新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

アニメ『映像研には手を出すな!』第1話感想

『映像研には手を出すな!』第1話観た。素晴らしい以外の感想が出てこない。

何よりも素晴しいのは、ここ数年で最高と言っても過言じゃない背景描写だろう。

『映像研には手を出すな!』の建物や背景が素晴らしいと思えるのは、そこに「高低差」があるからである。『時をかける少女』『耳をすませば』『ラピュタ』『メイドインアビス』、街並みが美しいアニメには必ず高低差がある。縦方向の移動には人を童心に帰らせる不思議な魅力がある。

そして後半、コインランドリーの2階で、浅草と水崎がスケッチブックを日の光にかざしながら頭の中にある世界観を膨らましていく。

初めて共通の趣味を語り合える仲間に出会えた喜び。

時間を忘れて無我夢中で絵を描き込む2人の細やかな所作。

まるで小学校の図画工作の時間のような、自由で、ワクワク感に満ち溢れた、夢のような時間。

この夕方のひととき、2人は束の間子どもに戻り、誰にも縛られない自由な発想で壮大な世界を創り上げていく。

私はこの第1話を見ながら、DNAの二重らせん構造を発見したジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックの逸話を思い出していた。

彼らが20世紀の歴史上最も偉大な発見の一つを成し遂げた時、そこに高度な数学も、高価な実験器具も必要なかった。彼らが使ったのは、何の変哲もない分子模型。

DNAを構成する原子(水素・炭素・酸素・窒素・リン)を表す玉と、それらを繋ぎ合わせる棒。それらをああでもない、こうでもないと組み換える作業を延々と繰り返して、最適な構造を探していく…。それはまるで、レゴブロックで遊ぶ子どものようだった。

何日もかけて作り上げた分子模型をドヤ顔で他の研究者に見せて、けちょんけちょんに論破されて、あなた達のやってる事は子どもの遊びと同じだとバカにされて、それでも諦めずに模型と向き合った先に2人は栄光を手にすることとなる。*1

人は童心に返った時、初めて、世界をアッと驚かせるような創造的で画期的な仕事ができるのかもしれない。

*1:ちなみに、ここでワトソンとクリックの研究方法を批判していたのが、あの有名なロザリンド・フランクリンである。彼女もまた、DNAの構造を明らかにする上で決定的な役割を果たした人物だが、十分な評価を受ける前に若くして亡くなった。