新・怖いくらいに青い空

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『響け! ユーフォニアム』第7話感想―葵ちゃんの退部と『青空エール』との比較

『響け! ユーフォニアム』第7話は、全国を目指した練習に嫌気がさした葵ちゃんが退部する話だった。滝先生も他の部員も、一応、退部の理由を聞いたり辞めないよう説得したりはするものの、無理に引き留めるようなことはしなかった。人それぞれに部活に対する考え方も置かれている事情も違うのだということをわきまえていて、節度ある対応をしていた点はとても共感できたし、他の部活モノの作品とは一線を画しているように感じた。

特に、同じ吹奏楽を題材にした漫画である『青空エール』なんかひどいもので、三年の最後の大会を前にして腱鞘炎が悪化して「大会出れないなら続ける意味ないし辞めるわ」って感じで辞めてしまった先輩がいたのだが、主人公の女がその先輩の家まで押しかけてきて「辞めないでください!」とか言う。その先輩は「あんたの顔なんか見たくない」とか言って追い返すんだけど、それでも何度も何度も、他の部員も引き連れて家に来て、家の前で演奏したり、泣きながら説得したりする。これもうほとんど脅迫みたいなもんだし、第一、近所迷惑だろ。しかも、その先輩も最後には心動かされて部活に戻ったりしてやがんの。読んでてバカじゃないかこいつら、って思ってた。

例えば、百歩譲って、最後の大会のメンバーに選ばれる可能性が高いとか、退部した勢いのまま学校まで辞めるとか言い出したなら、「ちょいちょい、待て~い! ちょっと冷静になって話し合おうぜ!」って言いたくなるのも分かる。でも基本的に、部活を辞めるのも続けるのも、本人の自由だろ。その自由を侵害する権利は、教師や親にすらないし、ましてや、数か月一緒に練習してただけの1年生が、本人の意思を無視して部活に来てください、辞めないでくださいだなんて何様のつもりだ?

――という感じで、日本の部活動にありがちな無自覚の全体主義を、さも美談のように描いている作品が多い中、『響け! ユーフォニアム』は去る者追わずという原則を守っていたのが非常に共感できた。が、逆に言えば、こんなまともな部活現実には存在しないだろ(少なくとも、全国を目指すような強豪校には)、という印象も強くなった。特に私の知ってる吹奏楽部の顧問なんて、部員が辞めるなんて言い出したら勝手な理屈こねて怒り狂ったり、練習中もちょっとしたことで爆発したりするパワハラ人間ばかりだった。なので、本作がリアルな吹奏楽部の姿を描いてるという意見には賛同できないし、むしろリアルさで言えば『青空エール』の方が上だろうと思う。