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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

土橋真二郎作品の世界―『扉の外』『ツァラトゥストラへの階段』

土橋真二郎さんが文章を書き、白身魚さんがイラストを描いたライトノベル『扉の外』『ツァラトゥストラへの階段』を今更ながら読みました。私が思うに、彼の作品の素晴らしい点は、ゲーム性の強い世界観を有すると同時に、登場人物の心情や心理状態なども丹念に作りこまれているという点です。普通この手の作品というものは、物語を動かすゲームの「仕組み」に重きが置かれていて、登場人物の内面とかは結構いい加減である場合が多いわけです。しかし、土橋作品ではこの2つを見事に両立させています。例えば、集団から必要とされていないと感じた主人公が次第に精神を病んでいく様子、普段はおとなしい少女が嫉妬と疑心暗鬼の中で狂っていく様子、そういった各登場人物の内面の描写は実に鬼気迫るものがあります。

そして、これらの作品を読み終わると「人間って愚かだなあ」ということを再認識させられます。お互いに協力すれば何の問題もなく平和に過ごせるのに、作中の登場人物たちは結局そうすることができません。ある人は相手への不信感・疑心暗鬼のせいで、またある人は自らの欲望に目がくらんで、結局武器を手に取って戦う道を選択してしまいます。我に返ったときには、時すでに遅し、全てを失って奈落の底に落ちてゆくのです。作中のゲームが実に良い舞台装置として、そして時には社会心理学的あるいはゲーム理論的なモチーフも多用しつつ、「人間の愚かさ」みたいなものが全編にわたって描かれているのです。

さて、土屋真二郎・白身魚コンビによる第3作目としては『コロシアム』という作品があり、そして第4作目として『女の子が完全なる恋愛にときめかない3つの理由』が今月発売されました。これらの作品についても、読み終わったらまた感想を書きたいと思います。