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マラソン五輪代表の選考は毎回何故こんなにも揉めるのか?

大阪国際女子マラソンを日本歴代7位の2時間22分17秒で制し、リオデジャネイロ五輪代表が当確となった福士加代子(33=ワコール)が、最後の選考レース・名古屋ウィメンズ(3月13日)に出場を検討していることが1日、分かった。名古屋での他選手の結果次第で、代表落選の可能性がわずかにある福士陣営が、明確ではない日本陸連の選考基準に対する問題提起の意味もあり、五輪当確選手による前代未聞の選考会再出場を視野に入れている。
福士「リオ決定だべえ」なのに…名古屋出場検討 - 陸上 : 日刊スポーツ

◆92年バルセロナ 世界選手権4位の有森裕子と大阪国際で有森を上回る2時間27分2秒の松野明美が争う。松野は「私を代表に選んでください」と異例の会見を開くも、有森に軍配。
◆96年アトランタ 鈴木博美は大阪で2時間26分27秒と候補中、最高タイムを出しながら落選。一時は陣営が鈴木を強く推薦するなど論議を呼んだ。
◆00年シドニー 世界選手権で市橋有里が銀メダルで内定。その後、東京で山口衛里が優勝、大阪で弘山晴美が2位、名古屋で高橋尚子が優勝。3つの選考レースで2時間22分台の好タイムが続出。弘山が涙をのんで、早期内定に批判の声も出た。
(同上)

あと、この記事には書かれてませんが、2004年アテネ五輪の選考でも、曖昧な選考基準のせいで、選考レースで日本人最上位に入った高橋尚子が結局選出されずに物議をかもしたことがありました。もう……本当にねえ……

日本陸連のバカども、どんだけ学習能力ないんだよ!

マジで無能の集まりやな! 頭悪すぎやろ!

なんでマラソンの選考は毎回揉めるのか。結局それはですね、

  1. 選考基準に「総合的に勘案し」(後述)などという曖昧な表現を入れていること
  2. 出場枠が3人なのに選考レースが4つもあること

という2つの問題点に集約されるんです。それを、日本陸連のバカどもが、ずーっとずーっと、放置したまんまにしてるから、毎回毎回、誰が五輪に行くかで揉めることになるんですよ。

そして、上2つの問題点を放置しているが故に、最後の選考レースでの「他選手の結果次第で、代表落選の可能性がわずかにある」という事態が発生してしまい、今回の福士選手のようなケースが出てきてしまうんです。

もう、バカとしか言いようがない。本当に頭にくる。でも、今一番怒り心頭なのは福士選手と、彼女が所属するワコールの永山忠幸監督だと思いますね。

現行の選考基準

そもそも、なんでこんな事になってるのか。それを解説するためにまずは、リオ五輪の女子マラソン日本代表の選出方法を確認しときましょう。陸連が公開してる選考基準によると、まず女子マラソンの選考競技会として

  1. 第15回世界陸上競技選手権大会
  2. 第1回さいたま国際マラソン
  3. 第35回大阪国際女子マラソン
  4. 名古屋ウィメンズマラソン2016

の4つの大会を設定しています。そして、

選考競技会1の男女マラソン8位以内入賞者で、日本選手最上位者各1名を内定する。

としています。つまり、昨年8月の世界選手権で日本勢最高の7位だった伊藤舞は自動的に五輪代表に決定ということです。そして、残りの2人については、次のように選出するとしています。

男女選考競技会2~4において日本人3位以内の競技者から、下記の1から2の優先順位で選考する。

  1. 日本陸連設定記録を有効期間内に満たした競技者。(各最大1名)
  2. 各選考競技会での記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件等を総合的に勘案し、本大会で活躍が期待されると評価された競技者。

つまり、陸連設定記録(女子の場合は2時間22分30秒)をクリアした者が1人以上いる場合は、その中でトップの者が五輪代表になるということですね。そして、残り1枠については「総合的に勘案し」て最も「活躍が期待される」選手を選ぶということになります。

大阪国際女子マラソンでの福士の記録は2時間22分17秒であり、陸連設定記録をクリアしています。そして、有効期間内に設定記録を破っているのは、今のところ福士ひとりだけとなっています。なので、彼女が代表になる可能性は現時点で極めて高いわけですが、名古屋ウィメンズマラソンの結果次第では話が変わってくるわけです。例えば、新たに福士を上回るタイムを出す選手が出てきたりしたら、その人が五輪代表に優先的に選ばれ、3枠目を福士と他の選手とで争うという形になります。

名古屋には、野口みずき木崎良子などの有力選手が出場するわけですから、彼女たちが福士のタイムを上回ってくる可能性はゼロではない。だからこそ、福士も保険として名古屋に出場しておかないとまずい、という事態になっているんですね。

何やそれ、陸連設定記録の意味ないじゃん! 福士選手からすれば勘弁してくれって話ですよね。せっかく設定記録を破って「さあこれからリオに向けて調整しよう」という気持ちになってたのに、余計なレースをもう1回走らされるというのは大きな痛手ですよね。

改正案1

じゃあ、どうすれば、このような問題が起こらずに公平に代表を選ぶことができるんでしょう。日垣隆さんは2005年(高橋尚子アテネ五輪代表に落選した次の年)に、次のように選考基準を変えれば公平になると述べています。

第一:前年の世界選手権で、日本人最上位を代表とする。
第二:それ以外の代表は、三つ(東京、大阪、名古屋)の選考レースの日本人最上位のうち、タイムで上位の二人とする。
(『世間のウソ』、164頁)

なるほど、このようにすれば、先ほど見た2つの問題点のうち1点目については解消されそうです。「気象条件やコースが違うのに単純にタイムだけを見て選出していいのか」という問題点は依然あるものの、タイムという絶対的な基準を設けておけばトラブルは避けられるかもしれません。この基準でアテネ五輪の代表を選んだとしても結局高橋は落選するのですが、少なくとも選考基準の曖昧さのせいで色々物議を醸すようなことはなかっただろう、と日垣は述べています。

しかし、この方法で選考を行っても、今回の福士選手のようなトラブルが発生することは避けられません。例えば、3つの国内選考レースがあって、その1番目のレースで福士が日本人最上位になったとしましょう。それでも、残り2つのレースで他の誰かが福士のタイムを上回る可能性がありますし、それで2人以上に抜かれたら福士は代表落選ということになってしまいます。

結局、「総合的に勘案」とか「タイム上位を選出する」とかいう基準にしている限り、このような問題は付きまといます。最初と二番目の選考レースで上位に入った選手は、最後のレースにも出場すべきか否かという難しい選択を迫られるわけです。

本当なら出場せずに五輪の準備に専念したいが、もし他の選手が自分の記録を抜いたら代表落選の可能性もある。無理にレースに出たら、五輪本番のレースに支障を来すかもしれない。3番目のレースに出場しようがしまいが、代表選出(あるいは落選)という結果は変わらないかもしれない。けれども、他の選手が五輪代表の座をかっさらって行く可能性がごく僅かでもある以上、自分もレースに出場しといた方が良いんじゃないか……。う~ん、これは非常に難しい選択だ。

改正案2

このようなジレンマを無くすための一番手っ取り早い方法は、次のような選考基準にすることですよね。

選考レースを1回だけ開催し、そこで上位3位までに入った選手を五輪代表とする。

どうでしょう。こうすれば、同じ気象条件の同じコースで、最も実力のある3人を選出することができます。

しかしこの方法だと、代表選考のチャンスが1回しかないので、怪我や病気、突発的なトラブルなどのせいで本来の実力を発揮できなかった選手に対する救済措置が全くありません。これはこれで、色々と物議を醸しそうですね。

改正案3

そこで私は、次のように選考基準を変えれば、最も公平でトラブルの少ない代表選出ができるんじゃないかと思っています。

選考レースを3つ設定する(うち、1回は世界選手権)。各選考レースで日本人最上位になった選手を自動的に五輪代表とする。

要するに、選考レースをするごとに1人ずつ五輪代表が自動的に選ばれるようなシステムにすればいいのです。

まず、世界選手権で日本人最上位になった選手が自動的に代表に選ばれる(ここは現行法と同じ)。次に、2番目の選考レースで日本人最上位になった選手が代表に決定する。これらのレースで負けてしまった選手たちは、最後の1枠を賭けて3番目のレースに臨む。

どうでしょう。このようにすれば、今回の福士選手のような問題は回避できそうですね。しかし、この方法にも問題があって、それは「タイム上位3名の選手が必ずしも代表に選出されるとは限らない」ということですね。例えば、2回目の選考レースで日本人2位になった選手は、3回目のレースで日本人1位になった選手よりタイムで上回っていたのに、日本人1位になれなかったせいで代表入りを逃した、というようなケースが発生する可能性があります。

しかし、タイムというものは気象条件やコース、ペースメーカーの有無によっても変わってくるわけですし、タイムか順位かどっちを優先すべきか議論し出したらキリが無いわけですよね。だとしたら、タイムで選出するよりも、順位で選んだ方が利点が多いと思うんですよ。そうすれば、1番目と2番目に選ばれた選手は、何の心配もせずに五輪への準備に取りかかれます。ベストなコンディションで選手を五輪に送り出そうとするのであれば、順位によって代表を決めるという方法に変えるしかないんじゃないでしょうか。

まとめ

いずれにせよ、選考基準に曖昧な表現を入れることは避けた方が良いと思います。タイムでも順位でもいいので、とにかく何らかの客観的な基準によって自動的に代表を選出するようなシステムにしないと、今後も必ず似たような問題が起こります。

そしてやっぱり、代表が3枠であるならば、選考レースは(世界選手権も含めて)3つまでにすべきなんですよ。現行法では、世界選手権で1名選出、残り2枠を3レースで選ぶ、という方式になってます。この方法では、選考レースで日本人最上位だったのに代表から落選した、という人が最低1人は出てきてしまいます。これではどうしても争いの種になりますよね。

なので基本は、世界選手権と他2つのレースで日本人最上位だった選手を代表にするべきです。最上位のタイムがあまりにも低くて「これじゃ五輪での活躍は見込めないな」という場合には、他レースで2位だった選手が代表になる。もちろんこの方法では、選考基準の曖昧さ(タイムを取るか、順位を取るか)という問題は残りますが、選考レースを4つにしている現行法よりはまだマシになるんじゃないでしょうか。

いや~、本当にこの問題は難しいですね。誰もが納得する完璧な選出方法というのは存在しないので、皆で議論しながらなるべく不公平感の少ない制度に変えていくという努力をしていかないといけないでしょう。名古屋ウィメンズマラソンが終わった後、一体誰が笑って、誰が泣くことになるのか。非常に注目しています。