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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『LSD~ろんぐすろーでぃすたんす~』に描かれた理想的な部活動の姿

LSD~ろんぐすろーでぃすたんす~』第2巻、読みました。相変わらず素晴らしいですね。第1巻の考察はちょうど1年くらい前にやってるので、そちらも参照していただけるとありがたいです。

さて、前回の考察で指摘していたように、第2巻はついに駅伝が登場。インフルエンザで出場できなくなった選手に代わって、主人公・朝岡椿がたすきを繋ぎます。走る前からプレッシャーに押しつぶされそうになる椿。私も中学時代に2回ほど駅伝に出場しましたが、駅伝スタート前の緊張は、普通のトラック走と比べ物にならないものがあります。これは団体競技全てに言えることですが、自分のミスが全体に影響を及ぼす状況というのは、本当に独特の緊張感に包まれていて、それに押しつぶされて本来の力を発揮できない人も、中にはいるわけです。

で、仲間からたすきを貰ってスタートした椿ですが、直後に数人の選手から抜かれて順位を落としてしまいます。自分がチームのお荷物になってしまっているというネガティブ思考に陥り、あせる椿。そんな時、仲間がスタート前に「たとえ抜かれてもチームのために走ればいい」と言っていたことを思い出します。

そっか 大事なのは「私の」順位じゃないんだ
私が出来るベストの走りをすればいいんだ
私は浅見さんみたいに周りの人と競うことは出来ないけど…
全力で「いつも通り」走ることなら出来る!

そう、大事なのは順位を落とさないことじゃなくて、自分が今できる精一杯の走りをすること。陸上競技は基本的に自分との戦いなんですね。でも、走る原動力となるのはやっぱり仲間との絆だというところが面白い。やっぱり駅伝は、究極の個人競技でもあり、究極の団体競技でもあるんだと改めて思いました。

女子高生が駅伝をする漫画と言えば、桐原いづみさんの『群青』という作品があって、以前このブログでも紹介しました。

『群青』はシリアス要素が強めでいかにも「スポ根!」という感じがするのに対して、『LSD』はやっていることはハードなんだけれども、日常系4コマ漫画の文脈に沿った明るい感じになっていて、非常に対照的ですね。

群青(1) (ビッグガンガンコミックス)

群青(1) (ビッグガンガンコミックス)

ところが、現実の陸上部(特に強豪校)というのがこんな風に和気あいあいとしているかと言えば、決してそんなことはないわけですね。例えば今年も、豊川工業高校陸上部の監督が複数の部員に暴力を振るって、それが原因で退学した部員もいたと報道されたりしました。そんな環境で競技をしていれば、走ることを楽しいと思える純粋な心を保つのはなかなか難しくなるかもしれません。あるいは、過度で不適切な練習によって、体を壊したりするケースというのも、これまで何度も見てきました。

そのような現実を踏まえたうえで『LSD』を見ると、走ることを心の底から楽しみながら、健康的に部活に打ち込むことができる理想的な姿がそこにはあるんだなという気がしてきます。体罰に怯えながら自分の体を徹底的に追い込んで上を目指してゆくやり方と、あくまでも健康的に仲間と切磋琢磨してゆくやり方。人間を真の意味で成長させてくれるのは、果たしてどちらなんでしょうかね。今年クローズアップされている部活に関する悲しいニュースを見れば、その答えは明らかだと思うんですが…