新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『それでも歩は寄せてくる』、堂々完結!

元々作者である山本崇一朗氏がtwitterに上げていたラフなイラストだったものが、やがて週刊少年マガジンで連載開始され、単行本にして17巻も続いたのだから、世の中何があるか分からないものである。

序盤は兎にも角にも、歩に詰め寄られて「んあっ!?」ってなってるうるし先輩が圧倒的な可愛さ。恋人どうしになる前の男女のイチャイチャを手を変え品を変え見せ続けるという意味では、同作者の『からかい上手の高木さん』と同じだが、八乙女うるしの場合は高木さんとは違い、からかいとか駆け引きとかにめっぽう弱くて、逆に田中歩の方が無表情でぐいぐい攻め込んできて、それに対するうるし先輩の反応がもういちいち可愛かった。読者は皆、もうこの2人のイチャイチャをずっと見続けていたいという気持ちにさせられた。

しかしその後、第6巻で後輩の香川凛が登場。微妙な距離感を行ったり来たりするだけだった歩とうるしの関係性は、香川凛という劇薬が加わることによって一気に動き出す。そして第8巻、修学旅行で歩と会えない日々が続いたことがきっかけとなり、うるし先輩が歩への恋心を自覚。ついに山が動いた。

ところが、ここからが意外と長かった。お互い相手のことを好きだと自覚しつつも告白できずにいる関係性が続いた。しかし、うるし先輩の方は、自身の恋心を自覚したからか、以前より積極的に歩に詰め寄ることが多くなったように思う。10巻では高木さんさながらの攻めを見せてくれたし、12巻では歩の頬にキスをしたりもした。攻め込んだ後に結局たじたじになって赤面したりするのは相変わらずだったが。こうして、ゆっくりではあるものの着実に2人の距離は縮まっていったのである。

そして終盤。受験勉強の合間を縫って将棋を指し続ける2人の実力差はじわりじわりと近づいていき、ついに卒業式当日、一世一代の大勝負に見事勝利した歩は、無事告白に成功する。まるでこの作品自体が長い長い将棋の対局だったようで、それが終わってしまった寂しさが胸に去来する。

だが、恋人どうしになった2人は、これからもずっと将棋を指し続けるのだろう。将来、スピンオフ作品とかが出て歩とうるしの子どもとかが登場したりするかもしれない。2人が共に歩むこれからの人生に幸多からんことを。