読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『ハナヤマタ』『空色スクエア。』に見る日常系の変遷

マンガ

空色スクエア。 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

空色スクエア。 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

現在放送中のアニメ『ハナヤマタ』は、その原作漫画がまんがタイムきらら系の雑誌に連載されている事、主要キャラがみんな女の子である事、作中に百合要素が散りばめられている事などから、近年の日常系アニメと共通点が多いとされ、「ごちうさ難民」や「きんモザ難民」の受け入れ先であるかのように言われてきましたが、実際にアニメが始まってみると、他の日常系アニメよりもシリアス描写が多く、キャラクター間に渦巻く負の感情や対立を鮮明に描いている事から、やっぱり他の日常系とは少し違う雰囲気の作品なんだということが認知されてきたように思います。

その『ハナヤマタ』の作者である浜弓場双さんが以前まんがタイムきららフォワードに連載していたのが、『空色スクエア。』という漫画です。この漫画の事を簡単にまとめると、主人公である男子高校生・修一、彼の幼なじみで子どもの頃の記憶を失っている少女・深雪、同じく幼なじみで数年ぶりに地元に戻ってきて修一と再開したアイドル・文香、この3人の間で繰り広げられる三角関係を描いた作品です。さらに途中から、文香の事を慕っている後輩・ゆりあも登場してきて、物語は一層ドロドロとしたものになっていきます。要するに、『空色スクエア。』という作品は、

  1. 男女間のラブコメ要素
  2. 恋愛感情のぶつかり合いやすれ違いからくるドロドロ・シリアス要素
  3. まんがタイムきらら的な日常系要素
  4. 百合要素

という、4つの要素から成り立っているわけです。それを踏まえた上で『ハナヤマタ』を見てみますと、作中から男性が排除されたことによって、(1)のラブコメ要素がごっそりと抜け落ち、(2)・(3)・(4)という3つの要素からなる構造に変化していることが分かります。ここからさらに、(2)のシリアス要素が排除されると、『けいおん!』『Aチャンネル』『ゆゆ式』『きんいろモザイク』のような日常系・無菌系の作品となるわけです。

空色スクエア。』と『ハナヤマタ』はまさに、ラブコメから日常系というジャンルが派生していく段階における、過渡期の作品だと言えるでしょう。LDさん、海燕さん、ペトロニウスさんは、ラジオの中で日常系・無菌系の起源を次のように説明しています。*1

はじめに(1)と(2)の要素だけを持ったラブコメというジャンルがあり、それらはギャルゲー文化の発達に伴ってヒロインの数をどんどん増やしていく傾向にあった。そこに(3)と(4)の要素が入り、ハーレム系というジャンルが確立する。そこから、「そもそも男を出す必要ないじゃん」という事実に気付いた人たちが、(1)と(2)の要素を削って日常系を作る。

つまり『空色スクエア。』は、要素(1)が抜け落ちて日常系が誕生する寸前の姿を留めている作品で、『ハナヤマタ』は、要素(1)だけが抜け落ち、要素(2)はまだ抜けていないという、日常系が誕生した直後の姿を留めている作品と言えるでしょう。であるからこそ『ハナヤマタ』は、「研究されつくされた」日常系作品*2に慣れてしまった人達からしたら、少し違和感を覚える作品なのかもしれません。要するに、こういった作品は、まったりした日常系なのかシリアス物なのか分からない中途半端な作品と見なされて敬遠されてしまう傾向があるんですね。

しかし私はあえて、こういうどっち付かずな作品こそ、今後注目されるようになるんじゃないかと思います。おそらく、純粋な日常系・無菌系の作品というのは、ゆゆ式・きんモザ・ごちうさ辺りで行き着くところまで行ってしまっていて、今後目新しい作品が登場してくるかどうかは微妙なところです。二番煎じにならない注目されるような作品を作るとしたら、ギャグや百合など、ある一つの方向性に特化した作品とか、舞台設定が奇抜でマニアックな作品になると思います。そのような中で、(1)や(2)の要素に回帰したシリアス成分多めの日常系というものが出てきてもおかしくない。『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』のように、メッセージ性の高いシリアス要素を含んだ日常系が出てきてもいいし、『たまこラブストーリー』のように、ラブコメもありの日常系が出てきてもいいと思います。