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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『波打際のむろみさん』を見て生物進化を学ぶ

アニメ『波打際のむろみさん』第3話に登場したイルカですが、今日はその進化の過程について勉強していきましょう。クジラにはヒゲクジラ亜目とハクジラ亜目*1の2種類があり、ハクジラ亜目の中で特に小型のものが一般にイルカと呼ばれています。では、このクジラやイルカはどのようにして誕生したのでしょうか。それを解明するためには、まず脊椎動物というものがどのように誕生したのかを見なければなりません。

我々ヒトを含む哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類のことを脊椎動物と言いますが、この最初の祖先が誕生したのは約5億年前のカンブリア紀でした。続くオルドビス紀には、すでに無顎類*2と呼ばれる原始的な魚類が誕生していたと言われています。その後、本格的な魚類が誕生して水中を闊歩するようになり、その中の一部が肺と手足を獲得し、約4億年前のデポン紀に陸上に上がりました。これがユーステノプテロンと呼ばれる最初の陸生脊椎動物です。それは当初、現生する両生類*3のように、水辺でしか生活できなかったのですが、やがて乾燥に強い卵を産み硬い皮膚を持つ爬虫類が誕生し、陸上での生活に順応していきました。さらに、爬虫類の中の双弓類と呼ばれるグループが恐竜へと進化し、中生代に大きく繁栄しました。恐竜の中の一部は、羽毛と羽を獲得して鳥類になりました。一方、爬虫類の中の単弓類と呼ばれるグループから、約2億2000年前の三畳紀に最初の哺乳類が誕生し、白亜紀には胎生で胎盤を持つ哺乳類が誕生しました。ここから様々に分岐した哺乳類の中からサルが誕生し、さらにヒトが分かれていったということは言うまでもありません。しかし、哺乳類の中の鯨偶蹄目と呼ばれるグループの一部は、陸上よりも水中で生活することを選びました。やがて、それらの生物の手足は退化し、代わりにヒレを獲得して、今日のイルカやクジラとなりました*4

以上から分かるように、現生のクジラやイルカは、一旦完全に陸上に順応した哺乳類から分かれて、再び海で生活できるように進化した生物です。「肺を獲得して陸に上がろうとした哺乳類が、途中であきらめて水中に戻り、それがクジラやイルカになった」というのは間違いです。では、クジラは一度手足を獲得して陸に上がったにも関わらず、何故わざわざ海に戻っていったのでしょうか。実は、クジラと同じように海に帰って行った脊椎生物は他にもたくさんいます。例えば、魚竜・首長竜と呼ばれる大型の爬虫類や、ラッコ・アシカなどの哺乳類、ウミガメ、ペンギンなど。こうして見ると、4億年前に陸に上がったユーステノプテロンがイレギュラーだっただけで、陸に見切りをつけて海に帰る戦略は、何ら不自然なことじゃないと思えてきます。

むろみさんの元カレである魚竜は、首長竜と同じく、中生代に爬虫類から分かれて水中で生活するようになった生物です。作中の描写とは逆に、陸上での生活を捨てて海中で生活するようになった爬虫類と言えるでしょう。つまり、むろみさんの元カレが肺を獲得していたのは、陸上で生活することを目指していたからではなくて、元々陸上で生活していた爬虫類だからです。魚竜や首長竜は白亜紀に絶滅し現生していません。もちろん、魚竜はクジラやイルカの祖先ではありません。以上を簡単にまとめるために図を作ってみました。

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やはり、むろみさんの元カレとイルカは姿が似ているだけで、全く系統の異なる生物だということが分かります。生物の進化は複雑ですね。1話15分で気軽に笑いながら生物進化について勉強できるアニメは、他に例がないでしょう。今期のダークホース的作品でした。

*1:前者にはセミクジラやナガスクジラが含まれ、後者にはマッコウクジラなどが含まれます。

*2:現生する無顎類としては、ヤツメウナギやヌタウナギがいます。

*3:カエル、サンショウウオ、イモリなどの総称。

*4:ちなみに、アシカやアザラシは、ネコ目の一部から進化した生き物であり、進化の系統はイルカ・クジラとは異なります。