新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『ひとつ海のパラスアテナ』のアキちゃんがボーイッシュで可愛いすぎる

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

『ひとつ海のパラスアテナ』を読んだ。少女がたった一人で大海原を旅する冒険活劇かと思って読み始めたら、途中から少女二人がイチャイチャしながら航海を楽しむ百合小説になった。いや、これはもうはっきりとラブストーリーだと言っていいでしょう。もはや性別は関係ない。それほどまでに、二人の少女の間に芽生えた愛はマリアナ海溝より深く、読者の心を大きく揺さぶるものでした。

物語の舞台は全ての陸地が海に沈んだ世界。人々はゴミや流木が滞積してできた浮島などに居を構え、細々と生活しています。14歳の少女アキは島々の間を行き来して人や物を運ぶ「メッセンジャー」として、たった一人(とペットのカエル一匹)でヨットに乗って航海を続けていました。ある日、アキは航海中に大きな嵐に遭遇、ヨットを失って無人の浮島に取り残されてしまいます。そこには、まともな食料もなければ水もない。詳しくは述べませんが、そこからの描写はもう壮絶としか言いようがない。24日間、アキはあらゆる手段を講じて必死に生き続け、餓死寸前のところを通りかかった船に救出されます。

ここまでが物語全体の約1/4に相当し、非常にシリアスで重いストーリーなのですが、アキの一挙手一投足が可愛すぎて、この主人公がたまらなく好きになってしまいました。活動的でボーイッシュな女の子が見せる中性的な可愛さと、そんな子から垣間見える女の子らしさが、フェティッシュなほど丹念に描かれているので、ボクっ娘とかが好きな人にはたまらない小説だと思います。

さて、アキが通りかかった船に救出されたところから物語の雰囲気は一転。その船に乗っていたのは、タカという2歳年上の少女で、彼女も訳あって船に乗って旅をしていたのですが、同乗者の男が不慮の事故で海に投げ出されてしまい、たった一人で漂流していました。アキがこれまでの経緯をタカに話すと、タカは「もう大丈夫よ」と言ってアキを抱きしめます。その胸の中でアキは、生き別れた母のことを思い出します。そして、タカが作ってくれた美味しい手料理を食べた瞬間、アキの目から止めどなく涙があふれ出し、泣きじゃくるアキをタカはいつまでもいつまでも胸の中で抱きしめます。おお、なんという百合! すばらしい!

その後、協力して航海を続けることになった二人。タカは得意の裁縫でアキのブラジャーを作ってあげたり、アキの髪を切りそろえてあげたりします。次第に女の子らしくなる容姿とは反対に、アキの中にある「少年」の心に一気に火が付き激しく燃え上がります。考えてもみてください。アキはこれまで「海の男」としてたった一人で生きてきました。そんな「男の子」が、死ぬ寸前に出会った命の恩人・タカは、まるで母のような暖かさと包容力があって、まるで父のようなたくましさや格好良さも兼ね備えていて、料理も裁縫も上手で、面白い話もしてくれて、おまけにおっぱいも大きい。こんな状況で恋に落ちない「男」なんていないでしょう。あっという間にアキはタカのことが大好きになってしまいます。

アキはとにかくタカのことが好きすぎて、ことあるごとにタカのおっぱいやパンツをジロジロ見ちゃったりしてます。そのことをタカにからかわれると「み、見てないよ!」とか言いながら顔を赤くして目を背けたりします。そんなやり取りが作中で4、5回繰り返され、読者は「お前らどんだけイチャイチャしとんねん!」とツッコミを入れたくなります。要するに、アキがタカと接する時の言動がもう、思春期の男子中学生みたいなんですね。それがまた、たまらなく可愛いんですよ! そんなアキの心情をもてあそぶように、タカのアキに対するスキンシップは過激さを増していきます。アキのスカートをめくったり、胸を揉みしだいたり、夜は一緒に抱き合って眠ったりと、もうやりたい放題。読者はニヤニヤしっぱなしです。

そんなこんなで物語は進み、最後に大きな試練が二人を襲うことになり、そして、物語は怒涛のクライマックスへと突き進んでいきます。これ以上はネタバレになるので言いませんが、女の子二人がイチャイチャする百合描写大好きな人、ボーイッシュなボクっ娘が大好きな人、そして海洋冒険活劇が大好きな人は是非、『ひとつ海のパラスアテナ』を読んでみてください。4月には続編が出るということなので、今から楽しみですね。