新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

これからの『シャーマンキング』の話をしよう(1)

はじめに

9月23日の「ニュートリノは光よりも速い?」に続いて、24日にもビッグニュースが飛び込んできた。

『シャマンキング』復活!! 来春のビッグプロジェクトに向けで読切シリーズがジャンプXで始動!(やらおん!)

ここで言う「来春のビッグプロジェクト」とやらが、再アニメ化であると仮定して話を進める。シャーマンキングは1998年から週刊少年ジャンプに連載されていたが、2005年に一旦打ち切りとなり、2008年から2009年にかけて発表されたシャーマンキング完全版によってようやく物語は完結した。シャーマンキングのアニメ放送は2001年から2002年にかけてだから、あの「プリンセス・ハオ事件」や完全版発売決定よりもはるかに前のことだった。当然、アニメの後半は原作にないオリジナルストーリーということになり、ラストは葉とその仲間達がハオを倒して終了した。もし来春に再度アニメ化するとなれば、前回アニメとは全く逆のラストが用意されることになるだろう。これはマンキンファンなら是非見てみたいものだ。

クール数は?

では、実際にシャーマンキング完全版を忠実にアニメ化するとなれば、一体どれくらいの話数が必要になるのだろう。それを調べるために、週刊少年サンデーに連載されていた『うえきの法則』について考えてみる。『うえきの法則』の原作漫画は全16巻*1、アニメの放送期間は1年間、つまり4クールだった。そして、私の記憶が正しければ、両者のストーリーはほとんど同じだった。アニメ版でカットされた話も、追加された話もほとんどなく、ほぼ原作通りにアニメ化されたと考えていいだろう。よって、原作巻数とアニメクール数を単純に比較しても差し支えない。1クール当たり単行本数は、以下の計算により求められる。

(16巻)÷(4クール)=(4 巻/クール)

つまり、少年漫画をアニメ化した際、1クール当たりには単行本4巻分のストーリーが入っているわけだ。頑張ってストーリーを凝縮すれば、単行本5巻分くらいは行けるかもしれない。ここで、5(巻/クール)を、アニメ化定数と呼ぼう。単行本数をアニメ化定数で割れば、その漫画をアニメ化する際に必要なクール数が分かる。これを元に、シャーマンキング完全版をアニメ化する際に必要なクール数を求めよう。マンキン単行本は全32巻、完全版で追加されたストーリーはおよそ2巻分だから、合計34巻となる。よって、必要なクール数は、次のようになる。

(34巻)÷(5 巻/クール)=(6.8クール)

マンキンェ・・・。いくらなんでも6.8クールもの枠は貰えないだろう。どんなに頑張っても4クールか5クールだと思う。*2 つまり、完全版のストーリーを忠実に再現することは不可能で、何かしらのストーリーをカットしないと枠が足りなくなる、という結論に達してしまうのだ!

では、実際どの場面を削るのが妥当なのか。悪いことは言わない。アイスメン戦は削れ。BoZ(ボーズ)とかいう連中も居なかったことにして良い。*3 ガンダーラ関連も短縮してOKだろう。逆に、絶対に削れないのは恐山ル・ヴォワールと完全版追加分のストーリー(作品テーマの根幹に関わる話は削れない)。作品前半部も多分ほとんど削れない。ましてや、オリジナルストーリーを入れる余地なんて全く無いぞ。

逆に、アニメ化定数を限界まで上げれば何とかなるだろうか。計算上、アニメ化定数を8.5まで上げれば、4クールで全て収まる。しかし、これも度が過ぎると展開が駆け足気味になって良くない。*4 やはり、要らないエピソードはじゃんじゃん削って行くしかない。でも、要らないエピソードはあまり多くないぞ。さあ、どうしよう・・・。

声優は?

シャーマンキングアニメ版の声優の豪華さは、2000年代随一と言っても過言ではない。出演している主な有名声優(敬称略)を挙げてみよう。

改めて見てみると凄いメンバーだ。*5 ただ注意しなければならないのは、アニメ化した当時はまだ朴・水樹・堀江らは今日ほど有名ではなかったということだ(逆に言えば、彼女らはシャーマンキングが出世作の一つだったということでもある)。これは言い換えれば、再度アニメ化するにあたって、当時のメンバーを再招集するのは至難の業、というかほぼ不可能であるということでもある。

例えば『鋼の錬金術師』が再度アニメ化された際も、大幅に声優が変更されていた(最近で言えば、『HUNTER×HUNTER』も同様だ)。ましてやマンキンは、前回アニメから歳月が経ち過ぎた。大幅な声優の変更は覚悟しておいた方が良い。*6

では、キャスト変更に際して、どういった懸念材料があるのかを見てみよう。まず第一に、崇高なる美少女、否、「聖・少・女」であらせられるところのアイアンメイデン・ジャンヌ様に関して言えば、畏れ多くもその神聖なるお声を担当することのできる声優など、ごく限られているであろう。出来ることなら、引き続き堀江由衣が担当していただきたい。林原めぐみ高山みなみといった大御所声優に関しては、これはもう予算・スケジュールと相談するしかないが、役が役だけに、引き続き出演してほしいところだ。仮にキャストが刷新されることとなった場合、ハオ・アンナ・蓮・ホロホロ・まん太らの声を他の声優が担当している場面を想像するのは難しい。

主人公・麻倉葉役の佐藤ゆうこさんに関しては、もう何も言うまい。「何で彼女にもっと仕事をやらないんだ」とか、個人的な不平不満を言い出したらきりが無いが、私は声優業界にそこまで詳しいわけでもないし、葉のイメージと声が一致するのなら誰でもかまわない。*7 一方、アニメ未登場だったマタムネ*8については、(恐山ル・ヴォワールを省略するなどという愚行を犯さない限り、)主役級に匹敵するほどの重要キャラであるわけだから、慎重にキャストを決める必要があるだろう。

なんとかなる?

以上より、マンキン再アニメ化に際して、「クール数」および「キャスト変更」という2つの問題が立ちはだかっていることが分かった。しかし、そもそもまだアニメ化するかも決まっていないのだから、漫画版が復活するだけでも御の字だと思っておいた方が良い。そもそもマンキンファンは、幾度もの超展開(主人公のシャーマンファイト辞退、ペヨーテの発狂、プリンセス・ハオ事件)や連載打ち切り、その後の完全版発売決定などを見てきたわけだから、今さら何があってももう驚かない。今後の展開を注意深く見守るだけだ。

そう言えば、葉も言っていた。「なんとかなる」と。

(追伸)シャーマンキングのテーマに関しては、私が以前に書いた『シャーマンキング』と正義について―ラキストの「相対主義」と、マルコの「愛=正義論」という記事を参照していただきたい。

*1:アニメ化されていない『うえきの法則+』は除く。

*2:ちなみに、前回アニメは5クールだった。

*3:BoZ(ボーズ)が居ないと、ペヨーテ戦に支障が出るが、そこは気合でカバーしよう。

*4:そもそもアニメ化定数5ですら高すぎるかもしれないというのに。

*5:この他にも、故・川上とも子(ピリカ)、高木渉(蜥蜴郎)、犬山犬子(まん太)らが出演した。アニメオリジナルキャラや脇役キャラにも、有名な声優が多い。

*6:おそらく監督も変わるだろう。『鋼の錬金術師』の監督は、水島精二から入江泰浩へと変更された。そして皮肉なことに、マンキンアニメ版の監督も水島精二である。

*7:一応言っておく。新人棒読み声優だけはやめろ。

*8:ドラマCDには出演していたが。