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とある市議会議員のブログが炎上し、そこに油が注がれるまでの一連の経緯

ご存知の方も多いと思いますが、船橋市議会議員の高橋宏氏にまつわる一連の騒動をここでまとめてみましょう。高橋議員がネット上で「炎上」するきっかけとなったのは、同議員が船橋市議会で市の健康部長に対して行った次のような質問でした。

私が調べたところ、輸血を避け、代用液を使用している例が、海外では多数報告をされているそうです。また、A・J・シャドマン博士は、私は、2万例以上の外科手術を行ってきたが、輸血を施したことは一度もない。普通の食塩水を多く含ませただけである。そのほうが、一層よく、また安全である。血を失ったどんな症例にもこれを使ってきたが、死亡例は1つもなかった。チョークのように血の気が失せ、石のように冷たくなっても患者は生き延びてきた、と報告しています。さらに、デューク大学医療センターは、輸血は、益となるより害となる可能性があるとの研究を発表しています。
輸血医療の危険性について、どのように認識されていますでしょうか。
また、献血推進事業は、縮小すべきではありませんか。*1

世界中に何千・何万といる医師や研究者のうちのごく一部の少数派の意見を取り上げて「輸血は危険だ」と言うのはあまりにも公平性ですし、輸血によって得られる恩恵がそれによって生じる不利益よりも遥かに上回っているからこそ、今日まで輸血という医療行為が行われてきたわけです。にもかかわらず「輸血は危険であり献血事業も縮小すべきだ」と主張するのは、過去数百年にわたって積み上げられてきた医学に関する知見を真っ向から否定することに他なりません。

この議会の中で高橋議員は他にも「ガンに対する抗ガン剤治療・放射線治療・外科治療は止めて、人が本来持っている自然治癒力を高めるような治療に変えるべき」という趣旨の、専門家からしたらあまりにも不見識としか言いようのない主張を展開していました。

これだけなら、一地方議員の取るに足らないトンデモ発言として誰も相手にしなかったのでしょう。しかし、高橋議員は上の発言を自身のブログで取り上げ、さらに同ブログで、GVHD(輸血後移植片対宿主病)という病気を予防するために輸血用血液への放射線照射が行われているという事実を紹介した後に、次のような事を書き込みました。

GVHDが発症したらほぼ100%助からないそうです。つまり免疫抑制する為に、放射線照射しなければならないのです。では、その放射線照射した血を輸血するのですが、この血液、自分の体に入れたいという方いらっしゃいますか?(笑)いや、笑いごとじゃないんですけど、今更放射線についての危険性を述べるまでもなく、こんな死んだ血を輸血してもまたすぐに輸血しなければならないのは明らかです。*2

これでは「輸血用血液は放射線によってボロボロに破壊されているから、患者にとって有益であるどころか有害ですらある」と言っているようなものですし、見ようによっては「輸血用血液は放射能に汚染されている!」と言って読者の恐怖心を煽っているようにも取れます。案の定、医療関係者などからの批判コメントが相次いで寄せられブログは「炎上」となりました。

結局、高橋議員はすぐに謝罪に追い込まれ*3、所属していた結いの党に離党届を提出するという事態になってしまいました*4

ところが、離党届を提出した当日にはもう、「謝罪はあくまでも世間を騒がせたこのに対するものであって、言ってることは何も間違ってない」などと開き直る発言を書き込み、改めて自身のトンデモ理論を展開しています。

これだけの反響があるとは想像もしておりませんでしたので、その点についてはお騒がせして申し訳ないという気持ちでお詫びを申し上げてきました。しかし、私は発信した内容に間違いがあったなどとは考えておりません。
(中略)
「輸血は被爆しているから危険!」などと拡散されていますが、どこにそのようなことを私が記載しましたでしょうか。輸血そのものが危険だとは書きましたが。。何も間違ったことは言っていません。
輸血で助かっていると思っているのは実は、輸血という行為によって水分が補給され、電解質ミネラルが適性に回復しているためであるということです。その証拠に海外では多くの事例が存在しています。アメリカ、ニュージャージー州のイングルウッド病院では、血液の90%以上を失い、ヘモグロビン値が1.7に急落しても輸血せず、治療された例もあります。もう一度、前回の記事をお読み頂きたいのですが、「今すぐ全ての輸血を中止せよ」などとは一言も申し上げていません。言ってもいないことを言ったかのように批判するのは止めて頂きたいのです。*5

先のブログ記事は、「放射線照射した血を輸血しているという現実」というタイトルが示す通り、明らかに輸血用血液への放射線照射を問題視する内容であったはずなのに、次の記事では、放射線照射の部分がトーンダウンして「輸血そのものが危険」という内容にすり替わっています。しかも、極めて特殊な事例だけを取り上げて「現在行われている輸血は危険で無意味」と主張するのも、かなり無理がある主張のように思います。

結局、この記事にも多くの批判コメントが寄せられ、火に油を注ぐような形となってしまい、高橋議員はさらに謝罪の記事を書く羽目になったわけですが、そこでまたしてもトンデモ理論を展開。

薬やワクチンに対しての不信感から「医療業界」という表現をしてしまいましたが、現場で人の命を救う為に日夜、身を削って働いていらっしゃる方々を批判したかったのではなく、寧ろ、薬やワクチンといった医療のシステムを批判したかったのです。言葉が足りず申し訳ありませんでした。*6

なんと、今まで散々持論を展開してきた輸血の件は綺麗サッパリ捨て去って「俺が本当に言いたかったのは薬やワクチンの事なんや!」と言い始めたのです。その後、記事は完全にHPVワクチンや医療行政の話にすり替わってしまい、挙句の果てには、次のように自身の正当性を主張し始めました。

これだけおかしな医療が何十年とまかり通ってきてしまったことは私達国民にも責任があると考えております。知ろうともせず、一般常識という幻想に惑わされたままでは、いつまで経ってもこの国の医療は良くなりません。憲法により言論の自由が保障されているはずの我が国において、常識とはかけ離れた主張をしただけで、事実について確認することもなく、徹底的に排除しようとする風潮は危険なことだと感じております。私自身、政務活動費を不正支出したわけでもなく、飲酒運転をしたわけでもなく、LINEで中学生を恫喝したのでもありませんから、何ら恥じることなく今後も自らの信念に基づき、議員としての職責を全うして参りたいと考えております。*7

当初は「輸血用血液には放射線が照射されてる!」という話だったのに、それが「輸血そのものが危険(全ての輸血を中止せよとは言ってない)」という話に変わり、最後にはHPVワクチンの話にすり替わって「こんなおかしな医療を変えるためにこれからも頑張ります!」という結論に至るという、週刊少年ジャンプも顔負けの超展開となったわけです。まさに開いた口が塞がらないとはこういう事を言うんでしょう。

輸血については、記事の最後の方で少し触れているだけでした。

また、輸血の件につきましては大変申し訳ありませんが、確かに不勉強な点もあったと認識をしました。これにつきましては、再度、専門家にもご相談申し上げた上で、時期をみて皆様に見解を述べさせて頂きたいと考えております。*8

この新たな「見解」は8月24日現在まだ出されていないようですが、今後どのような見解が出されたとしても、あまりにも対応が悪すぎる、論点のすり替えや言い訳ばかりで反省の色が見えない、という印象は拭えないでしょう。

そもそもこの高橋議員のブログは、輸血の件以外にも、

「大量の砂糖、農薬、スナック菓子やカップ麺、牛乳・卵などの乳製品、肉類などが犯罪に影響している」*9

「私はもちろん、抗がん剤の使用には反対の立場です」*10

「万能細胞の研究に予算をかけることは、穿った見方かもしれませんが、利権の要素が強いように思います」*11

船橋市もフリーエネルギーを積極的に調査研究すべき」*12

などと、科学的根拠の乏しいトンデモ理論がたくさん書かれており、まさに疑似科学・エセ医学理論のオンパレードといった様相を呈しています。

高橋議員の厄介なところは、このようなニセ科学を信奉するだけにとどまらず、そのニセ科学を積極的に推進して行政を変え、市民を啓蒙しようとする気満々なところです。個人的には、船橋市民の納めた貴重な税金がこれ以上無駄にならないように、高橋議員は今すぐ議員辞職するべきだと思いますし、そうでなくとも、科学や医療についてきちんと勉強された上で発言されるか、医療・保健・教育などの分野では今後一切の活動を控えるようにすべきでしょう。

もし、高橋議員がこれまで通りに持論を展開し続けるなら、私たちは選挙という手段によって彼を議員の座から引きずり降ろさなければいけません。このまま高橋議員が次の選挙でも当選するようなことになれば、当選証書という錦の御旗を掲げて、これまで以上にデマ情報の流布に勤しむこと間違いなしですから。大げさな言い方ですが、こういう場面でこそ、選挙という民主主義の根幹をなす制度の真価が問われていると思います。

追記(2014年8月26日)

8月25日に新たな記事を出されたようですが、その内容は「ちゃんとブログを読め」「論点のすり替えなどしていない」「輸血やワクチンは安全だと証明されたわけではない」と、自らの正当性を主張するだけのもので、これはいよいよもって、議員をお辞めにならなければ大変なことになると感じずにはいられませんでした。*13

以前の記事で「輸血の件につきましては大変申し訳ありませんが、確かに不勉強な点もあったと認識をしました」と書かれたのですから、一体どの発言が不勉強な点でどのような訂正が必要なのか、きちんと説明するべきではないでしょうか。また、「再度、専門家にもご相談申し上げた上で、時期をみて皆様に見解を述べさせて頂きたいと考えております」と言っていたにも関わらず、25日の記事を見る限り、専門家にご相談申し上げた形跡が全く見られないというのは、一体どういうことなのでしょうか。今後ブログの更新を控えるおつもりなら、まずはその「見解」というのをきちんと出されたうえで、不勉強だった点を謝罪するべきでしょう。

この議員は相変わらず、自分の主張は正しいと信じて疑わずに、自分が市民を啓蒙して世の中を変えて行かなければならないという間違った使命感をお持ちのようなので、今後もきちんと監視を続けていく必要がありそうです。