新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

SAOのパロディ4コマ漫画『そーどあーと☆おんらいん。』が面白い

ソードアート・オンライン』のパロディ4コマ漫画である『そーどあーと☆おんらいん。』が予想を上回る面白さでした。この作品は、完全にSAO本編それも原作小説の方を読んでる人向けに描かれた作品で、各キャラの特徴を生かしたギャグやあるあるネタが大量に盛り込まれています。読んでいて「原作ではサラッと流されてたけど、確かにそこの部分はどうなってるのか気になるよな~」と思う事も多く、SAOの新たな楽しみ方を提示してくれます。そして何より素晴らしいのは、原作やアニメではすごくシリアスに描かれていた場面でも、徹底的にギャグに落とし込んでいて、SAOやALOでの生活が終始面白おかしく描かれている事です。

例えば、クラディールを倒した後にキリトとアスナが抱き合うシーンでは、ハラスメント防止コードの警告音が鳴り響いて「ああ……ムードぶち壊しだなぁ…」(第1巻、94P)となったり、世界樹の真下にいるキリト達に向けてアスナがカードを落とすシーンでは、アスナが「真下にいるとは限らないのにカード落としちゃったし あーんどうしよう わたしのバカぁ!!」(第2巻、76P)とか言ってオロオロしたりしています。

よくよく考えてみれば、人間の生活というものは上に挙げたようなシーンの連続なんじゃないかと思います。どんなに悲しい時でも、空腹で腹が鳴ったりするし、真面目に考えなきゃいけない場面でも、どうしても笑いを抑えられない時もある。格好よく決めようと思っても、恥ずかしいミスをして笑われたりするし、恋人とかと良いムードになっても、変な邪魔が入ってきて話の腰を折られる。「よりによってこんな大事な場面で何でこんなことに」的な、どうしようもなく間の悪い瞬間。『そーどあーと☆おんらいん。』は、この「間の悪さ」を上手く笑いに変換しているんですね。

シリアスな中に突如現れてくる笑い。これは結局、お昼寝中のキリトがアスナに言った台詞に通じると思うんですね。現実世界に帰りたい一心で血眼になって戦っていたアスナに対してキリトは、今日はアインクアッドで一番良い気象条件の日なんだから、こんな日に洞窟に潜ったりしたら損だと言いました。そこからのアスナさんは、お料理はするわ、恋はするわ、最後にはキリトさんとの新婚生活まで満喫し、かけがえのない充実した日々を過ごしていったわけです。まさに彼らは、SAOというゲームの中で命がけで戦うと同時に、SAOというゲームを命がけで楽しんでいたんだと思います。『そーどあーと☆おんらいん。』は、後者の「命がけで楽しむ」という部分に焦点を当てていて、それがアンソロジーでありながらSAOという作品の本質をついているように感じます。

そして何より、ギャグメインの作品なので、キリト・アスナのイチャイチャっぷりも徹底的に描いています。例えば、初デート前のアスナさんの慌てふためきようとか、夜を共にする時の初々しいやり取りとか、まさに「こういうのを見たかったんだよ!」とうならせてくれる場面が目白押しになっています。やはりこの手の作品の醍醐味は、本編に描かれてない部分を読者が想像して楽しむことだと思います。近年では、一つの作品がアニメ化されると、それと同時期にスピンオフとか、公式アンソロジーとか、パロディ4コマとかいう名前の付いた派生作品が大量に出回るわけですが、それも「本編に描かれてない部分を見たい」という需要がかなり強いということを示しています。

ところが実際には、そういう派生作品まで頑張ってフォローしようとしても、それらを全て集めると膨大な量になり、何から手をつけていいのか分からないという事態になりかねません。しかし、SAOに関しては、ここで紹介した『そーどあーと☆おんらいん。』に一見の価値ありと言えるんじゃないでしょうか。