新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

2011-01-01から1年間の記事一覧

『夕焼けロケットペンシル』と「働く」ということ

たまごまごさんが書いた『夕焼けロケットペンシル』の記事(少女が頑張っても頑張ってもダメな現実もあるけど、頑張るんだ「夕焼けロケットペンシル」)を読んで、私も全巻読んでみたんだけど、これがまあ、想像以上に凄いことになってた。要するに何が言い…

『ココロコネクト』の思想2―「世界を変える」ということ、「仲間を信頼する」ということ

はじめに 前回の記事『ココロコネクト』の思想1―「悩み」を解決するためのヒントでは、『ココロコネクト』の第1巻から第3巻までの内容について考察した。今回は、それに続いて第4巻、短編集である第5巻、そして先日発売されたばかりの第6巻について考察して…

『ココロコネクト』の思想1―「悩み」を解決するためのヒント

はじめに 『ココロコネクト』の舞台は私立山星高校の文化研究部。そのメンバーである八重樫太一・永瀬伊織・稲葉姫子・桐山唯・青木義文は、〈ふうせんかずら〉という謎の存在によって、不思議な現象を体験させられる。第1巻では『人格入れ替わり』、第2巻で…

『侵略!?イカ娘』エンディングテーマから見たイカ娘の心境

代わる代わる鍵を開けてく 何も知らない私の心の イカ娘は地上の事をほとんど知らないまま、たった1人でやってきた。唯一、人類に対して抱いているのは、海を汚すひどい奴らというイメージ。だからイカ娘も、最初は心に鍵をかけて人間を受け入れようとしなか…

「負の感情」と向き合うということ―『喰霊-零-』私論

『とらドラ』『俺妹』『あの花』が感情を公にすることに重きを置いたのに対して、『喰霊』は逆に感情に蓋をすることの方に重きを置いている。妬み・僻み・憎しみといった負の感情は誰にでもあるものであって、それをいちいち問題にしてたら大変なことになる…

キャラクター間の「断絶」とその対処法について―『あの花』『ゆるゆり』などを例に考える

日常の中にある断絶(想いの伝わらなさ)*1に対して、それを乗り越えようとするのが『あの花』『俺妹』『まどマギ』『とらドラ!』といった作品。一方、『けいおん!』『Aチャンネル』『日常』では、断絶に対して「いや、そんなもの、君が勝手に思い込んでるだ…

『ゆるゆり』と『けいおん!』の比較―「律・澪」「京子・結衣」の共通点とは

『ゆるゆり』の京子と結衣の関係って、『けいおん!』の律と澪の関係に似ているのかもしれない。まず、結衣と澪について。両者とも外見は黒髪で高身長、性格は真面目。相方(京子・律)に対しては、ツッコミ役で言葉遣いが少し乱暴なところも似ている。一方で…

ミシェル・フーコー『監獄の誕生』から『ストライクウィッチーズ』を読み解く

監獄の誕生―監視と処罰作者: ミシェル・フーコー,Michel Foucault,田村俶出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1977/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 119回この商品を含むブログ (214件) を見るミシェル・フーコーは『監獄の誕生』の中で、中世の身体刑(…

『うさぎドロップ』を見ていて気になったこと―やっぱり日本の社会制度は間違ってる?

『うさぎドロップ』は確かに感動的で良い作品だし、大吉は素直に「親の鑑」みたいな人だと思う。でも、大吉みたいな献身を世間一般に期待してはいけないんだろうとも思う。別に、親が子どもを育てるために自分の夢を捨てることは悪くない。アニメ『CLANNAD』…

『うえきの法則』とカント哲学について―何が道徳的に「正しい」のか

カントによれば、ある行動が道徳的かどうかは、その行動がもたらす結果ではなく、その行動を起こす意図で決まるという。大事なのは動機であり、その動機は決まった種類のものでなければならない。重要なのは、何らかの不純な動機のためではなく、そうするこ…

『侵略!イカ娘』私論―アニメ第2期で描かれる原作エピソードを予想してみた

第1話サブタイトルは? いよいよ『侵略!イカ娘』のアニメ第2期が始まる。その第1話のサブタイトルはもう判明している。Aパートから順に、「侵略しなイカ?」「恋敵じゃなイカ?」「クラゲじゃなイカ?」である。Aパートはおそらく、イカ娘の基本設定や常連メン…

これからの『シャーマンキング』の話をしよう(1)

はじめに 9月23日の「ニュートリノは光よりも速い?」に続いて、24日にもビッグニュースが飛び込んできた。『シャマンキング』復活!! 来春のビッグプロジェクトに向けで読切シリーズがジャンプXで始動!(やらおん!)ここで言う「来春のビッグプロジェク…

『バカとテストと召喚獣』とアファーマティブ・アクション―学力を取るか、多様性を取るか

掲示板まとめサイトを見ていたら、『バカとテストと召喚獣』について次のような指摘があった。 結局召喚獣って何の意味があるのかさっぱりわからん テストの点数で強さが決まるならテストの結果が全てで召喚獣いらないじゃん (ろぼ速VIP なんで失敗したか分…

(イカ語訳)人類侵略宣言―『侵略!イカ娘』アニメ第2期によせて

アニメ『侵略!イカ娘』第1期が終わってから今日までの間に、海と人類を取り巻く環境は大きく変わったでゲソ。これまで数えられないほどのゴミや廃液を海に捨ててきた人類が、とうとう放射性物質まで海に垂れ流すようになったのでゲソ。想定外の大災害だった…

『テルミー』が伝えようとしている事は―作中に垣間見える反石原・反表現規制のメッセージ

はじめに テルミー きみがやろうとしている事は (集英社スーパーダッシュ文庫)作者: 滝川廉治,七草出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/07/23メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 133回この商品を含むブログ (52件) を見る先日『テルミー』第1巻を読んで強い…

『僕の妹は漢字が読める』と日本語の変遷について―「伝えること」「伝わること」の素晴らしさ

僕の妹は漢字が読める (HJ文庫)作者: かじいたかし,皆村春樹出版社/メーカー: ホビージャパン発売日: 2011/06/30メディア: 文庫購入: 16人 クリック: 1,324回この商品を含むブログ (78件) を見る最近『僕の妹は漢字が読める』といふライトノベルが話題になつ…

『SPA!』の『魔法少女まどか☆マギカ』特集について(2)―八代嘉美・森川嘉一郎・磯崎哲也の評論を読んで

はじめに 前回の記事に引き続き、『SPA!』7月19日号に掲載された「大人気アニメ『まどか☆マギカ』の正体」という特集記事について述べていこうと思う。今回は八代嘉美・森川嘉一郎・磯崎哲也(敬称略)という3人の『まどマギ』評について、私なりに解釈して…

『SPA!』の『魔法少女まどか☆マギカ』特集について(1)―宮台真司・宮崎哲弥の評論を読んで

はじめに 『SPA!』の7月19日号に掲載されている「大人気アニメ『まどか☆マギカ』の正体」という特集記事が話題になっている。この中では、宮台真司・宮崎哲弥・八代嘉美・森川嘉一郎・磯崎哲也(敬称略)という、思想も職歴も全く異なる5人の論者が『まどマ…

『魔法少女まどか☆マギカ』と原発事故―「キュゥべえ」と「原子力ムラ」の共通点

本来なら3月11日深夜放送予定だった10話「もう誰にも頼らない」の物語は、まるで原発事故後の日本を予感していたような内容だった。 キュゥべえ・・・日本政府、保安院や原子力安全委員会など官僚・学術組織、電力会社、マスコミ まどか・・・原発事故後の私…

『日常』と原発事故―「原子力ムラというシステム」をひっぱたきたい

シュクダイ…ワスレタ… ノゾムハ…カントウ…ダイシンサイ… これは漫画『日常』の登場人物・ゆっこが宿題を忘れた時の絶望感から口にした言葉である。この時勢ではさすがに不謹慎だと思ったのか、アニメでは台詞が「宇宙人の大侵略」に変えられていたらしい。し…

登場人物を分類するための一般的手法の提唱―『けいおん!』と『Aチャンネル』を例に

『けいおん!』の登場人物の分類 かいん氏が書いた『2つの萌え概念と「けいおん!」の批評性』という記事は、はてなダイアリー界隈で一時期話題になった「独律説」*1が初めて言及されている記事である。この説自体は上記記事を読んでもらうこととして、ここで…

『とある魔術の禁書目録』と原発事故―上条当麻の言葉から脱原発への道筋を探る

上条さんは原発というシステムを絶対に認めないと思う。なぜならそれは、周辺住民や作業員の命や生活を犠牲にして、大量の放射性廃棄物という未来へのツケを残して、現代の我々が豊かな生活を送れるようにするという、誰かの犠牲を前提としたシステムだから…

桜庭一樹私論1―『GOSICK』と「大人になる」ということ

桜庭一樹と「大人になる」ということ 桜庭一樹の小説に出てくる少女たちは、複雑な家庭環境(親の再婚や家庭内暴力など)のもとに生まれ、何も分かっていないのに知ったような口を利く教師や警察官をずっと見てきた。だからこそ、彼女たちには、大人達の醜い…

『とある魔術の禁書目録』―科学、魔術、そして「再現性」について

『禁書』と再現性 もしあなたが研究者で、論文誌に自分の研究成果を投稿しようとする場合、どういった事が重要になるだろうか。まず第一に、その論文には「新規性」がなければならない。どんなに優れた研究成果であっても、それが一番でなければ意味がない。…

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』―「想いの伝わらなさ」を克服した物語

『俺妹』におけるテーマの転換 私は以前書いた記事の中で、『俺妹』は「普通と異常の境界」で起こる化学反応を描いた作品だと述べた。すなわち、「オタク文化」についてほとんど何も知らない「普通」の高校生である京介の視点を通じて、妹・桐乃の趣味である…

『宙のまにまに』OP映像を見て気になったこと―明野美星は本当に天然キャラなのか

久しぶりに『宙のまにまに』を見た。そのOP映像で気になったことがあったので、とりあえず、下の動画の20秒から30秒あたりを見てほしい。http://youtube.com/watch?v=6lCnFH7ZF-A 朔のとなりに駆け寄って話しかける美星。朔は本を読んでいるのでそれを無視す…

『バカとテストと召喚獣』についての3つの論点―試験召喚システム・強者への反抗・キャラクターの個性

はじめに 7月からアニメ『バカとテストと召喚獣』の第2期が始まる。そこで今回は、この作品を「試験召喚システム」「強者への反抗」「キャラクターの個性」という3つの観点から考察する。この記事が、これからアニメ第2期を語る皆さんの役に立ってくれたら幸…

『シャーマンキング』と正義について―ラキストの「相対主義」と、マルコの「愛=正義論」

アメリカにはアメリカの“正義”があり、フセインにはフセインの“正義”がある。アラブにも、イスラエルにもお互いの“正義”がある。つまりこれらの“正義”は立場によって変わる。でも困っている人、飢えている人に食べ物を差し出す行為は、立場が変わっても国が…

『侵略!イカ娘』まとめ―アニメ2期が始まる前にしておきたい要点整理

イカちゃんが地上で学んだこと一覧 イカちゃんが地上にやってきて、これまでに学んだ世間一般に関する知識(相沢家やその他キャラの個人的なことは除く)。右の数字は単行本の巻数。 人類の数や兵力。ゴミ拾い。シャチの浮き輪。日焼け。犬。花火。パニック…

『ねこのひたいであそぶ』を逆説的に考える―日常系4コマ漫画の再考に向けて

『ねこのひたいであそぶ』の不思議な世界 ねこのひたいであそぶ (1) (まんがタイムKRコミックス)作者: なんにゃか出版社/メーカー: 芳文社発売日: 2011/04/27メディア: コミック購入: 3人 クリック: 119回この商品を含むブログ (16件) を見る『ねこのひたい…