- 作者: 中田力
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2002/11/15
- メディア: 新書
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凄い本を発見した。光文社新書の『天才は冬に生まれる』という本だ。この本によると、天才と呼ばれている人は冬に生まれることが多いらしい。著者は、その理由を「脳の渦理論」という理論で説明できるかもしれないと述べている。要するに、胎児の脳の成長過程には体内の熱対流が大きく関係しているが、冬生まれの人はより良い熱対流の環境に置かれているのかもしれない、ということである。
「脳の渦理論」が本当に正しいのかどうか私には分からないし、著者もこの理論については深く言及していない。本編の大部分は、冬生まれの天才たちのエピソードをつづったエッセーになっている。そのエッセーで挙げられている天才は以下の9人だ(カッコ内は誕生日を表す)。
コペルニクス(2/19)、ケプラー(12/27)、ガリレオ(2/15)、
ニュートン(12/25)、アインシュタイン(3/14)、ハイゼンベルク(12/5)、
ラマヌジャン(12/22)、ノイマン(12/28)、ホーキング(1/8)
おお、確かにみんな誰もが知ってる天才だ。本書では言及されてないが、エジソン(2/11)、ベートーヴェン(12/16)、湯川秀樹(1/23)なども冬生まれだ。これだけ冬生まれの天才がいるとなると、確かに天才は冬に生まれることが多いのかなあと思ってしまう。アインシュタイン(3/14)を冬生まれと呼ぶのは少し無理があると思うけど。
それに、挙げられている天才が物理学者と数学者に偏ってるのも気になる。例えば、化学の基礎を築いたラヴォアジエ(8/26)、アヴォガドロ(8/9)、ドルトン(9/6)などは天才と呼ぶにふさわしいと思うが、何故挙げられてないのだろう。化学者には興味がなかったのか? それとも、彼らが冬に生まれなかったからだろうか?
医学や生物学の分野から一人も挙げられてないのも気になる。進化論を提唱したダーウィン(2/12)、細菌学の権威であるパスツール(12/27)やコッホ(12/11)は天才じゃないということか。メンデル(7/20)やリンネ(5/23)が言及されてないのは、彼らが冬に生まれなかったからだろうか?
芸術の分野でも天才と呼ばれる人物はたくさんいる。例えば、ルネサンス期を代表する芸術家であるダ・ヴィンチ(4/15)、ミケランジェロ(3/6)、ラファエロ(4/6)などは、真っ先に言及しても良さそうなものだが。そうしなかったのは、彼らが科学者じゃないからか。それとも、彼らが冬に生まれなかったからだろうか?
アインシュタイン(3/14)やハイゼンベルク(12/5)を取り上げるなら、同じく量子力学の基礎を築いたシュレーディンガー(8/12)、プランク(4/23)、ボーア(10/7)、ディラック(8/8)なども取り上げるべきだと思うが、そうしなかったのは何故だろう。彼らが冬に生まれなかったからだろうか?
本書の冒頭で「純粋数学の大御所として名高いのは、ガウスとオイラーの二人である。しかし、天才性となると、数学者がこぞってその名を挙げるのは彼らではなく、ラマヌジャンである」*1、とわざわざ断ってまでガウス(4/30)とオイラー(4/15)を外しにかかったのは、彼らが冬に生まれなかったからだろうか?
ノイマン(12/28)がいるのにチューリング(6/23)がいないのは何故か。古典力学の基礎を築いたニュートン(12/25)が入ってるのに、電磁気学の基礎を築いたファラデー(9/22)やマクスウェル(6/13)が入ってないのは何故か。カント(4/22)やヘーゲル(8/27)のような哲学者が言及されてないのは何故か。
彼らが冬に生まれなかったからだろうか?
*1:中田力、『天才は冬に生まれる』、11P