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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『リトルバスターズ!』とロシアの宇宙開発

アニメ『リトルバスターズ!』に登場したテヴア共和国ノーヴィ・バイコヌール基地のモデルとなったのは、言うまでもなくカザフスタンのバイコヌール宇宙基地です。しかし、登場したと思ったらアッと言う間に基地ごと爆発してしまうという、何とも不憫な役回りですね。しかも、爆発の混乱に乗じて暴動が発生とか・・・。

このように、ロシアの宇宙開発というと、いつも非常にネガティブなイメージで語られることが多いと思います。アメリカの宇宙開発が、自由の国アメリカを象徴するクリーンで明るいイメージで語られるのとは対照的です。そもそもソ連という国が共産主義の名のもとに非常にダーティなことをやってきていますし、その側面をロシアもよく受け継いでいるように見えます。そんな国がやっている宇宙開発ですから、色々と黒いお話があるのも事実です。

技術の進歩のために仕方なかったとはいえ、生きている犬を実験台にロケットに乗せ死なせたり、まだ安全性が確立されていないロケットに人を乗せて、実際に死者を出したり。さらに、国家の威信を守るために、しばしば事故を隠蔽したりしてます。隠蔽された事故の中でも最悪のものは、1960年に起きたニェジェーリンの大惨事と呼ばれる事故で、約150名の死者を出したと言われています。この事故では、ロケットから漏れ出した燃料が引火して大爆発を起こし、辺りはロケットの残骸と焼け焦げた死体で、さながら地獄絵図の様相を呈していたとか。こんな感じで多大な犠牲と失敗を繰り返した挙句、月面飛行では完全にアメリカに敗北し、宇宙開発の分野で2番手に甘んじている――というのが、ロシアの宇宙開発に関して多くの人が抱いているイメージではないでしょうか。

ところが、実際のところロシアの宇宙開発というものは、アメリカに優るとも劣らない実績と技術を持っていると言っても過言じゃないわけです。歴史を見ても、宇宙遊泳、宇宙船どうしのドッキング、宇宙ステーションの開発などを最初に行ったのは、アメリカではなくてソ連でした。また、月・金星・火星へ探査機を最初に送りこんだのもソ連です。さらに1981年以降で換算すれば、ソ連は一度も死亡事故を起こしていないのに対して、アメリカはチャレンジャー号とコロンビア号の事故によって14名の死者を出しています。そして、アメリカのスペースシャトルが運用を終了した現在、国際宇宙ステーションに人を送り込む宇宙船はロシアのソユーズしかないという状況になっています。アメリカがアポロ計画やスペースシャトルに目を向けていた背後で、ソ連・ロシアは地味だけれどもコツコツと技術を積み上げてきたわけです。

もちろん、ロシアの宇宙開発が常に順風満帆だったというわけではなく、例えばソ連崩壊後の不況を受けて開発の縮小を余儀なくされたりしているわけですが、逆に言えば、如何に低コストで確実にロケットを打ち上げることができるかという事を徹底的に追及しているとも言えます。アメリカが、スペースシャトルの打ち上げの度に莫大な修理費用を使って、結局運用終了に追い込まれたのに対して、ロシアは、低コストなソユーズ宇宙船をうまく使って宇宙開発の世界をリードしようとしています。

というわけで、『リトルバスターズ!』を機に、ロシアと世界の宇宙開発の現状について、考えてみるのも面白いのではないでしょうか。スペースシャトルが無い今、ロシアの影響力はますます強くなっていく可能性が高いでしょう。そこに、アメリカやEUはどう対抗して行くのか、そして、日本はどのように貢献して行くのかが問われています。