新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『将来的に死んでくれ』―不思議で衝撃的な百合漫画

次にくるマンガ大賞というものがあったので投票しました。私はもちろん『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』を1位にしたのですが、ノミネート作品を見るとかなり百合漫画、あるいは百合要素の強い漫画が多いなという印象。読んだことある作品だけでも『たとえとどかぬ糸だとしても』『ハッピーシュガーライフ』『やがて君になる』『私は君を泣かせたい』『将来的に死んでくれ』と、そうそうたる作品群です。

どの作品も好きですが、面白いかどうかは別として読んでいて一番衝撃的だったのが『将来的に死んでくれ』でしたね。

主人公の菱川俊は、同じ学校に通う小槙ちゃんのことが大好きすぎて、毎日のようにセックスさせてとお願いしてきます。しかも、そのたびに万札をちらつかせて、無我夢中で小槙を自分の物にしようとする姿は鬼気迫るものがあります。要するにこの子は、愛する人と一緒に寝ることで性的欲求が満たされるその対価として、お金を払うということを「当然」のこととして受け入れている子なんですね。さらに奇妙なことに俊は、相手にも自分のことを好きになってもらいたいと考えることはせず、ひたすらお金を差し出すことを繰り返すばかり。その執拗な様子はまるで、小槙を振り向かせる手段としてお金以外の方法を何一つ知らないかのようです。一体どんな育ち方をすれば、こんな性格の女子高生が生まれるのだろうと不思議でなりません。

それに輪をかけて不思議なのは、小槙ちゃんの方です。彼女は、俊から毎日のように異様な好意を向けられても一切スルーし、平然としています(もちろん、お金も受け取らない)。これは一体どうしてなんだろう。小槙は俊のことを「気持ち悪い」とか「怖い」とか思わないんだろうか。例えば普通の人間って、他人からこんなにも強い感情を向けられたら、平静を保つ事なんて出来ないと思うんですよ。誰かから敵意を向けられれば苛立ったり悲しんだりするし、好意を寄せられれば嬉しいと思ったり、あるいは逆にキモいと思ったりするはずです。にもかかわらず、菱川俊から放たれる強力な感情の塊を受けてもなお、小槙ちゃんは終始淡々としていて感情があまり表に出てきません。正直、読んでてぞっとしました。

こんな感じで、非常に理解に苦しむ性格をした2人の日常が描かれる『将来的に死んでくれ』ですが、まだ単行本が1巻しか発売されていないので、これから話がどういう方向に進んでいくのか非常に気になります。