選ぶ、2012年TVアニメ10選: 新米小僧の見習日記」に書かれてあるルールに従い、

・2012年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

としました。

氷菓』、第17話、「クドリャフカの順番

脚本:賀東招二、絵コンテ:石立太一、演出:石立太一作画監督:内藤直

どの回もクオリティが高かった『氷菓』の中で、あえてベストを決めるなら、この第17話だと思う。『氷菓』の中で一貫してテーマとなってきた「青春のほろ苦さ」「ディスコミュニケーション」といったものがこの回に凝縮されており、いくつものブログでこの回に関する優れた考察が行われている。

この回を一言で説明するとすれば、「才能を持つ者・持たざる者の対比」だと言えるだろう。摩耶花にとっての「夕べには骸に」、田名辺にとっての陸山、里志にとっての奉太郎。これは、ねこハウスさんの言葉を借りるなら、「自分がどれだけ努力しても到達できない極みに軽く立ち、しかもそれをあっさりと捨てる」ような人を前にした時、人はどうあるべきなのかという問題でもある。個人の努力ではどうにもならないくらいの圧倒的な差を自覚してなお、人は前向きに努力して行けるのかという根源的な問い。

成功を掴むためには努力することが不可欠であるのは多くの人が認めるところであるが、だからと言って、同じような努力を重ねても成功する人もいればそうでない人もいる。その人が出し得る最大限の努力をすることは当然としても、結局、最後の最後に効いてくるのが、実は「才能」の有無だったりする。この残酷な現実を前にして、人はどうあるべきなのか。やっぱり自分には向いてないと考えて別の道に進むか、それでもなお努力を続けて行くのか。どちらが正しいのか、明確な答えは存在しない。そのような残酷な選択と向き合い苦悩するのが思春期というものなのかもしれない。

実は同じようなテーマは、『さくら荘のペットな彼女』、第4話、「色を変える世界」でも描かれていたが、同様の功績があった場合には放送時期が早い方が優先されると思うので、残念ながら『さくら荘』の方は選出しなかった。また、『氷菓』については、第7話、第21話なども候補に挙がったが、1作品1回までという原則に従って泣く泣く選出できなかった。

ココロコネクト』、第4話、「二つの想い」

脚本:志茂文彦、絵コンテ:花札虎南、演出:福多潤、作画監督:佐藤麻里那・竹森由加、総作画監督:堤谷典子

ココロコネクト』第4話の素晴らしさについては、以下の記事で既に述べた。

『人格入れ替わり』の起こっている間にした行為の責任は全て、入れ替わっていた相手の方に振りかかってくる。「自分さえ良ければ良い」と考えていれば、人格入れ替わり中にお金を盗んだり、相手の秘密を握ったりすることだって出来てしまう。そんなことするはずがないと頭では分かっていても、どうしても疑うことを止められない。そんな稲葉の苦しみに感情移入し過ぎて胸が苦しくなった。

人は皆、誰にも言えない秘密を抱え、本当の自分が露呈することに怯えながら生きている。だからこそ人は、悩みを一人で抱え込んでしまう。悩みを誰にも相談できずに、思考はどんどんネガティブになっていって、心身ともに追い込まれてゆく。しかし、ここで勇気を出して悩みを打ち明ければ、問題がアッと言う間に解決してしまう場合がある。稲葉の抱える人間不信の苦悩も、伊織に言わせればただの「心配性」でしかなかった。

悩みを抱えている時に大事なのは、勇気を持ってそれを打ち明け、別の視点から物事を見てみるという姿勢。そして、悩みを打ち明けることが出来る仲間の存在。その大切さに気付かせてくれるのが、『ココロコネクト』という作品だと思う。

ソードアート・オンライン』、第10話、「紅の殺意」

脚本:木澤行人、絵コンテ:伊藤智彦、演出:高橋秀弥、作画監督:中村直人、総作画監督:川上哲也

この回を見るまで、正直、『ソードアート・オンライン』という作品を舐めていた。前半の迫真の戦闘、渓谷でのキス、そして、その夜のプロポーズ。その怒涛の展開で、アッと言う間にこの作品に引き込まれた。アニメのカップルを見て、心から末永く幸せになって欲しいと思えたのは、『とらドラ!』の竜児・大河以来だったと思う。

這いよれ! ニャル子さん』、第8話、「ニャル子のドキドキハイスクール」

脚本:兵頭一歩、絵コンテ:政木伸一、演出:政木伸一、作画監督:宗崎暢芳

これほどまでに「パロディ」というものに情熱を注いだ回は他に存在しない。「アニメ元ネタ解析」というブログでは、第8話に出てきたパロディの元ネタがまとめられている。

北斗の拳』『スラムダンク』といった往年の名作から、『涼宮ハルヒの憂鬱』『神のみぞ知るセカイ』といった近年のアニメ、各種のゲーム、さらには『WORKING!!』関連の声優ネタまで、あらゆる分野を網羅したパロディは圧巻というしかない。そして何より、ツンデレ真尋さんの圧倒的可愛さ。

となりの怪物くん』、第2話、「変」

脚本:高木登、絵コンテ:長沼範裕、演出:長沼範裕、作画監督:近藤奈都子

水谷雫がいかに可愛いのかについては、以下の記事で既に述べた。彼女の可愛さが一番よく現れているのが第2話だと思う。

雫の可愛さを一言でいうとすれば、「ギャップ萌え」ということに尽きる。頭の中で冷静に分析を行っている時と、春に言い寄られてテンパっている時との、圧倒的落差が「萌え」を生む。そして、忘れてはならないのが、声優・戸松遥さんの名演。『あの夏で待ってる』のイチカ先輩、『SAO』のアスナ、そして雫と、今年はやけに戸松さんの印象が強い年になった。

黄昏乙女×アムネジア』、第1話、「幽霊乙女」

脚本:高山カツヒコ、絵コンテ:大沼心、演出:大沼心作画監督楠本祐子総作画監督:番由紀子

今、最も独創的な演出を見せてくれるアニメ製作会社を挙げよと言われれば、『化物語』『まどマギ』のシャフト、『ベン・トー』『妖狐×僕SS』のDavid Production、『バカテス』『ココロコネクト』のシルバーリンクを挙げたいと思う。『黄昏乙女×アムネジア』第1話は、シルバーリンクのチャレンジングな演出技法がよく光った回だった。

ブラック★ロックシューター』、第8話、「世界を超えて」

脚本:岡田麿里、絵コンテ:吉岡忍・今石洋之、演出:吉岡忍・今石洋之作画監督:芳垣祐介

難解と言われたこの作品だが、結局のところは、最終話のマトの言葉に全てが集約されていたように思う(詳しいことは以下の記事を参照してほしい)。

「傷つきたい、自分でちゃんと! だって、傷つかなけりゃいろんな世界が視れないもん! 私は見たい、眼をそむけないで見たい!」「傷ついて、傷ついて、それでも私は、あなたと繋がる!」。ここには『ココロコネクト』のキズランダム編とも通じるテーマがある。誰だって、他人とぶつかり合うような事はしなくない。相手を傷つけるのも、自分が傷つくのも、出来るなら避けたいと思っている。それでも、傷つけ合わなければ前に進めない時がある。目を背けてはならないものがある。

うぽって!!』、第10話、「でもって うぽって!!」

脚本:荒川稔久、絵コンテ:加戸誉夫、演出:加戸誉夫作画監督:古川信之・織田誠・長屋侑利子・西谷泰史

うぽって!!』第10話については、ねこハウスさんが以下の記事で非常に簡潔にまとめている。

このブログに述べられているように、これまでのコメディ的要素が強かった内容から一転して、第10話では「銃という存在の意義」というクリティカルなテーマが描かれる。

平和のための武器、人を守るための武器というものは存在するのか。私は、どこまで行っても、武器は人を殺す物でしかないと思う。広島や長崎、カンボジアでの悲惨な事実を目の当たりにした後で、「人を守るための核兵器」「人を守るための地雷」などという言葉を使うことが出来るだろうか。あるいは、第10話とアメリカの銃規制問題とを絡めて考察することも可能だろう。何故、「人を守る」はずの銃によって、年間1万人もの人が殺されているのか。本当に「銃を持つ権利」なるものを認めても良いのだろうか。

人を殺す道具である銃を見て「カッコいい」と思う心理、ましてや、それを擬人化してそこに「萌え」を見出す心理。そこには、人類が向き合わなければならない武器と暴力にまつわる問題が潜んでいる。そんな、予想外に色々な事を考えさせられる第10話に、ただただ驚いた。

『Another』、第6話、「Face to face -二人-」

脚本:檜垣亮、絵コンテ:室井ふみえ、演出:室井ふみえ、作画監督:川面恒介

「Anotherなら死んでた」という名言を生みだしたアニメ『Another』。その原作小説については、以下の記事で既に考察した。

現代社会は数多くの犠牲の上に成り立っている。本来、誰もが等しく負担するべき不利益は、全く公平でない方法によって社会の中のマイノリティに押し付けられ、彼らの存在は「なかったこと」にされる。ここで描かれているのは紛れもなく、犠牲を正当化してきた人間社会の暗部だ。

そんな不条理な日常の中で芽生えた絆。スケープゴートにされた者どうしの、たった2人だけの世界。それがP.A.Worksの描く背景と相まって実に美しかった。

あの夏で待ってる』、第3話、「先輩が言っちゃう…」

脚本:黒田洋介、絵コンテ:鈴木健太郎、演出:鈴木健太郎作画監督:矢向宏志、総作画監督:冷水由紀絵・田中将賀

柑菜が可愛いすぎる。それに尽きる。