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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『どうでもいい 世界なんて』感想

ライトノベル クオリディア・コード

主人公の上司がウェイウェイ系の戦闘科メンバーに連れて行かれるところとか、青色LEDで装飾されたまるでイカ釣り漁船のような営業車が登場するところとか、腹を抱えて爆笑した。よくもまあ、こんなにも笑える場面を思いつくものだ。こんな感じで、全編通して渡航節全開といった感じでした。というか、内容の半分くらいは作者の営業職時代の実体験が元になってんじゃねえかってくらいリアルで、そこもまた笑えました。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でも言えることですが、渡航作品の面白みって、傍から見ると実にバカバカしい有り得ない理不尽なことが、日本的な同調圧力とか場の空気みたいなものの中で正当化されていて、しかも主人公はその異常性に気付いているんだけど何やかんやでそこから抜け出せない、みたいなどうしようもない状況を、終始淡々とだけどコミカルに綴っていく独特の文章にあると思うんですね。みんなが理性的で論理的整合性のある行動をしていれば多くの人がもっと生きやすい社会ができるのに、結局どこまで行っても人間はその場の雰囲気とか単純な好き嫌いとか保身とか目先の利益とかに惑わされてしまう生き物で、そのせいで我々人間は日夜しょうもない面倒事に巻き込まれ、時間と労力を取られて疲弊していく。そんな人間社会の有り様を、主人公のシニカルでどこか達観した目線から眺めることで、ああ人間とはなんて愚かで滑稽な生き物なんだろう、という認識を新たにするのです。

主人公・千種霞の労働観を一言で表すなら「仕事が人を狂わせる」ということに尽きると思います。極端な成果主義に走り、使えない人間を容赦なく切り捨てる弱肉強食のシステムを敷く戦闘科。その戦闘科に対抗する中でブラック企業と化していく生産科。そんな争いを見ておかしいと思いつつもそこから逃れることのできない霞。彼が朝顔のロビー活動に協力しているのは、全て、自らの置かれた厳しい状況を変えるため、そして、愛する妹の傍にいても恥ずかしくない自分になるためでした。けれども、そのための手段として彼に課せられるのは、上司からの理不尽な要求と、いつ終わるとも知れないサービス残業なのです。彼自身は延々と最善手を指し続けているのだけれども、状況は一向に改善しないどころか、もうすでに詰んでいるのかもしれないという、何とも言えないやるせなさ。この描写こそ、渡航作品の真骨頂と言えるのかもしれないですね。

今後のアニメと、本作の第2巻の発売が待ち遠しいです。