新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『放課後ていぼう日誌』感想

ここ数年、女の子と大自然やアウトドア系趣味を組み合わせた漫画がブームである。そういった漫画が『のんのんびより』を皮切りに、『ヤマノススメ』『ろんぐらいだぁす!』『ゆるキャン△』と次々にアニメ化されているが、そこに今度『放課後ていぼう日誌』が加わることとなる。(TVアニメ「放課後ていぼう日誌」公式サイト

高校入学前に父親の実家のある海沿いの町*1に引っ越してきた鶴木陽渚は、なりゆきで堤防部に入部させられ、そこで旧友の帆高夏海と再会。最初は魚も怖くて触れないレベルだった陽渚だが、部での様々な経験を通じて次第に釣りの魅力にハマっていく。

作品の概要だけ見れば『ヤマノススメ』とそっくりである。主人公の名前が陽渚(ひな)なのでややこしいのだが、陽渚が雪村あおいに相当するキャラであり、夏海は倉上ひなたに相当する。なので、広くとらえれば『ヤマノススメ』や『ゆるキャン△』のフォロワー的な作品であるのだが、それでも、『放課後ていぼう日誌』第1巻を読んだ途端に何故か『ヤマノススメ』『ゆるキャン△』などとはまた別の魅力を感じたのである。

では、『放課後ていぼう日誌』に特有の魅力とは何なのか。それは、登場人物が見せる良い意味での「芋っぽさ」にあるのだと思う。よくよく考えてみれば、『のんのんびより』とか『ゆるキャン△』とかは、キャラクターが皆オシャレである。服装とかも田舎っぽくなくて洗練されている感じがする。

一方、『放課後ていぼう日誌』で釣りをする時は基本的に制服である。もしくは、体育で使う芋ジャージである。だが、それが良いのである! そうそう、こういうのでいいんだよ、こういうので。

化粧っ気のない女の子が、子どものように夢中で釣りを楽しむ姿。それを通して描かれる海の美しさ、釣りの楽しさ、命の尊さ。これは間違いなくアニメ映えする作品だろう。

個人的に一番好きな回は、第3巻で陽渚が夏海の家を訪れる回。学校では見ることのできないメガネ姿の夏海。それを陽渚に見られて顔を赤くしているのがもう普段とのギャップで最高である。夏海というキャラクターを記号的で分かりやすい快活なキャラとして描くのではなく、繊細な心の機微をしっかり描いているのが本当に素晴らしい。

*1:作中に出てくる「芦方町」という地名からも分かる通り、この町のモデルは明らかに熊本県の芦北町である。