新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『けものフレンズ』と動物のボディプランについて

サーバル、カワウソ、トキ、ビーバー、プレーリードッグ、ライオン、ヘラジカ、そしてヒト。地球上の動物の色、形、生態、習性は、多様性に満ちている。もちろんこれは全くその通りなのだが、体を形作る「ボディプラン」は、実はすべての動物で共通なのである。ボディプランとは、生物の器官の配置、胚の発生の形態、を示す言葉である。

まず第一に、動物(特に脊椎動物)の受精卵が分化していく課程は、全動物とも驚くほどよく似ている。陥入と呼ばれる過程を経て口・肛門・消化器官の元となる部位が作られる。その後脊索が作られ、それを元にして脳や脊髄が発生していく。胚の中で脳がある側には、目や口や鼻が作られ、体には4本の手足がある(たとえクジラやヘビのような動物であっても、必ず手足の痕跡器官がある)。そもそも、遺伝情報としてDNAを使い、それを複製することで子孫を残したり、転写・翻訳してタンパク質を作ったりする、という基本的なボディプランは、脊椎動物に限らず地球上の全ての生命について共通しているのである。

何故、これほど多様な動物が存在するにも関わらず、ボディプランは全て共通なのだろうか。『入門! 進化生物学』(小原嘉明著、中公新書)によると、ボディプランとは、車のエンジン、車軸、その他の基本部品を内蔵した「車台」のようなものであり、容易に変更はできないのである。生物は時と場合に応じて、車の塗装や内装、ミラーやライトの種類を変更することはできるし、やろうと思えば車体を全部取っ払って軽トラに改造することもできる。しかし、車を動かすうえで必要不可欠な「車台」を丸ごと変えてしまうのは、やはり難しいのである。

生物は様々な環境に適応して多種多様に進化していった。しかし、耳の大きさや、手足の長さ、足の速さ、体の色や硬さ、頭の良さ、そういった違いは結局のところ些末なものでしかない。ヒトとそれ以外の動物との差は、せいぜい車体の色とかバックミラーの形が違う程度の差しかない。そのように考えると、サーバルとヒトは間違いなく、同じボディプランを共有する「フレンズ」なのだ。『けものフレンズ』が描く世界は決して不自然なものではない。