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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

金星探査機あかつきとベネラ計画

探査機あかつきがついに金星の周回軌道に入ったという嬉しいニュースを見て、いろいろ惑星探査の歴史を調べるうちに、旧ソ連の金星探査について興味が湧いてきました。

今回のあかつきの観測によって、地球とは似ても似つかない高温高圧な金星大気で一体どのような現象が起こっているのか、という長年の謎を解き明かすことができるのではないかと期待されています。その中でも、スーパーローテーションと呼ばれる秒速100mもの暴風が何故起こるのか、そのメカニズムの解明につながるのではないかと注目されています。このスーパーローテーションの存在、そして、金星に関する様々な情報を解き明かしたのが、旧ソ連のベネラ計画でした。その計画の詳細について、非常に分かりやすくまとめられているサイトがあったので、さっそく読んでみました。

もう凄いの一言です。どこからツッコミ入れればいいのか分かりません。事実は小説よりも奇なり、という言葉がピッタリですね。上のサイトを参考にして、ベネラ計画について超簡単にまとめると、次のようになります。

  • 1961年、2機の探査機を打ち上げる。1機は失敗して地球に落下。もう1機(ベネラ1号)は無事に金星軌道に乗ったが、その後、機器の故障により通信不能となる。
  • 62年、3機の探査機を打ち上げるが全部失敗。翌年と翌々年も計4機打ち上げたがこれも全部失敗。
  • 65年、2機の探査機(ベネラ2号、3号)を金星軌道に投入することに成功。しかし、観測機器は全部故障してしまう。
  • 67年、2機の探査機を打ち上げる。1機は軌道投入に失敗。もう1機(ベネラ4号)は無事に金星に到着。観測によって金星の大気のほとんどが二酸化炭素であることが判明する。パラシュートを開いて着陸を試みたが、高温高圧な金星の環境に耐えられず途中で装置が故障し終了。
  • 69年、2機の探査機(ベネラ5号、6号)を金星大気に突入させることに成功。しかし、高温高圧のため、着陸前に装置が故障。
  • 70年、2機の探査機を打ち上げる。1機は失敗。もう1機(ベネラ7号)がついに着陸に成功(ただし、着陸の衝撃で大半の機器が故障)。観測によって地表の温度が475℃であると判明する。
  • 72年、2機の探査機を打ち上げる。1機は失敗。もう1機(ベネラ8号)は、ほぼ完璧な状態で着陸に成功。金星上空&地上の大気組成・圧力・温度・風速など、様々なデータを得る。
  • 75年、カメラを載せた2機の探査機(ベネラ9号、10号)を打ち上げ、2機とも着陸に成功。金星地上の写真撮影にも成功する。ただし、合わせて4台あったカメラのうち、2台はレンズキャップが外れずに撮影失敗。
  • 78年、カラーカメラを載せた2機の探査機(ベネラ11号、12号)を打ち上げ、2機とも着陸に成功。しかし、積んでいたカメラのレンズキャップが外れずに撮影失敗。
  • 81年、カラーカメラを載せた2機の探査機(ベネラ13号、14号)を打ち上げ、ようやくカラー撮影に成功する。ただし、レンズキャップが測定機器と地表の間にはさまり、測定できなくなるトラブルが発生した。

これはひどい…。軌道投入失敗と装置の故障ばっかりやん。カメラキャップのトラブル多すぎやろ。2機打ち上げて1機失敗とかが当たり前。まさに、下手な鉄砲数打てば当たる、ですね。何度もトライしながら問題点を潰していけば何とかなるやろ、というアバウトさ。

そう考えると、1発の打ち上げで確実にミッションを成功させる日本の技術力の高さには驚かされます。米ソ冷戦時代とは違って、日本の場合、厳しい予算の制限がある中で1度のチャンスを確実にものにしなければならない。でも本来なら宇宙開発なんて「やってみるまで何が起こるか分からない」が当たり前のはず。何度も失敗を経験して、技術をブラッシュアップして行くのが普通のやり方です。ところが日本の場合、前もってありとあらゆる事態を考えて完璧な準備をし、1つしかない探査機を確実に軌道に入れ、様々なトラブルに対処してミッションを遂行することができる。この芸当ができるというのが、日本の宇宙技術の圧倒的な強みでもあるわけです。

でも僕はやっぱり、何度失敗してもチャレンジし続ける旧ソ連・ロシア的なやり方も、結構好きだったりするんですよね。ベネラ計画が軌道に乗り始めた1970年代と言えば、アポロ計画でアメリカに先を越され、宇宙開発をソ連がリードする時代が完全に終わりを迎えた時代。華々しいアメリカの成功の裏で、こそこそと技術力を磨いて「次」に備えていたのがソ連です。何度も何度も失敗しても、そのたびに地道に改良を重ねて、ついには偉業を成しとげてしまうこの執念深さは、ちょっと常軌を逸してるレベルですね(もちろんソ連は当時、火星や月の探査を途中で断念して「アメリカに勝てるのはもう金星探査だけしかない!何としてでも成功させくてはならない」という状況だったという側面もあります)。しかし、この計画を通じてソ連の宇宙開発技術が飛躍的に向上したこともまた事実であり、それが今日、ロシアが世界の宇宙開発をリードする上で重要な原動力になっているわけです。今のロシアは、

  • 経験から学んだノウハウの蓄積が半端ない。
  • プーチンの独裁状態なので意思決定のスピードがメチャクチャ早い。
  • スペースシャトルが退役した後は、有人飛行の分野でほぼ独走態勢になってる。
  • 低コストで人工衛星を打ち上げる技術も持ってる。

という、手が付けられない状態になっています。これからの日本は、こんな強大な国と競争しなければならないのか…果たして日本は勝てるのだろうか…、という一抹の不安を感じています。