新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『ささやくように恋を唄う』第1巻感想

かげぬい(艦これの陽炎と不知火の百合カップリング)は、この世で最も尊いものの一つである。そんなかげぬいというジャンルにおいて、私の知る限り最も尊い同人誌(例えば、『不知火は甘え方が分からない』)を書かれているのが、竹嶋えくという作家である。その竹嶋えくさんが百合姫で連載中の『ささやくように恋を唄う』単行本第1巻がようやく発売されたので、早速読んでみた。

ささやくように恋を唄う(1) (百合姫コミックス)

ささやくように恋を唄う(1) (百合姫コミックス)

もう………

最っっっ高………

高校3年生の朝凪依はギターが趣味だが、人前で演奏するのが苦手で、恋愛にも全く興味がなかった女の子。そんな彼女のもとに、天真爛漫な1年生・木野ひまりがやってきて、新入生歓迎会で先輩の演奏を聴いて「ひとめぼれ」したと興奮して語り出す。実はひまりの言う「ひとめぼれ」は「先輩のファンになった」という意味だったのだが、依は告白されたと勘違いしてしまう。その勘違いにはすぐに気付くも、依は完全にひまりに「ひとめぼれ」してしまい、そこから2人の激エモ高校生活がスタートする…。

これは上記の同人誌を見た時も思ったが、竹嶋えく作品はとにかく登場人物の表情が素晴らしい。もう全てのページが尊いとしか言いようがない。とにかくもう依とひまりが交流を深める中で見せる一つ一つの表情がもう尊いとしか言いようがないのである。特に、ひまりや他の友人に何か言われて、瞬間湯沸かし器のようにカアァァァァァァ!!!と真っ赤になる依先輩が最高である。

他の百合作品が甘さ控えめで場合によっては苦みすらある大人のスイーツだとしたら、『ささやくように恋を唄う』は口の中に強烈な甘さが広がる“かす巻”である。激甘の餡子を激甘のカステラで包み込み、さらに外側にザラメを振りかけるという、頭おかしいお菓子としか言いようのないものであるが、それはまるで麻薬のように脳に強烈な刺激をもたらすパワーがある。

しかしこれがまだ第1巻であるというのが凄い。百合というジャンルの醍醐味は、登場人物間の関係性を丁寧に丁寧に描いていくところにある。ゆえに、巻数を重ねるにつれて指数関数的にエモさが増していくという性質を持つ。『ささやくように恋を唄う』第2巻が今から待ち遠しい。もしかしたら、令和時代を代表する百合作品となるかもしれない。