新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『よふかしのうた』感想

14歳の少年・夜守コウはとある出来事がきっかけで不眠症になり、ある日、夜の町に一人飛び出した。そこで出会った怪しげな吸血鬼・七草ナズナが、コウを夜の世界へと誘いこむ……。

前作『だがしかし』の照りつける太陽のような世界とは一変、暗闇と静寂に包まれた真夜中が舞台。この夜の描写が最高に美しい。不気味に鳴り響くドアの音、静まり返った団地の風景、暗闇の中に煌々と灯る街灯、誰もいない公園。そこで去来する様々な感情。夜の町をわけもなく彷徨い歩く背徳感、昼間のしがらみから解き放たれた開放感、まるで別世界に来たような高揚感。それらが全て、ナズナとコウの関係性、セックスのメタファーとしての吸血という行為に集約されていく。

とにかくこの2人の関係性がエモさの塊なのである。まず夜守コウ君なのだが、ジャージにハーフパンツというラフな格好、華奢な手足、思春期真っ盛りの中二病的自意識、年相応の初々しさ、そんな子がナズナに血を吸われる時に見せる首筋から鎖骨のライン。萌えに性別は関係ない。もう読者はコウ君を見るたびにキュンキュンしっぱなしである。

そして、コウのパートナーである七草ナズナは、『だがしかし』のほたるさんとサヤ師を足して2で割ったようなキャラクター。コウを夜の世界へと誘惑する悪い姉のようでもあり、それでいて初心な一面ものぞかせる。圧巻なのはその衣装。全身を覆う黒いマントの下は、胸部以外ほとんど露出した上半身と、丈の短いショートパンツ、まさに、作者のフェティシズムが思う存分に詰まったキャラクターに仕上がっている。

そんな2人が繰り広げる真夜中のデートは、まさに健全そのもの。いきがって悪い遊びをしているようで実際は健康的。大人の世界に足を踏み入れているようで実は初心で臆病。そんな不思議な関係性。

是非とも眠れない真夜中に読んでほしい作品。