新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

2015年下半期のアニメ総評

上半期のアニメについてはこちらの記事に書いた。

干物妹!うまるちゃん

始まる前はノーマークだったが、知人に勧められて見ると意外と面白かった。外ヅラ妹、ゲーマー妹、干物妹という風に、縦横無尽にキャラを使い分ける姿が面白い。あれくらい自由に仮面を付け替えることができたら人生は楽しいだろう。回が進むにつれてうまるのブラコンっぷりが加速していくのも良かった。おそらく、干物妹状態こそがうまるの本性という言い方は正確じゃないだろう。あの姿もまた、お兄ちゃんに構ってほしいといううまるの気持ちを表現するために作られた仮面の一つなのだと思った。

城下町のダンデライオン

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久しぶりに花澤さんのキャラに萌えた。真面目で恥ずかしがり屋で、兄弟の中では常識人として振る舞ってるけど実はバカ、というキャラ設定が可愛い(でも、さすがに短パン履き忘れて登校はバカすぎやろ)。それと、上の記事でも書いたように、日本的空間であるにも関わらず、王族と国民との距離がめちゃくちゃ近いという不思議な世界観が結構面白かった。やっぱり日本の場合、良くも悪くも皇室と一般国民との間の隔たりが大きいので、こういう開かれた王族を見ていると、憧れるとまでは言わないが、どこか新鮮な気持ちになるのである。

のんのんびより りぴーと

回によって面白さにバラつきがあった。私が面白いと思ったのは、1話、3話、4話、9話、10話(れんちょんと夏海がメインの回が面白かった)。時間軸を巻き戻して1期でやらなかったエピソードを描くという方式(『ゆゆ式』原作漫画と同じ方式)については、まさに「りぴーと」の名にふさわしいと思ったし、面白い試みだと思った。

WORKING!!!

こずえ姉さんと山田兄のウザさが半端なくて出てくるたびにイライラしていた。周りの人たちが真面目に考えてる時にも、こいつらは毎回出しゃばってきて人を茶化す、あるいは、ふざけた気持ちでテキトーなこと言って話をややこしくする。ただただ不快で、マジでぶっ〇したい気持ちになった。

それ以外の場面に関しては、さすがの安定感である。キャラに関する色々な設定を投げ出したまま尻すぼみになって終わる作品が多い中、『WORKING!!』は、まひると小鳥遊、八千代と佐藤さんがちゃんと恋人となり、山田が家族のもとに帰り、音尾さんの奥さんが無事見つかり、堂々としたラストを迎えられたのは本当に良かった。私がこのブログを始めた当初からあった作品がこうして完結していくのは実に感慨深いものがある。間違いなく、2010年代を代表するアニメとして後世に語り継がれるだろう。

がっこうぐらし!

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ストーリー、演出、声優の演技、全てにおいて素晴らしい出来だった。これまであったホラーや日常系とは一線を画した他に類を見ない作品として、ネット上などでも大きな話題になったことも含めて、2015年を代表するアニメ作品と呼べるだろう。

乱歩奇譚

製作会社のラルケは『がっこうぐらし!』の方に全てのリソースをつぎ込んでしまったのだろうか。こちらはとにかく脚本がひどすぎる。特に第5話の心神喪失に関する描写は大問題だと思う。あるブログで「現実世界でも誤解されがちな心神喪失・耗弱について軽々しく、現実世界のそれとはかけ離れた描写を乱発するのは如何なものか」*1と述べられていたが、私も同感だ。第8話のアケチとナミコシの会話も、難解な用語を使うことで2人が並外れた頭脳を持っていることを表現したつもりなのだろうが、私には狂人の支離滅裂な妄想にしか聞こえなかった。二十面相事件を引き起こした未来を予測する数式とかいう中二病全開の設定も、はっきり言って数学と社会科学に対する冒涜に近いと思う。数式の完成のためにはナミコシとコバヤシの死が必要、という理屈も全くもって理解不能だ。

唯一、ミナミ検視官のキャラは好きだった。ナミコシのような中二病の異常者に付き従ったのは間違いだったが、彼女は最期まで弟の復讐のために生き、弟への愛に殉じた狂人だった。藤田咲さんの名演も素晴らしかった。

Charlotte

私は麻枝准作品のヒロインが結構苦手で「え~、ネタとかじゃなくてマジでこういうキャラがウケると思ってシナリオ書いてんの、この人。ていうか、こんなしゃべり方の妹とか絶対現実にいないだろ。視聴者に媚び売るようなポーズや仕草を事あるごとに入れてくるけど、ぶっちゃげそれ本編と何の関係もないよね? これ、麻枝准が細かいところまで全て自分で考えて作ってるんだとしたら、麻枝准って相当ヤバい人だと思うし、友利の言葉を借りるなら『引くなっ!』って感じなんだけど」と思ったりしながら見てたけど、デニー友利生徒会長はメチャクチャ可愛かったです。

だけど、ストーリーの方は本当に酷い。能力者を見つけ出すまでの友利の推理とかがテキトーすぎるし、主人公側・敵側ともに考え出す作戦がガバガバすぎる。前半と中盤と後半とで話の展開がバラバラで、ただテキトーに麻枝准がやりたかった話を詰め込みました感が半端ないし、みゆきちとか友利の兄さんとかマジで何のために出てきたのとしか言いようがない。最終回の描写についても、あるブログ*2では、「能力者の意思を無視して勝手に能力奪うのっておかしいだろ」「能力奪われた後で非合法組織に狙われない保障はどこにも無いし、能力で自己防衛できる分、能力持ってた方がまだ安全なんじゃね?」という趣旨の感想を述べていたが、私も確かにその通りだと思った。やっぱり麻枝准ひとりに全てのシナリオを書かせるのは無理があるんじゃないかと感じた。

下ネタという概念が存在しない退屈な世界

原作ラノベ第1巻は以前読んでいた。アニメ化すると聞いたときは正気かと思ったが、これが意外と面白い。毎回、マシンガンのように繰り出される下ネタの嵐は、まさに視聴者に対する下ネタテロだ。下品で最高に笑える作品でありながら、あらゆる性的表現が規制され間違った性知識が蔓延する世界をきちんとディストピアとして描いていて、メッセージ性を強く感じられた。

そして何より、故・松来未祐さんが演じたアンナ錦ノ宮の圧倒的存在感。下ネタの存在が許されないディストピアが生んだ最狂のキャラクターは、我々に強烈なインパクトを与えた。アンナだけでなく、他の数多くの魅力的なキャラクターとともに、松来未祐という声優は伝説になったのである。

ガッチャマン クラウズ インサイト

「空気」に支配された政治の行き着く先が、国民の思考停止(サル化)であり、少数派の排除であり、戦争である、ということをこれ以上ないくらい分かりやすく表現している作品だった。それに対抗する手段は、タイトルにもあるとおり、複数の視点から物事をとらえる洞察力(insight)であり、おかしいと思うことに対して勇気を持って「水を差す」という行為だ。本作は、全体主義の危険性を指摘しリベラリズムの重要性を説いたというよりもむしろ、そういった政治思想よりもさらに深いところにある日本的な「空気の支配」や「社会の同調圧力」に警鐘を鳴らしていたように思う。

一方で、現実の日本を見てみると、「空気の支配」とは少し違う状況が発生しているように感じる。私には、原発の再稼働や集団的自衛権の行使を容認する国民の「空気」が形成されているとは到底思えない。にも関わらず、安倍政権のもとでそれらの政策が粛々と実行に移されているのは、大多数の国民が表立ってそれに賛成も反対もしないという無関心状態になっているせいだ。これはもはや「空気の支配」よりもさらに深刻な「国民のサル化」が始まっていると考えていいだろう。サル化が完了した暁には一体何が待ち受けているのか? 私は、それは憲法改正だと思っている。

このように、極めて時事的な問題を扱ったチャレンジングな作品だと思ったが、不満点も多かった。まず第一に、話が間延びし過ぎていて、12話もかける必要があったのかと思う(ただし、世間の空気がじわりじわりと変わっていく恐怖を丁寧に描こうというのなら、やっぱりこのくらいの話数を使うのもアリなのかなあとも思った)。それと、ゲルちゃんやそれを支持する国民の思考があまりにも安直すぎる。いくらなんでも、あんな得体の知れない宇宙人にコロっと騙されるほど国民はバカではないだろう。そして、登場人物が事あるごとに作品のメッセージを分かりやすく叫んじゃうのも、いくら何でもあからさま過ぎだろうと思う。

赤髪の白雪姫

早見沙織という声優の底力を再確認したアニメだった。正直言って、ストーリーはいかにも少女漫画って感じで、見てるこっちが恥ずかしくなるような臭い台詞も満載だったけど、早見沙織演じる白雪の可愛さの前には全てが些細なことのように思える。例えば、終盤の鳥の話にしたって、私の心の声が「人間の役に立つ動物だから狩りはやめて保護しましょうとかスゲー人間本位な考え方だよな。鳥を飼って友達とか言ってるのも全部人間側の都合じゃん」などと言うのだが、もう一人の自分が「うっせえ黙れ! あれは白雪と王子の覚悟を示し、その後のイチャラブっぷりを描くために必要な話なんだから、そんな細かいことでグダグダぬかすんじゃねえ!」と言うのである。最終回も、「フード取っ払って観客に赤髪見せれば大盛況間違いなしっしょ!とか、いくらなんでも考え方がおバカすぎやろ」と思ってしまうが、繰り返すように、白雪が可愛すぎるので「そんなんどうでもいいやろ」と思えるのである。1月から始まる2クール目にも期待したい。

櫻子さんの足下には死体が埋まっている

5話まで見て止めた。天才的な頭脳を持つ女性とまだ幼さを残す青年とのコンビが様々な事件に遭遇しそれを解決していくという設定がそもそも非現実的なので、ストーリーが何かもうツッコミどころ満載になっている。同じようなコンビが登場する物語として『GOSICK』があるが、こちらは第1次大戦後の欧州という舞台背景や少しファンタジー寄りの設定なども含めて作品として成立しているのであって、ミステリー要素に関してはちょっとどうかと思う部分も結構ある。なので、同じことを日本の旭川でやられると、ただただ微妙なミステリー要素だけがクローズアップされる残念な形になってしまうのだ。

対魔導学園35試験小隊

二階堂マリちゃんが死ぬほど可愛いだけのアニメ。このアニメに限れば、展開が速すぎてついて行けんとか、いくらなんでもテンプレ展開多すぎやろとか、いちいちツッコミを入れるのは野暮なことである。二階堂マリちゃんの可愛い仕草を見れるというだけで、もう大満足なのだから。強いて言うなら、作画がもう少し安定していればなお良かったのにとは思った。

終わりのセラフ 名古屋決戦編

これはいかんでしょ…。これ、分割2クールという形式にした意味あったのか? もう少しキリの良いところまで原作エピソードが溜まってから2期をやってほしかった。終わりのセラフという実験の詳細、それを使って帝鬼軍やグレンやクルルは何をしようとしてるのか、その他一切の謎は不明のまま終了。う~ん、『対魔導学園』みたいにキャラが可愛いだけのネタアニメとして消費できる作品なら、ここで文句も言わないが、『終わりのセラフ』はそういう作品じゃないでしょうが。まあそれはそれとして、シノアさんの可愛さは2期でも健在でしたね。三宮葵・三葉の姉妹も可愛いです。葵は上司である暮人のこと愛してやまない女性で、すでに体の関係もあるけど、暮人は性欲処理の相手くらいにしか思ってなさそう(※これはあくまでもイメージです)。あと、この作品を完全に理解しようとするなら、スピンオフ小説である『終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅』の方も読まないといけないかなあと最近思っている。

ゆるゆり さん☆ハイ!

相変わらずの安定感でホッとした。話数単位10選*3の方では、『ゆるゆり』の基本骨格であり深淵でもある京結衣の素晴らしさを再確認させられた第10話を選出したが、記事をアップした後に視聴した第11話も同じくらい面白かった。普段見せない様々な表情に変化する結衣が死ぬほど可愛かったし、熱が出て自宅のベッドで「い~や~!!!」と叫ぶちなつに爆笑した。『ゆゆ式』もそうだったが、大久保瑠美津田美波が荒ぶってる回は面白いと相場が決まっている。