新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

アニメ版『ラブライブ!』三部作感想

先日ようやくニジガクを観終わったのだが、そう言えばラブライブシリーズの感想をブログで書いてなかったなと思ったのでまとめて書くことにする。

ラブライブ!

アニメ1作目を一言で言い表すなら、生まれながらのカリスマ性を有する高坂穂乃果という少女の、天才であるがゆえの苦悩と成長を描いた、ということになるだろう。すでに他の記事でも指摘されているように(ラブライブの穂乃果ちゃんに学ぶ『マネジメント』 - WebLab.ota)、穂乃果はとにかく他人を動かすのが上手く、特に一芸に秀でているというわけではないものの、他を圧倒する行動力と熱意で皆を牽引していくタイプのリーダーである。しかし、その性格は裏を返せば、無理を重ねて突っ走り、周りが見えなくなってしまうという面もあり、実際にそれによって体調を崩し、メンバーとも対立してしまう。アニメ1期のクライマックスは、そこから穂乃果が立ち直り、成長していくわけだが、それはメンバーの事を気に掛けながら自制心を持って行動できるようになる(=良くも悪くも、小さくまとまって大人になる)、という意味ではない。現実の優れたリーダーというものは、時には周囲に目を配ってその人に合わせた対応をしつつも、時には周りを強引にでも引っ張っていく、という二律背反の性質を持っているわけで、穂乃果もまたそういう意味での真のカリスマ的リーダーへと成長を遂げていくという物語、まさに、リーダーとは何かということを描いた物語だと言える。

で、それが2期になるとそのテーマ性はだいぶ薄れてくる。第2期は最初から終わりまで、3年生の卒業とμ'sの解散というエンディングを意識しながら、13話もの長きにわたって続いたエンドロールのような作品だった。この構造は『けいおん!』の2期とほぼほぼ同じだと思う。特にラスト3話は、μ'sの解散を決意する11話、ラブライブ決勝を描く12話、3年生組の卒業式である13話というように、普通のアニメなら1話で描くクライマックスを3話に分け、それでいて各話がそれぞれ違う味のあるエモーショナルな回になっていたと思う。1期で完全にハマった人なら2期も感動できるだろうが、そうでない人が2期を見ても結構キツイだろう。

推しキャラは西木野真姫ちゃん。ツンデレでプライドが高く、自分を上手く表現できない不器用さ、いじらしさが最高である。台詞が棒読みという人もいるが、アニメの棒読みには「これはあかんやろという棒読み」と「正義の棒読み」がある。正義の棒読みとは、棒読みでも全く気にならない、むしろ棒読みだからこそ味があっていい、という稀有な現象を指すが、真姫はまさにそれだろうと思う。

ラブライブ!サンシャイン!!

本作はいろんな意味で前作と対になっている。舞台は東京から沼津へ。主人公も前作のようなカリスマ性は無く、あくまでもμ'sに憧れてスクールアイドルを始めた普通の女子高生という面が強くなった。そのせいなのか、本作は前作よりも、女どうしの激重巨大感情がクローズアップされていたように思う。2年生組と3年生組+ルビィちゃんの複雑かつ激重な関係性でエモさが前面に出て来る一方、善子とズラ丸はギャグ要員という役割分担になっていたかと思う。

2期になるとようやく大きなテーマのようなものが浮かび上がってくる。これは前作とも一部共通するのだが、最初に描いていた夢や目標が消えた後、どうすれば未来に向かって進んでいけるのか、という問いである。スクールアイドル活動によって、廃校の危機は免れた、あるいは、結局廃校は阻止できなかった、となった時に、それでもモチベーションを維持し、前向きに生きられるかという大きな問い。この問いは、卒業しスクールアイドルを辞めたあとも彼女たちの人生は続いていく、という事実と連動している。そして、これは人が様々なものと向き合う時、例えば、家族、仕事、地域、そういったものと関わる時に避けては通れない普遍性を持った問いでもある。

推しはもちろん渡辺曜ちゃん一択である。自分、普段は明るくてムードメーカー的な子が見せる繊細な巨大激重感情、大好きなんで。皆知っての通り、特に1期の11話は素晴しい。曜ちゃんの複雑で繊細な感情を周り、特に千歌ちゃんもよく理解して優しく接してくれるのがまた最高にエモい。

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

学校の危機を救うためにメンバー全員が一致団結してステージに立った前二作とは様相が全く異なる。同じ同好会に所属しつつも、やりたい事もパフォーマンスの方法も一人ひとり違って別々に活動している様は、ラブライブよりむしろアイマスに近いものがある。巷の噂ではゆうぽむが激重でヤバイと聞いていたが、11話、12話以外では百合的に唸らされる内容は特に無かったかと。そのぶん11話は前評判通りの激重感情爆発回で百合的に極めてエモーショナルだったが、それに加えて、歩夢の感情と共に揺れ動く画面、絡み合う2人の足、重なり合うスマホ、といった百合的様式美への並々ならぬこだわりが感じられ、拍手喝采するしかない名シーンだった。

一方、ストーリー全体に貫かれているのは、2つのものの「対比」に他ならない。皆で協力して一つのステージを作る方式と、皆が別々にやりたい事を表現する方式との対比。自分を抑えて皆のために尽すことと、対立を恐れずに自分のやりたい事をやること。変わっていくものと、ずっと変わらないもの。仲間と孤独。私とあなた。この作品は、一緒に夢を追いかけてくれる仲間やファンの大切さを描くと同時に、自分が本当にやりたい事をやろうとする時、人は孤独なのだということをしっかりと描く。あなたと一緒に頑張る、ではなく、あなたがいるから頑張れる、というような世界。実はこの構造、『ゆるキャン△』や『宇宙よりも遠い場所』などと全く同じなので、これはここ数年のトレンドなのだと思う。

推しキャラは、ここはやはり高咲侑しか居ないだろう。個人的な好みの問題でもあるが、スクールアイドルやってる周りのメンバーに勝るとも劣らず可愛い、というか他を圧倒していると思う。ツインテールの先端だけまるでカビが生えたように緑色になってるのも、他のアニメキャラにはない唯一無二の特徴で素晴らしいと思う。