新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『亜人ちゃんは語りたい』のOPにこの作品のテーマが全て詰まっている

アニメ『亜人ちゃんは語りたい』およびそのエンディング曲『フェアリーテイル』について、次のような考察をしている記事があります。

亜人デミヒューマンを題材に扱う作品の目的は、主に3つ。
「1:異世界ファンタジーらしさを出すため」「2:萌えキャラクターとして」「3:種の生態の表現・文化論」
(中略)
亜人ちゃん~』はというと、2と3の間。
4人の亜人女子の悩みや考え事を描くことで、現実の「マイノリティ」「バリアフリー」問題を間接的に考える作品だ。
エンディングで多様性を表すレインボーカラーのクレヨンを出しているあたり、意気込みが見える。
「亜人ちゃんは語りたい」が描くバリアフリー。バンパイアに国が月1で血液パックを支給 - エキレビ!(1/2)より引用)

しかしオープニング曲『オリジナル。』の方も、エンディングに負けず劣らず、意気込みが感じられて意味深な歌詞になっています。

語りたいよ 君の素敵 オリジナル
ざわめいた教室 浮きたくないみんな 愛想笑い
負けん気な瞳の君だけが 唇強く噛みしめていた
君は言ったね 誰かの目気にして 他の誰かを傷付けたくないよ
(『オリジナル。』、作詞:岡田麿里、作曲編曲:ミト、歌:TrySail*1

歌詞を見てもらえば分かると思うのですが、これ、明らかに学校での「いじめ」や「差別」のことを言ってる曲ですよね。

教室がざわめいているのは、そこで誰かがいじめられているからです。あるいは教室の中でマイノリティとなった生徒が、身体的特徴とか趣味嗜好とか家系とかをバカにされて笑われている。いじめは駄目だと分かっていても、みんな教室の中で「浮きたくない」ので、ただ流されるままに「愛想笑い」を浮かべている。そんな中で、「負けん気な瞳の君」=小鳥遊ひかりちゃんだけが、唇をギュッと噛みしめていたたまれない気持ちになっているわけです。「誰かの目」を気にするということは、すなわち、教室内で浮いてしまわないように空気を読みながら過ごすということ。でもそれは「他の誰か」、すなわち、「普通じゃない」というレッテルを貼られて差別されている人(それは亜人・障害者・LGBTの人など、色々な場合が考えられる)を傷付けることにもなる。そんなことはしたくない、間違っているものにはっきり「ノー」と言うことのできる自分でありたい、という風にひかりちゃんは強く決意する。

多数派によって形成された空気の中で、人々は同質化・規格化されていく。男は女を、女は男を好きになるのが普通、いつも五体満足でいるのが当たり前、共通の話題で盛り上がれるのが当然、という空気ができあがっていく。でも、人間とは本来、もっと多様性があるはずなんだ。障害者もいる、同性愛者もいる、血を吸いたくなる人もいるし、頭と体が分離してる人もいる。彼ら一人ひとりが掛け替えのない「オリジナル」な人間だ。その「オリジナル」をもっと知りたい、もっと語りたい、と高らかに謳い上げているのが、このOP曲なのです。

これはまさに、本作のテーマそのものと言えるんじゃないでしょうか。

*1:耳コピなので、間違っていたらごめんなさい。