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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『女の子が完全なる恋愛にときめかない3つの理由』考察

ライトノベル

う~ん、なんかよく分からない作品だった。でも、決して面白くないわけではない。生徒会の恋愛利権を侵したために部活を追われた主人公・神崎は、雑用係の夕凪とともに、亜衣が代表を務める恋愛コンサルタントサークルを手伝うことになる。生徒の恋愛をサポートしたり、恋人を探している者が集うSNSを運営して金を巻き上げようとしたり、それに失敗して地下監獄に入れられたり、AIと恋愛して修羅場を経験したりと、場面は目まぐるしく変わっていくが、終始淡々とした文章が続く。すごく不思議な作品だ。

一見すると、一つ一つのエピソードには繋がりがないように感じられる。しかし、この作品で描かれていたのは、「愛」というものの価値が徹底的に揺さぶられている様だったように思うのだ。作中において、愛は市場で売買される商品に過ぎない。愛も、その他の多くの物やサービスと同じように、人が時間とお金をかけて人工的に作り出すことができる。それも、侮蔑や嘲弄といった、愛とは似ても似つかない感情の中から、まるで錬金術のように生み出すことができる。自動販売機のような人工物の中にすら、愛は芽生える。そのような愛にまつわる光景は、カメラによっていつでもどこでも視聴可能であり、学園内でエンターテインメントとして消費されている。

これはまさに、現代社会における「愛」の諸相と全く同じではないか。出会い系サイトやSNSやその他の様々なシステムにおいて、実際に愛は売買されている。芸能人の結婚・離婚・不倫といったニュースは、テレビやネットを通じて世界中に拡散していく。そして、実際にAIに恋をしている人間も存在する。本来は聖なるものである(と皆が思いたがっている)「愛」というものは、この資本主義社会の中ではビジネスの対象、絶え間なく生産・消費される商品に過ぎないのだ。

という風な作品理解の仕方は、ちょっと考え過ぎだろうか。でも、ここまで考えて作られた作品だとしたら凄いなあ。