新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『スロウスタート』第7話―ムキになって勝負を仕掛けにいく栄依子と、それを余裕で受け流す榎並先生、その関係性が素晴らしい!

アニメ『スロウスタート』、第7話が最高だった。

なんというか、栄依子は自信に満ち溢れていて、花名とは対極に位置するキャラとして描かれている。栄依子は「自分には人を引き付ける魅力がある」ということをかなり明確に自覚していて、その状況をやはり自覚的に楽しんでいるようなフシがある。実際、栄依子はクラスメイトの懐にぐいぐい入り込んで、彼女たちを自分の虜にしてしまう。

f:id:kyuusyuuzinn:20180218223035p:plain

ところが榎並先生には、栄依子の作戦がまったく通用しない。栄依子がぐいぐい突っ込んでいっても暖簾に腕押し。まるで柳の枝のように、大人の余裕でひらりとかわしていく。それどころか、スカートの件で一度はメンタルゲージ劇下げされたりもしてる。栄依子にとってはそれがたまらなく悔しい。だからますます先生にちょっかいを出したいと思うようになる。隙あらば先生に突っかかっていく栄依子は、表情は余裕しゃくしゃくという感じではあるが、内心はかなりムキになってたと思う。

だから、栄依子の榎並先生への感情は単なる恋愛感情とは違う。常に自分の優位を保っていたいというプライド、大人をからかって遊びたいという子どもっぽい感情、先生の事を深く知りたいという好奇心、そういったものの延長線だと思う。

そして第7話でついに、栄依子に反撃のチャンスがおとずれる。べろべろに酔っぱらって栄依子を家に上げてしまった先生が、栄依子の前で初めて動揺した様子を見せる。しおらしくなった先生を見て笑う栄依子のなんと嬉しそうなことか。この時、栄依子は初めて先生に「勝った」と思ったであろう。ところが、この優位は長くは続かない。ナチュラルに顔を近づけてきた先生にドキドキしてしまい逃げるように部屋から立ち去る栄依子。彼女自身が言っているように、まさに「勝ち試合だと思ったら最終回で逆転食らった」状態。

f:id:kyuusyuuzinn:20180218223105p:plain

そもそも榎並先生は一連のやり取りを「勝負」だと考えてすらいない。ムキになって勝負を仕掛けに行ってるのは栄依子だけ。いつも落ち着いていて大人びた印象の栄依子だが、実は主要キャラの中で一番子どもっぽいのかもしれない。

だがしかし、自分の作ったネックレスを先生が付けているのを見て、栄依子の感情はより一段上のものへと変容する。まさにOP曲の歌詞にあるように、ポップコーンのように目覚めてしまう。この気持ちをどうしても誰かに伝えたくて、花名に秘密を打ち明ける。心の中で「いつか私も話せるかな、自分の秘密を」とつぶやく花名を見て、彼女の抱える不安や恐怖の大きさが再認識され、視聴者は突如現れた百合空間から解放され、本作の主題へと帰ってゆく。

f:id:kyuusyuuzinn:20180218222932p:plain

本当に素晴らしかった。日常系アニメでこれほどの神回は数年に一度あるかどうかっていうレベルだと思う。第3話も素晴らしかったが、第7話はそれをはるかに凌駕している。