新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

2018-01-01から1年間の記事一覧

『かぐや様は告らせたい』各話のパターン分類について

図1 『かぐや様』各話のパターン分類とその表記法 『かぐや様は告らせたい』第1巻から第12巻までに登場する話のパターンを14種類に分類し、それぞれに記号と名称を設定した。参考までに、各パターンにおける代表的な話を事例として表記した。 図2 『かぐや…

『かぐや様は告らせたい』第12巻についての3つの論点

かぐや様は告らせたい?天才たちの恋愛頭脳戦? 12 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)作者: 赤坂アカ出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/12/19メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る かぐや様、新たな次元へ 天才数学者ジョン・ナッシュがプリンス…

話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

今年も、最も印象に残ったTVアニメを選出しました。選考方法は、「話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選: 新米小僧の見習日記」に挙げられているように、 ・2018年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。 ・1作品につき上限1話…

『水平線の、文月』は全人類必読の聖典である

艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 水平線の、文月 (1) (角川コミックス・エース)作者: ななてる,「艦これ」運営鎮守府出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/12/10メディア: コミックこの商品を含むブログを見る『水平線の、文月』第1巻読んだ。かわいいいいいい…

矛盾と共に生きる―『いでおろーぐ!』ついに完結

いでおろーぐ!7 (電撃文庫)作者: 椎田十三,憂姫はぐれ出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/11/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るついに『いでおろーぐ!』完結である。最後には、強者vs弱者、リア充vs非リア充、といった単純な図式では収…

2018年TVアニメ、性格クズなヒロイン列伝

高橋めぐみ(宇宙よりも遠い場所) 幼馴染のキマリが報瀬といっしょに南極に行くと言い出したのが気に食わず、彼女らの悪い噂を流したりする。出発当日の朝には、最後の悪あがきで「絶交しよう」とか言い出す。一連のめぐっちゃんの行動原理は、仲のいい幼馴…

『ヤマノススメ サードシーズン』―ひなたと、あおいと、のぞみぞ概念

ここのところ『ヤマノススメ サードシーズン』が凄いことになっている。ぶっちゃげ、第6話までは特筆すべき内容はあまりなかった。ロックハート城に行くとか、山の上でコーヒー飲むとか、正直言ってスゲーどうでもいい話で、2期からの惰性で見ているような感…

体操協会のパワハラ問題について

【独自】速見コーチの「暴力映像」 宮川選手を平手打ち(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース「何も事情を知らない部外者が後出しジャンケンで発言するな」という批判は甘んじて受ける。それでも、この映像が出てきて本当に、本当に良かった。心の底から…

初めてできた同い年の友達、そして「努力」と「労働」と―『劇場版 のんのんびより ばけーしょん』感想(ネタバレ注意)

生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。 これは、何も、食物とか衣服とかという品物ばかりのことではない。学問の世界だって、芸術の世界だって…

『ヤマノススメ サードシーズン』(第7話)半端ないって!

「倉上ひなた半端ないってもぉー!アイツ半端ないって!いつもは明るい性格なのにあおいが居ないとメッチャ寂しそうな顔するもん…普段はあおいの方がむしろ、ひなたにべったりっていうイメージあるけど、実は中学の時は友達いなかったから独りに慣れとるし、…

最近読んだ本まとめ(4)―『眠れない一族』『破壊する創造者』

眠れない一族 食人の痕跡と殺人タンパクの謎 眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎作者: ダニエル T.マックス,柴田裕之出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2007/12/12メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 1,338回この商品を含むブログ (61件) を…

甲子園脳の恐怖

連日の猛暑の中、甲子園球場で高校野球をやるのは危険なのではないか、という声が上がっている。そのような声を受けて、横浜DeNAベイスターズ初代球団社長で、スポーツ庁の参与でもある池田純氏がインタビューで次のように言っている。 甲子園は良くも悪くも…

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』総評

第18話、ついに自分の気持ちを打ち明けたイクノに、イチゴが優しく語り掛ける。 私たち、みんなめんどくさいんだよ。でもさ、それで良いかなって最近思い始めてきてるんだ。もしかしたら、こういうのの積み重ねが、生きてるっていうことなんじゃないかなって…

『がっこうぐらし!』第10巻は、嘘と欺瞞に満ちた日本の就職活動のメタファーである

がっこうぐらし! (10) (まんがタイムKR フォワードコミックス)作者: 原作:海法紀光(ニトロプラス),作画:千葉サドル出版社/メーカー: 芳文社発売日: 2018/06/12メディア: コミックこの商品を含むブログ (1件) を見るゾンビがうごめく高校での生活は、現実の学…

のぞみぞ概念

生まれて初めて同じ映画を2度映画館で見た。原作を読むだけでは全然理解できなかったのに、映画を観て、ツイッターやブログで多くの人の感想を見て、再び映画を観ると、自分の中でようやく「のぞみぞ概念」が確固としてきました。希美とみぞれが2年生の頃の…

ブラタモリ用語辞典

(2018年5月27日 初版投稿) ※用語が増えたらその都度改定していく予定。 岩石 安山岩【あんざんがん】 マグマが地上で急激に冷えて固まってできる岩石の一種。こんぴらさん、萩の回で登場。硬く風化しにくいという特徴があり、建材としてよく利用される。花…

『天元突破グレンラガン』『キルラキル』から『ダーリン・イン・ザ・フランキス』へ

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』第17話 自分たちが生きた証を未来に残すために子どもを作りたいと言ったココロに、9'αが「君…気持ち悪いよ」と吐き捨てる。 まったく下らない。生殖機能なんてものは人間が進化の過程で捨ててきたものだよ? それを否定し…

アニメ版『ゴールデンカムイ』第2話を見て感じた事

捕まった白石が「そのアイヌはお前さんの飼い犬か?」と言った後に、杉元が白石のあごを掴むシーン。杉元の顔にまったく迫力が無くて一気に残念度が増した。あそこは、最大限の怒りをこめた修羅の形相でなければならないのに…。ギャグで白石が調子乗って怒ら…

『かぐや様は告らせたい』―世界に絶望した人が世界は「いい奴ばかりじゃないけど悪い奴ばかりでもない」と気づくまでの物語

かぐや様は告らせたい?天才たちの恋愛頭脳戦? 9 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)作者: 赤坂アカ出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/04/19メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る 石上優の物語 『かぐや様は告らせたい』単行本第9巻で、こ…

『リズと青い鳥』は傘木希美の嫉妬と敗北と諦めの物語である

映画冒頭、学校の階段や廊下を一緒に歩く希美とみぞれ。2人は決して並ぶことはなく、常に希美が前を行く。朝の音楽室、みぞれが希美に寄りかかろうとする瞬間に、希美は席を離れて行ってしまう。みぞれが一人で希美の方を見ている時も、希美の周りにはいつも…

最近読んだ本まとめ(3)―『がん消滅の罠 完全寛解の謎』『人間の測りまちがい 差別の科学史』『真実の一〇メートル手前』

※本の内容に関するネタバレがありますのでご注意ください。 がん消滅の罠 完全寛解の謎 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)作者: 岩木一麻出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2018/01/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件)…

『宇宙よりも遠い場所』総評―アウトロー達の「ざまぁみろ」を肯定的に描く爽快感

伝統的な立身出世モデルの崩壊 今思えばこの作品は終始、登場人物が、誰の期待を背負う事もなく、他でもない自分達の夢や願望や目的のためだけにチャレンジしていくという物語だった。南極に天文台を作りたい、南極でしかできない研究がしたい、母親が降り立…

『少女終末旅行』最終巻―孤独と絶望が教えてくれた私達のかけがえのなさ

ついに『少女終末旅行』が完結した。なぜ世界は滅んでしまったのか…。なぜこの世界には私達しかいないのか…。そんな疑問を抱えたまま、ただひたすら終末世界で旅を続けるチトとユーリを見て、私はどうしても、彼女たちを現実の地球に生きる我々人間と重ね合…

『ゆるキャン△』総評―「一人で過ごす尊い時間」と「みんなと過ごす尊い時間」

『ゆるキャン△』、本当に、良かった。圧倒的な今期No.1のアニメだった。『ゆるキャン△』には2つの時間が流れている。「一人で過ごす尊い時間」と「みんなと過ごす尊い時間」だ。そして、この2つを相反するものとして描くのではなく、見事に両立させ、時には…

『からかい上手の高木さん』の素晴らしさ―微妙なラインを突く表情、ギャップ萌えに頼らない構造、可愛い男性主人公

この作品の素晴らしいところは次の3点に集約される。第一に、西片をからかう時の高木さんの表情や声が、過度なデフォルメ化やカリカチュアライズを使うことなく、一定の抑制のきいた形で表現されている点である。艦これに敷波という子がいる。その子について…

起こり得たかもしれない愛の形―『さよならの朝に約束の花をかざろう』感想

人間のグループ間には遺伝的差異が注目に値するほど無いということ (中略) は、ア・プリオリな、あるいは必然的真理ではなく、進化史における偶然の事実である。世界はもっと違った形で秩序づけられたかもしれないのである。例えば我々の祖先であるアウス…

『スロウスタート』第7話―ムキになって勝負を仕掛けにいく栄依子と、それを余裕で受け流す榎並先生、その関係性が素晴らしい!

アニメ『スロウスタート』、第7話が最高だった。なんというか、栄依子は自信に満ち溢れていて、花名とは対極に位置するキャラとして描かれている。栄依子は「自分には人を引き付ける魅力がある」ということをかなり明確に自覚していて、その状況をやはり自覚…

話にならない下町ボブスレー側の言い訳

おもに東京都大田区にある町工場が立ち上げた下町ボブスレーネットワークプロジェクトの作製したソリが、五輪ジャマイカ代表に採用されていたのに、急遽ラトビア製の別のソリを利用することになり、下町ボブスレー側が契約違反だとしてジャマイカに違約金の…

2017年下半期アニメ総評

本当に今更かよって感じですが、2017年下半期に見たアニメの総評を書きました。『プリンセス・プリンシパル』『サクラクエスト』『少女終末旅行』については、以下の記事を参照ください。 プリンセス・プリンシパル 『プリンセス・プリンシパル』とイギリス…

『少女終末旅行』最終話―絶望的だが最高のハッピーエンド

アニメ化されたエピソードより先の部分がホームページ上で見れるので、『少女終末旅行』アニメ版だけ見て満足してる人は必ず原作の方も読みましょう。少女終末旅行 | くらげバンチその原作が先日ついに最終回をむかえたわけですが、何かこう、心にとてつも…