新・怖いくらいに青い空

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五輪エンブレムのコンペで不正が行われていた確率について

東京五輪パラリンピック組織委員会は28日、都内で開いた会見で、昨年9月に旧エンブレムの公募を発表する直前に、佐野研二郎氏ら8人の「特定の一流デザイナー」に対し、コンペへの参加要請文書を送っていたことを明らかにした。
(中略)
審査の結果選ばれた、佐野氏を含む上位3人は、事前に参加要請文書が送られた8人の中に含まれていたことも分かった。
組織委認めた エンブレム選考佐野氏ら8人特別扱い - 社会 : 日刊スポーツ

最終選考に残ったのは4案という報道(例えば、コンペ応募者に不信感「佐野氏ありきの選考だった」 - 社会 : 日刊スポーツ)もありますが、上の記述をそのまま受け止めるなら、最後に残ったのは3案で、それは全て、組織委が参加要請文書を送った8人の中から選ばれているようです。一方、これまでの報道で、コンペの参加者は全部で104人だったとも言われています。

では、ここで問題です。青玉96個、赤玉8個の合計104個の玉が入った箱から、無作為に3つの玉を取り出す時、その3つとも全て赤玉である確率を求めなさい。分かりやすいようにまず図を書いて、数学Aの授業を思い出しながら計算すると…

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あっ…(察し)

0.03%を分数で表すと、およそ3250分の1。…まあ、そういうことだ。

もちろんこれは、104人のデザイナー全員の実力がほぼ等しく、選ばれる確率は皆等しい、という仮定をおいた場合の確率です。参加要請を貰った8人は、デザイン業界でトップ集団にいる超一流デザイナーでしょうから、104人の実力が等しいという単純な図式が成り立たないことは明らかです。例えば、104人のランナーが走るマラソン大会で、8人が招待選手、残りが市民ランナーであった場合、上位3人が全て招待選手ということは十分に考えられます。招待選手と市民ランナーとではかなりの実力差があるでしょうから。

でも、今回のコンペの場合、参加要請を貰わなかった人も全員、日本を代表するプロのデザイナーなわけです。彼らが一斉にデザイン案を出してきてそれを審査するとなった時、マラソン大会ような誰の目で見てもハッキリ分かる実力差が現れるとは到底思えないんですよね。結局、公平な審査を行って3つの最終案すべてが例の8人の中から選ばれる確率は、0.03%よりは大きいかもしれないけれども、いずれにせよ極めて小さい値であると言えるんじゃないでしょうか。

そもそも、エンブレムを選ぶコンペにおける「公平な審査」とは一体どういうものでしょうか? 審査員の人選とか透明性とか色々考えることはありますが、素人でも分かる何にも増して重要なことは、デザイナーの名前を隠した状態で104種類のデザイン案を審査員に見せて審査を行う、ということですよね。入試の採点でも論文の査読でも、受験者や著者の名前が分からないようにして行うのが当たり前です。もちろん、論文の査読では、研究内容や論文の書き方で著者が分かってしまう場合もあります。けれども基本的には、採点者・審査員には受験者・著者の名前が分からないように最善の注意を払うことで初めて、特定の審査対象者だけを「えこひいき」するという可能性を排除することができるわけです。ところが今回の審査では、

  • 8人の一流デザイナーに参加要請文書が送られていた
  • 審査員全員がデザイン関係者で、審査対象者とも関係が深い
  • 佐野氏の案が選ばれた後になって修正が加えられた
  • 公平に審査して8人中3人が最終選考に残る確率はメチャクチャ低い

というような疑義が出てきています。これらの傍証から察するに、「えこひいき」はかなり高い確率であったのではないかと個人的には思いますね。これは、佐野氏の案がどこそれのロゴと似てるとか、彼の過去の作品がパクりだったとかいう話とは異なる、審査そのものに関わる問題だと言えるでしょう。審査にまつわる疑惑を白日の下に晒してくれたという意味において、私はむしろ佐野氏に感謝してるくらいです。

特に、エンブレムの展示例を示す画像で、個人のブログの画像を無断転用してた問題(東京五輪エンブレムの展示例 ブログの画像を無断転用か - ねとらぼ)は最高でしたね。ツギハギだらけの感動演出。無理矢理に作り出された一体感。まさに、2020年東京オリンピックを象徴していると思いませんか? この調子で、どんどん五輪をグダグダにしていって、開催返上まで持って行ってほしいものです。