新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『がっこうぐらし!』第10巻は、嘘と欺瞞に満ちた日本の就職活動のメタファーである

ゾンビがうごめく高校での生活は、現実の学校生活のメタファーである。子どもという存在は、冗談ではなく本当に、学校という地獄の中で命がけで戦っている。そこで生き残った者だけが大人になる。

そんな『がっこうぐらし!』も、第5巻で高校を「卒業」し、第6巻からは大学編がスタート。さらに第10巻からは、胡桃ひいては人類を救う手がかりを求めてランダル・コーポレーションへと突入します。

そこで見つけた謎のスマートフォンを使って外部との通信に成功。しかし、数日後に救援部隊を送るという相手の言葉は実は全くの嘘で、由紀達は一転して大ピンチに陥ります。地下へ逃げるか、胡桃を犠牲にするか、究極の取捨選択を迫られる中で由紀は「わたしらしさって何?」と思い悩みます。

もうお分かりでしょう。作中の描写になぞらえて言うならば、要するにこういうことです。

  • 「弊社は出身校や容姿で採用を決めたりはいたしません。面接では一人ひとりの長所や個性を引き出すように努めます」→嘘の可能性74%
  • 「弊社は福利厚生がとても充実していて女性でも働きやすい会社です」→嘘の可能性78%
  • 「今後のご健闘をお祈り申し上げます」→嘘の可能性95%

もはや学校暮らしすらしなくなった『がっこうぐらし!』第10巻に描かれているのは、まさに、嘘と欺瞞に満ちた日本の就職活動です! 学校も地獄だったけど、ある意味それ以上にもっと地獄で、理不尽で、クソッタレな社会の中に、由紀達は足を踏み入れようとしているのです。

そのように考えると、由紀達が謎のスマホアプリを頼りに行動している様は、リクナビマイナビみん就などに踊らされる就活生のメタファーのようにも見えますよね。

一番象徴的だったのが、学園生活部4人がいよいよランダルの中枢へと潜入していくシーン。「やっぱリクルートスーツとかいるかな?」と不安がる由紀を、胡桃が「学生服は冠婚葬祭何に着てってもいい最強のフォーマルなんだぞ」と励まし、4人は胸を張って扉を開けます。

キルラキル』風に言うならば、制服は、征服に通じるもの、支配や強制のメタファー、ゾンビがうごめくあの地獄の学園生活の象徴です。それでも、由紀達は誇りを持ってその制服に袖を通し、社会の中へ足を踏み入れていくわけです。

確かに学校は地獄だったかもしれない。でも、そこが自分たちの原点であることは一生変わらない。そこで学んだことはずっと自分の中に残り続けるし、そこで得た繋がりはずっと続いていく。それは、寄る辺のない現代社会を生きる私達に残された、数少ない灯台のような存在なのかもしれない。