新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『劇場版 メイドインアビス 深き魂の黎明』感想

昨日、劇場版『ハイスクール・フリート』を観た後に続けて『メイドインアビス 深き魂の黎明』を観たのだが、

もうね…本当にね…

きついっす…。

となりのトトロ』は『火垂るの墓』と同時上映だったと言われているが、それに匹敵する落差である。本編が始まる前に『マルルクちゃんの日常』という短編があるのだが、スタッフの名前を見ると演出と絵コンテが『ゆゆ式』のかおり監督である。本編の方もかおり監督が作ってくれてたらどれだけ良かったことか!

まず何よりも強烈なのは、地上波では放送できないんじゃないかと思えるようなグロテスクな描写の数々。冒頭のクオンガタリは序の口でしかない。リコの歯は折れるわ、レグの腕はもがれるわ、そして、プルシュカは…。さらにグロさを際立たせているのは音の使い方である。明らかに水とは異なる、ドロドロしたものが出す音は、観客に強烈な嫌悪感を抱かせる。

そして、人としての倫理観が完全に欠落したボンドルドという存在。彼に良心の呵責などという言葉は一切存在しない。自分のしていることの意味をナナチやレグに説明することすらしない。ただ、そこにあるのは純粋な好奇心。そのためには自分の娘ですらも利用する。この胸糞の悪さ。

だが、この狂気は本当にボンドルドだけのものなのだろうか。19世紀から20世紀前半にかけて活躍した科学者は、短命である人が多い。十分な装備もないまま危険な試薬や放射線を浴び続けたからである。冷戦期、ソ連は2000発以上のロケットを打ち上げ、アメリカも(アポロ計画だけで)280億ドルもの大金を使ったと言われている。今考えてみればそれはもう狂気の沙汰としか言いようがないが、そのおかげで今の便利な生活があるのだ。新しいものを創り上げようとする時、まだ見ぬ世界を知ろうとする時、人は狂気に取りつかれるのかもしれない。そして、どんな犠牲を払ってでも好奇心を満たそうとするその性質こそが、我々人を人たらしめたものなのかもしれない。

そんな重たい内容の中でも、TV版同様にレグきゅんの可愛さはもう最高という他ないレベル。ことあるごとにモフモフのナナチの腕を触ってくるレグきゅん、リコがナナチに抱きついてる横で自分も触りたいみたいな顔してるレグきゅん、ナナチを抱き寄せて匂いを嗅ぐレグきゅん、ナナチに抱きつきながら勃起してるレグきゅん…。もうね、本当にね…お前は一体何がしたいんだ?

かくして観客は皆、最高に可愛いレグきゅんの姿に癒されつつ、「カートリッジ」という言葉を聞くたびにトラウマが蘇ってくる身体にされて、映画館をあとにすることとなる。