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日本の電機メーカーがダメになった本当の理由

東芝とかシャープとか個別の企業について詳しく見ていけば色々な理由がつけられると思いますが、日本の電機メーカーが完全に共倒れ状態になってる根本的な理由は何なのか? という事は誰もが気になると思います。講談社現代新書の『東芝解体 電機メーカーが消える日』を読むとその謎が一気に分かりました。

本書の内容を自分なりにまとめると、電機メーカーが駄目になった根本的理由は2つしかないという事が分かります。

【理由1】 日本の電機メーカーは事実上、電力会社や電電公社の「下請け」みたいな状態になっていたので、電力・通信関係の設備投資が減らされるに従ってジリ貧になっていった

【理由2】 日本の電機メーカーは、ありとあらゆる分野の製品に携わる「何でも屋」だったので、新しい分野を開拓していく時の本気度が足りなかった

まず第1の理由について。みなさんご存じのように、東芝や日立といったメーカーは、原発を含むあらゆる電力インフラの製造に関わっています。また、かつての電電公社が発注する莫大な設備投資を請け負っていたのも、NEC富士通をはじめとする電機メーカーでした。彼らは、電電の民営化後も、ドコモと一緒になって携帯電話の製造に邁進していきました。これらはもちろん、旧通産省が国策としてこういう体制をとっていたわけです。要するに、かつての電機メーカーには、これらの莫大なお金が何もしなくても降ってきたので、それを山分けすれば良かったのです。そうすると当然、リスクを冒して全く新しい物を生み出そうとする意欲がなくなります。ただ上から言われるままに製品開発を進めるだけで、消費者のニーズを細かく分析することもできない企業文化になってしまいます。

結局、そのツケが今になって回ってきたというだけの話です。電電公社が民営化されて激しい競争に晒されるようになると、通信インフラ関係の設備投資は大幅に減らされました。ドコモと一緒になって作り上げてきた携帯電話事業も、スマホの普及によってあっという間に凋落していきました。さらに追い打ちをかけるように、福島第一原発の事故で原発関連事業の先行きが全く見えなくなっています。その結果として、日本の電機メーカーの仕事は減り、企業価値もじわりじわりと下がっていったわけです。

そして第2の理由。日本の電機メーカーはどこも、家電・通信・電力関係・防衛・半導体など、あらゆる事業を展開する「何でも屋」でした。ゆえに、どこか一つの事業がダメになっても他があるから大丈夫という心理が働き、本腰を入れて新しい分野を開拓するということができませんでした。また、祖業である家電部門に愛着が強すぎて、採算の悪い分野を切り捨てて得意分野に特化するといった意思決定が致命的に遅くなり、気付いた時にはもう手遅れという事態になってしまいました。

上記本の著者も、サムスンノキアシーメンスといった海外の企業と比べて、日本の各社の経営がいかにダメダメだったかを解説しています。各社とも事情は異なりますが、結局のところ全ては上2つの理由に集約されるのかなあと思います。

読んでいてまさに目から鱗が落ちたような感覚でした。そして、公正な競争が行われ、企業が時代に合わせて発展できる環境がいかに重要であるかがよく分かりました。