新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『銀の匙』第2話考察―先入観を捨てて物事を見るということ

稲田先輩の持ってきたスモークチキンを見て、八軒の脳裏にニワトリの首を切断する生々しい光景がよみがえる。それでも「いやいや、先入観はいかん」と覚悟を決めてかぶりついたスモークチキンは、言葉を失うほど絶品だった。さらに、タマコが稲田先輩の妹であり、トリミングすれば美人になることを知って驚く八軒たち。「何事も先入観で判断しない方が良くってよ」。

場面は変わって、御影にすすめられて農耕馬にニンジンをやる八軒。最初は手首をもぎ取られそうな威圧感にビビる八軒だったが、なんとか無事にニンジンを与えることができた。「ね、可愛いでしょ」「可愛いかどうかは分からないけど、物事、先入観で判断してはいかんということは、ここ数日で嫌というほど学んだ」。続けて、あれだけ巨大で迫力のある馬が、実は繊細で臆病な生き物だと教えられる。

アニメ第2話で八軒は、この他にも様々な出来事を通じて、先入観で判断するのはよくないという事を思い知らされる。メス牛に欲情する変態ばかりが集う部活だと思っていたホルスタイン部が、実は大学レベルの研究設備を持つ凄い部活だったり。体力のなさそうなタマコが、卓球で俊敏な動きを見せたり。まさに「先入観」が第2話のテーマだったと言えるだろう。

では、先入観を捨てて物事を見るためには、一体どうしたら良いのか。やはり大事なのは、いつもとは違った視点から物事を見てみる、という姿勢だろう。ちょうど、タマコの顔をトリミングすることで、印象が変わって見えたように。最初はビビッて上手く馬に乗れなかった八軒のように、いつもとは違う視点から世界を見るためには勇気がいる。でも、そこを乗り越えた時に待っているのは、今まで知らなかった新しい世界だ。

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あるいは、先入観を捨て去るとは、人間の持つ邪な心を捨て去るということにも通じるのかもしれない。御影さんと仲良くしたい、掃除をサボって楽をしたい、そういう邪念を抜きにして真っ向から馬と向き合ったからこそ、八軒は新しい視点に立つことができたのだろう。少なくとも、掃除をサボろうとした自分を恥じ、休日も馬の世話をしてもいいと思えるくらいの心境の変化があった。そこで幸運にも、御影さんと2人きりで部活をするチャンスに巡り合えた。「チャンスは、準備された心に降り立つ」とはルイ・パスツールの言葉だが、まさに今回、馬と真摯に向き合う心を持ったからこそ、八軒に幸運が舞い降りてきたのだ。