新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『サクラクエスト』総評

他の人もすでに指摘しているが*1、『サクラクエスト』は1クール目と2クール目で「町おこし」の方針が大きく異なっている。1クール目に国王らが行った活動をまとめてみると、

  • チュパカブラ饅頭販促イベント
  • ゆるキャラ選手権
  • 間野山彫刻の魅力をアピール
  • 映画ロケへの協力
  • 間野山大そうめん博
  • 婚活イベント
  • 建国祭(バンド、クイズ大会、間野山クーポン)

等々、間野山の外からいかに人を呼び込むか、という観点から活動していたことが分かる。ところが、2クール目になると彼女たちの活動の性質が変わってくる。

  • 大量の外国人滞在&池干し
  • 高齢者とインターネット
  • 閉校になった校舎の活用
  • 商店街の空き店舗の活用
  • みずち祭の復活

これらはいずれも、外から人を呼び込むという点ではなく、元から間野山に住んでいる人々がこの慣れ親しんだ土地で活き活きと生活し続けていくためには何が必要か、という観点から行った活動だった。

これらの活動の結果として間野山が本当に活気を取り戻していけるのか、正直難しいところである。現実の町おこしで同じような事をやっても、上手く行くかどうかは微妙ではないだろうか。事実、今や猫も杓子も町おこしをやってる世の中で、本当に成功していると言える地域はほとんど無いのではないだろうか。一見成功しているように見える地域は、元々観光地としてのポテンシャルが高い地域だったりする。

地方の衰退という大きな流れに逆らうことは不可能に近い。それは、交通網の整備やインターネットの普及によって東京のような大都市と地方が近くなり人口が大都市に流出した事、全国どこでも同じような外食チェーン・コンビニ・量販店・ショッピングモールが乱立したせいで地域の独自性や伝統文化が破壊されてしまった事、などに起因しているため、地方の衰退を食い止めるようとしても個人や地方自治体レベルの努力ではどうしようもない場合が多い。そして、これらの根本を突き詰めると、それは都会でも地方でも国民が等しく便利な生活を送れるようにしようという戦後日本の政策に行きつくので、その政策の副作用としての地方の衰退は本当に悪いことなのか、という事まで考えなければならなくなり、袋小路に陥る。

サクラクエスト』の良かった点は、まさにこうした現代日本の現状をリアルに示したところだと思う。そこには明確な答えもゴールも存在しない。何が正しいとか間違ってるとかを決めることもできない。ただ、衰退していく町で生きる人々がいるだけである。であるからこそ、アニメとしては物足りないように感じる人も多いかもしれないが、この題材を用いる以上こういう形にならざるを得ないのではないだろうか。