新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

細かすぎて伝わらない『陽炎、抜錨します!』(第1~3巻)の萌え(燃え)ポイント

第1巻

横須賀鎮守府へ転属となった陽炎。別れ際に不知火と抱擁。

  • 冒頭の百合寸劇その1。いいよ、いいよー、幸先のいいスタートですよ~。

曙登場。案の定、メチャクチャひねくれてて口が悪い。

  • 初対面で第一印象最悪なところからスタートするのがラブコメの王道ですよ。

陽炎は第十四駆逐隊に所属し、そこの嚮導艦になることに。さっそくメンバーを探して回る陽炎。秘書艦・愛宕さん「お姉ちゃんって呼んでくれたら、答えてあげるわ」→陽炎「皐月がどこにいるのか教えて、お姉ちゃん」(41頁)

  • お姉ちゃんwwwwwさっそく横須賀鎮守府の洗礼を受ける陽炎。

皐月くん登場。何故か腕立て伏せに付き合わされる陽炎。

  • 筋トレに付き合ってくれただけで、あっという間に陽炎に懐く皐月。かわいいね!

霰と長月が登場。長月は霰LOVE。陽炎を邪魔者扱いし、メチャクチャ態度悪い。長月「私はお前を嚮導だと認めない。第十四駆逐隊は私と霰だけの隊だ。邪魔をするな」(54頁)

  • はーい、皆さ~ん、注目~! ここでの長月の様子、しっかり覚えといてくださいね~。この後の豹変ぶりがすごいから。

潮登場。曙再登場→陽炎と口喧嘩が始まる→曙「気に入らないなら外せば!?」(62頁)

  • 名言出ましたー!

訓練中も霰のそばから離れない長月→陽炎「長月は霰ともっと離れて」→長月「私は霰を守ると誓った」(82頁)

  • 長月さん、霰のこと好きすぎだろwww

砲撃訓練。砲撃が超苦手な長月さん、間違えて陽炎に弾を当てそうになり、一気に青ざめた表情になる。ショックのあまり膝を抱えてうずくまる長月。

  • 最初の頃の威勢は一体どこにいったのかwwwww

長月「私を、第十四駆逐隊から外すか?」→陽炎「そんなことしないから。長月だって大切な仲間だよ」(122頁)

  • 長月が陽炎ハーレムの一員になりました。チョロすぎやろ!

声が小さくて訓練にも支障が出ていた霰さん。愛宕さんと一緒に「ぱんぱかぱーん!」と叫ぶ特訓を受ける。

  • ただでさえ声が小さいのに恥ずかしさのあまりますます小さくなって「…ぱ…ぱん…」「ぱ…ぱんぱか…ぱん…」とかろうじで声を出すのがやっとになってる霰さん可愛い!

恥ずかしさで押し潰されそうになる霰のもとに、陽炎と長月が登場、一緒に「ぱんぱかぱーん!」と叫ぶ。長月「砲撃は下手でも、声では霰に負けたくない。そこだけでも霰を手助けできるようになりたいんだ」(139~140頁)

  • 本来ならコミカルなだけのシーンを感動的なシーンに落とし込む作者の技術!

その夜、長月と霰が陽炎の部屋に行って間宮の羊かんを渡す。長月「今日は世話になった。私のわがままにつきあってもらって、すまない」「陽炎のおかげで自分の愚かさが理解できた。今後は迷惑をかけない。約束する」(144頁)

  • まだ第1巻の中盤くらいなのに、あっという間に従順になった長月ちゃんホント、かわいいね!

訓練中も相変わらず反抗的な曙「はっ、殴る気?やってみなさいよ」(157頁)→海上に響く平手打ちの音。曙の頬を叩いたのは……なんと潮! そこから第十四駆逐隊全員で殴り合いの喧嘩に発展!

  • 駆逐艦どうしの本気の殴り合いこそ陽炎抜錨の醍醐味ですよ。

愛宕さんからお説教を受けた後、ついに泣き出す陽炎。

  • ここの文章も実に読ませるんですよね。頑張っても上手くいかない虚しさ、自分の不甲斐なさ、どうすることもできない悲しさ、それらが一気に込み上げてきて泣き出す描写が本当に胸に詰まります。何ていうか本作の陽炎は、真面目で責任感が強くて、であるからこそ、上手くいかなかった時に必要以上に自分を責めてしまう、圧倒的に自己評価が低い感じが常にあって、優しく抱きしめて慰めてあげたい気持ちにさせられます。

泣きながら謝る陽炎→長月「……そんなことはない!謝るのは私の方だ」(166頁)→この言葉をきっかけに、抱き合って泣く十四駆のメンバー。ただ一人、曙だけが涙を見せずにその場に立ち尽くす。

  • 落ち込んでた長月を陽炎が励ましたように、今度は長月が陽炎に声をかける。すばらしい…なんて熱い展開なんだ!

長くなるので詳細は省きますが、出現した深海棲艦を迎え撃つために曙が命令に反して一人で出撃。潮から曙の過去(船団護衛に失敗し大破した)を聞かされた陽炎たちも、曙を助けに向かう。

沈没寸前の曙を無事保護。曙を曳航しながら全力で逃げる。→曙「あんたたちだけで逃げればいいじゃない!」、潮「スクラップが喋りました。どうしましょう」、陽炎「珍しいから横鎮で見世物にする」(222頁)

  • スクラップが喋りましたwwwww

曙と潮を逃がすために、深海棲艦と対峙すると決めた4人。→陽炎「あんたたちの命、あたしがもらった!」→長月「承知した」「寮艦のために戦えるとはこの上ない名誉だ」(224~225頁)

  • 最初はあれだけ反抗的だったのに、今や最も忠実な陽炎の部下になった長月、最高にカッコイイです。

私も戦わせろと言う曙→潮「そんな恰好でなにができるんです!」→曙「戦わせてってば!陽炎たちが死んじゃうじゃない!みんな死んじゃうのやだ!いなくなっちゃうのやだー!」「潮の馬鹿!みんなの馬鹿!うわーん!!」(226頁)

  • ついにキャラが崩壊した曙wwwwwシリアスな場面なのに笑いが込み上げてくるwwwww

その後、増援により形勢逆転、戦艦ル級を倒すことに成功。曙は船渠(ドッグ)に入院。

お見舞いにくる陽炎たち → 皐月による曙のモノマネ「陽炎たちが死んじゃうじゃない!みんな死んじゃうのやだ!」、潮「曙ちゃん、言うことが聞けないんですか!」、皐月「死んじゃやだー!死んじゃやだー!」(243~244頁)

  • 大爆笑wwwwwもう素晴らしい! しかも長月が「この真似、足の動きが秀逸だ」とか言っていちいちネタを解説してるしwwwww その後の曙の反応も最高でした! お前ら、本当に仲良くなったなあ。もう素晴らしいよ! 第十四駆逐隊、万歳!

第1巻まとめ

  • 本作の主人公はもちろん陽炎、準主役級が曙ということになってはいますが、第1巻の影の主役は長月だったんじゃないかなあと個人的に思っています。最初は陽炎に対してメチャクチャ喧嘩売ってきてたのに、砲撃訓練で無様な姿をさらして落ち込んで、陽炎に慰められて心を入れ替えて、陽炎が泣いた時は真っ先に声をかけて一緒に泣きながら悲しみを分かち合い、そして、クライマックスでは陽炎の忠実な部下として仲間を守るために立ち上がる。長月、最高に可愛くて最高にかっこよかったよ!

第2巻

扉絵。第十四駆逐隊と書かれた横断幕を持ってる6人。

  • 鑑これ関係の絵(公式絵、ラノベの挿絵、マンガ版・アニメ版の絵、その他の二次創作を含む全ての画像)の中で、最も尊い、個人的に一番大好きな絵ですね。

時化の中、訓練する第十四駆逐隊→曙「あたし時化って大っ嫌い!!」「あんたも嫌い!」→陽炎「そう!あたしはあんたが好き!」(12~13ページ)→顔を真っ赤にする曙

  • 冒頭の百合寸劇その2。曙もすっかり陽炎ハーレムの一員に!

不知火が横須賀鎮守府にやってくると聞いてはしゃぐ陽炎。朝5時に皐月を叩き起こしてタイが曲がってないかチェックさせる。

  • どんだけ不知火のこと好きなんだよ。2人でイチャイチャしてる場面だけじゃなく、こうやって一人で相手のことを想ってるところなども含めて、かげぬいって正義だよな。

十四駆のメンバーに不知火を紹介する陽炎。その後、露骨に不機嫌になる曙。

  • かわいいいいいいいいいいい。曙さん、陽炎が構ってくれなくて寂しいのん? ん~? 口では散々悪口言ってるのに本当は陽炎のこと大好きなのんな~!

陽炎を取り合って決闘する曙と不知火。

  • 陽炎抜錨名物、駆逐艦どうしの殴り合い。

敵の攻撃を受けて大破した不知火 → 陽炎たちが救出に向かうも失敗 → 不知火を発見できないまま作戦の中止が告げられる → 提督に殴りかかろうとする陽炎を4人がかりで止める → 最後に執務室に残った曙「この……クソ提督!」(205頁)

  • このシリアスな場面でこの名言は反則ですよ……。

ショックのあまり自室に鍵をかけ閉じこもる陽炎。ドア越しに陽炎を励ます皐月・長月・霰。

  • 優れたライトノベルの中には、主人公がヒロインのためにしてあげたことが、巡り巡ってヒロインから主人公に帰ってくる、という構造になっているものが結構あるのですが(その最も典型的な例が『ココロコネクト』)、陽炎抜錨もその一つです。はじめは、自分は性能の良くない旧型の駆逐艦だというコンプレックスを抱えていた皐月や長月が、陽炎と出会い色々なものを受け取る。それは、勇気、自信、駆逐艦としての誇り……言い方は千差万別だけれども、掛け替えのないものを得て彼女たちは大きく変わりました。そして今度は、落ち込んで立ち上がれなくなった陽炎のために、皐月と長月が立ち上がり、かつて陽炎から貰ったものを陽炎に返すのです!

回想シーン。陽炎と不知火が出会って間もない頃。神通さんによる訓練がきつすぎて訓練中に吐く陽炎。

  • 駆逐艦娘の嘔吐が見れるのは陽炎抜錨だけ!

訓練中も余裕の表情の不知火→神通さんによって練習量を増やされる→結局不知火も吐く→それを見て「この娘もあたしと同じなんだなあ」と初めて親近感を覚える陽炎

  • 初めて親しみを覚えるきっかけが嘔吐ってどういうことだよwwwww

不知火を救うために出撃する前に、皐月が隠し持ってたビールを回し飲みする十四駆メンバー → みんな一様に「まずい」 → あとで不知火にも飲ませるとか言って再びビンに栓をする皐月。

  • はあ、もう…、陽炎抜錨の皐月はねえ…、筋トレマニアだし、陽炎のこと大好きだし、素直で優しいし、鳳翔さんからビールもらってきたりするし、なんというかもう……かわいいね!

仲間のピンチに颯爽と登場する霰「長月、皐月、今助ける! がんばれ!」→皐月「霰……大声出せたんだね……。すごいや」、長月「いい声だった。聞き惚れたぞ」→うっすらと頬を染める霰(259~260頁)

  • 第1巻の「ぱんぱかぱん」発声練習の成果! よくやった霰!

不知火の救出に成功した陽炎。そこに駆けつける十四駆の皆。不知火「陽炎……。あなたは、幸せな仲間に恵まれているのですね」(272頁)

  • 最初は第十四駆逐隊のことを認めていなかった不知火でしたが、彼女たちの堅い絆を目の当たりにして、これなら陽炎を任せられると安心し呉に帰っていくのでした。めでたし、めでたし。(だがしかし、これからも不知火と十四駆による陽炎の取り合いは続く!)

第2巻まとめ

  • 第2巻は、陽炎と不知火の物語であると同時に、第十四駆逐隊の物語でもある。最初にできた絆と、後からできた絆。その2つを見事にオーバーラップさせて1つの物語として成立させている! 1巻に引き続き大満足の内容でした。

第3巻

鈴谷・熊野・三隈と一緒に出撃し鎮守府に戻る途中の陽炎・潮・曙。どことなく不機嫌な曙。→潮「三隈さん。曙ちゃんの言うことは気にしないでください。寂しがってるだけですから」「曙ちゃんはベタベタするのが好きじゃないのに放っておかれるのも嫌いで、最近いつもこうなんです。こないだ寝る前に、ずっと第十四駆逐隊がいいって漏らしていて……」(15頁)

  • ああ~~~~~~萌え死ぬんじゃ~~~~~~ いつもそばで曙を見守っている潮が、なんか曙のお母さんみたいで可愛いです。

鈴谷「あはははは。可愛い駆逐艦」→陽炎「曙は可愛いですよ」「可愛くて、人嫌いで、一人が好きなのに寂しがりで、照れ屋で、凄く誇り高くて」→曙「わーっ! わーっ!」(15~16頁)

  • 冒頭の百合寸劇その3。陽炎さん、曙のことよく分かってるじゃないですか!

鎮守府に戻り編成替え申請書を書く陽炎。それを見た曙、陽炎が自分達を見捨てて別の艦隊に行こうとしてると勘違いしマジギレ。

  • 「いなくなっちゃヤダー!」の再来! ほうほう、そんなに陽炎と離れるのが嫌ですか~。かわいいのう、かわいいのうwwwww

あまり手紙を書かない陽炎に代わり、皐月が不知火と文通して陽炎の近況を報告していることが発覚。

  • 相変わらず可愛いことするなあ、皐月くん。

一時的にリンガ泊地へ転属することになった十四駆。リンガにビールを持っていこうとする皐月。

  • お前、ビール好きやなあwwwww

リンガに到着した一行を秘書艦・叢雲とあきつ丸が出迎える。リンガはこの2人と年老いた提督しかいない小さな泊地。

深海棲艦の接近を悟り、十四駆とあきつ丸を島から逃がそうとする叢雲。死を覚悟し懐かしい思い出話に花を咲かせる叢雲と提督。

  • この2人の関係性がいいですね。艦娘どうしで愛を深め合い各地で戦う艦娘もいれば、一人の提督にずっと付き従い苦楽を共にする艦娘もいるという、この多様性がいい。

結局、リンガに残って戦うことになった十四駆。鳳翔さんからもらったビールで乾杯しようとする皐月。

何故、鳳翔さんは駆逐艦にも快くビールをくれるのか、その理由を叢雲が話し始める。叢雲「駆逐艦の人生って短いじゃない。こう言っちゃなんだけど、あたしたちが海の藻屑になる可能性は戦艦や空母の人たちに比べればずっと大きいわ。 (中略) あの人はいつだって、私たちの人生に悔いが残らないようにしたいっておもっている。だから鳳翔さんは、飲みたいって娘にビールをあげるの」(189頁)

  • 陽炎抜錨の刹那的な艦娘がよく表されている台詞。あらゆる艦種が割とフラットな関係の中で共に生活しているアニメ版『艦これ』とは異なり、『陽炎抜錨』は艦種ごとの格差が明確に存在します。戦艦や空母に比べて性能が劣る駆逐艦は、悪く言えば戦闘の中で使い捨てられる存在であり、任務中に死亡する者も多い。それゆえに駆逐艦は、最も勇敢な艦種であり、一日一日を悔いが残らないように精一杯に生きている。そういう世界観がアニメ版と大きく異なる点だと思います。

叢雲が大切にとっておいたビールを勝手に開ける陽炎たち。怒る叢雲に向かって「思い出に浸るのはほどほどにすべき」「生きて帰ればまたビール貰える」と言う陽炎。

  • このあたりは良いシーンの連続ですね。陽炎抜錨アニメ化してくれないかなあ。でも、駆逐艦がビール飲むシーンとか、絶対アニメじゃ出来ないだろうけど!

深海棲艦との戦闘で大破した陽炎 → 曙と潮が駆けつける。慌てふためく曙 → 潮「明石さんに応急修理の方法を教えてもらったはずですよね」「陽炎さんに応急処置してください」 → 青ざめた顔で出来ないと言う曙「だってあたし工作艦じゃないもん!ただの駆逐艦だもん!」(229~230頁)

  • ダメだwwww 陽炎が死にそうになってる超シリアスな場面なのに、笑いが抑えられないwwwww 曙さん、あんた語尾に「だもん」とかつけるキャラじゃねえだろwwwww

リンガに上陸しようとするワ級を迎え撃つあきつ丸

  • 全ての登場人物に見せ場が用意されていて、上手い作りになってるなあと思います。

その後、不知火や鈴谷などが応援に駆けつけ、無事に勝利。全員で横須賀に帰還後、ずっと叢雲と二人三脚で歩んできた老提督の退官式が行われます。

  • 式の後の叢雲と老提督の会話が素晴らしかった。お互いのことを知り尽くした間柄だからこそできる、淡々と短い会話をするだけの別れ。

第3巻まとめ

  • 駆逐艦という存在の儚さが強調されていた巻でした。私が考える『陽炎抜錨』の最大の特徴は、駆逐艦と他の艦種との間に明確な格差が存在し、駆逐艦が最も「死」に近いところで戦っているという点であります。そして、その特徴ゆえに、駆逐艦は他の誰よりも勇敢に戦い、鎮守府内で独自の文化を築いている存在でもあります。この第3巻とそれに続く第4巻は、この陽炎抜錨の世界観が最もよく表れている巻じゃないでしょうか。
  • そして第3巻はまた、叢雲という一人の少女にとっての、人生の大きな転換点を描いた作品でもあります。おそらく彼女は、提督と別れた後、鳳翔さんと再会してまたビールを貰うことになるでしょう。その後は、鎮守府に残って別の戦いに赴くのか、退役して老提督と共に第二の人生を歩むのか、それはまだ分かりません。しかし、そこにはもう、過去の思い出に浸ってビールを眺めるだけの彼女は存在しません。次の人生の節目で――それは次の戦地に向かう前夜かもしれないし、退官した老提督の家に行った時かもしれない――リンガで過ごした日々を思い出しながら、明日に向かうために叢雲はビールの栓を開けるのでしょう。

第4巻から第6巻までの萌え(燃え)ポイントについてはこちら→細かすぎて伝わらない『陽炎、抜錨します!』(第4~6巻)の萌え(燃え)ポイント - 新・怖いくらいに青い空