新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『BNA ビー・エヌ・エー』オープニング映像の生物学的モチーフ

アニメのオープニングは監督や制作会社の特色がよく現れるポイントだが、『BNA』のオープニングも実に中島かずき、TRIGGERらしいモチーフで満ちている。

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イントロの最初に出てくるDNA二重らせん構造。

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アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)から構成されるDNAの塩基配列

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遺伝系統樹

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円形の遺伝系統樹

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四角いコマに描かれる古代の生物。

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絵が引いていくとタイトルロゴに変化。黒いフォントが格子状の線で分けられ、DNAマイクロアレイの画像のようにも見える。

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曲の間でも背景に系統樹

これらの描写が作中でどのような意味を持つのかはまだ分からないが、OPを見て気付いたことをとりあえずご報告まで。

これはまさに、TRIGGERの伝統を体現したかのようなOP。過去のTRIGGER作品を見てみると、例えば『キルラキル』に出てきた生命繊維とは、生物は遺伝子の乗り物であるという利己的遺伝子の概念、言い換えるならば、生物は遺伝子が身に纏う服のようなものにすぎない、という考え方を象徴している。「なんだかよく分からないもの」と共存する、すなわち世界が多様性に満ちた時、人類は初めて遺伝子の支配から自由になれる。

そもそも『キルラキル』のスタッフが作った『天元突破グランラガン』からして、作中のドリルや螺旋はまさにDNAの二重らせん構造、そして生物の絶え間ない進化のメタファーに他ならない。

そして、TRIGGERとA-1 Picturesが共同制作した『ダーリン・イン・ザ・フランキス』。制服に付いているXとYの形をした模様、ステイメン(おしべ)やピスティル(めしべ)といった作中用語、そして、タイトルロゴの赤色と青色のXが混じり合っている図形。これらは全て、性染色体、生殖、相同組み換えのメタファーである。

生殖と遺伝子の相同組み換えこそが、遺伝的多様性の源泉である。生物が多様性を守り生き残るために、何億年も前から行われてきた営み。一見不合理で無駄なように思えるものこそが、実は我々の生存にとって決定的に重要なシステムなのだ。

というわけで、『BNA』のOPに現れる生物学的モチーフも今後必ず意味を持ってくるであろう。そもそもBNAという名称自体がDNA(デオキシリボ核酸)と関連しているのだが、実はBNAというものは実際にある。

核酸化学の分野では、DNAと性質(相補鎖とハイブリダイゼーションするという性質)は同じだけれども分子構造が異なるものが作られている。詳しいことは「人工核酸」とか「核酸アナログ」という言葉で検索してもらえばいい。*1人工核酸の構造を知りたい方は下のwikipediaに載っている。

いろんな人工核酸があるがその中にBNA(Bridged Nucleic Acid)というものがある。しかし、あまりにもニッチな内容なので、これがアニメと直接関係しているとは考えにくい。

*1:何故、こういうものが研究されているかというと、一番の理由は核酸創薬との関連である。DNAやRNAを薬として体内に入れようと考えた場合、天然の核酸ではすぐに酵素によって分解されてしまって薬効が無くなるという問題点があるため、酵素によって分解されにくい構造を持った人工核酸が盛んに考案されているのだ。