新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『スーパーカブ』と地理学

国土地理院のサイトで日野春駅周辺を見てみる(標高350-600m付近で色が変わるように調整済)。

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小熊ちゃんの家は日野春駅(図右上)のすぐ近くの公営住宅という設定で、そこから2キロほど離れたところにある高校(図左下。作中では高校となってるが実際のその場所には中学校がある。)に通っている。

日野春駅の標高が約600mで、そこから蛇行する道を下って図中央にある橋のところで標高約500mとなる。高低差約100メートル! 実際に現地にも行ってみて分かったが、女子高生が毎日自転車で上り下りできるような坂ではない。というか、学校だけに限らず、コメリやスーパーマーケットなども全て図左下の低地の方にあるので、原付か車が無ければ相当不便な生活を強いられる場所である。スーパーカブを手に入れて見える景色が一変するというのは、何ら大げさな表現でなく、リアリティのある感覚であるということが分かる。

では何故こんな高低差があるのかというと、それは川によって山地が削られたからである。少し範囲を広げた地図を見てみよう。

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釜無川と塩川が山地を削り、山地が舌状に突き出した形状になっている。その舌の付け根あたりに日野春駅があるというわけである。釜無川と塩川は下流で合流し甲府盆地へと至る。そのさらに下流笛吹川などと合流し富士川となる。富士川は身延へと繋がる。『スーパーカブ』と『ゆるキャン△』の舞台は川で繋がっていたのである。

作中で出てきたコメリとかがあるのは国道20号沿いである。国道20号とは要するに昔の甲州街道である。人口が多いのは当然この甲州街道沿いなわけだが、ではどうして日野春駅(要するに中央本線)はそこから離れた山地を通るのだろう。

それは、鉄道が坂道に弱いということが関係していると思われる。中央本線は図上側へと延び、諏訪・松本へ向けてどんどん登って行かなければならない。そんな時に、川沿いの低地を悠長に走っていたら、いずれ山地にぶつかって先に進めなくなるのだ。だから、釜無川と塩川に挟まれた山地を使って徐々に徐々に高度を稼ぎながら進むしかないのである。