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新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

科学技術関連で最近気になった記事など(その1)

科学技術と社会

科学の「再現性」が危機に瀕している

科学の「再現性」が危機に瀕している - GIGAZINE
脳に関する研究結果に誤りの可能性? fMRIのソフトウェアにバグを発見 ─欠陥はすでに修正も残る不安 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

大学とかで研究に関わってる人なら身を持って感じていると思いますが、やはり、in vitroからin vivoへ、アナログ計器からコンピュータを用いた分析手法へと、系が複雑化するに従って再現性をとることが難しくなっていく傾向というのは確実に存在しますよね。

科学と再現性という話題で言えば、STAP細胞の件が一時期大きな騒動になりましたが、あれは結局、論文不正のやり方があまりに杜撰だったし、大々的に発表が行われて社会的インパクトが極めて大きかったため、すぐに問題点が明るみに出たわけです。しかし、それほど注目されない(他の研究者が再現実験をしようと思わない)論文であったり、より巧妙に不正が行われていたりした場合には、たぶん不正を見抜くことはかなり難しいのではないでしょうか。というわけで、STAP細胞論文ほど酷い例はそうそうないにしろ、再現できない論文っていうのはそこら中に転がっていると思いますね。

カマキリの交尾後の共食い

カマキリの交尾後の共食い、卵の栄養に 視覚的に確認 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

カマキリのオスが交尾後にメスに食べられることによって、栄養が卵に行って子孫を残しやすくなることが確認された、という内容の記事。私が注目したのは、この記事の最後にある「自然界では、雄のカマキリが交尾の際に雌によって捕食される確率は約13~28%」という記述。100%ではないというのがまた面白いですよね。

卵を産むために多くの時間とエネルギーを消費するメスとは異なり、オスの場合は比較的簡単に精子を作れるので、なるべく多くのメスと交尾した方が子孫をより多く残せそうな気がします。しかし、栄養不足によってメスの体内で卵があまり生産されないのだとしたら、かえって子孫の数は減少してしまうかもしれません。なので、交尾する回数は減ってしまうけれども、確実に子孫を残すためにメスに食べられるという選択をするケースも考えられるわけですね。野性のカマキリでは、食べられない・食べられるの両方が見られるということなので、やはりどちらの戦略ともそれなりの利点(と欠点)があって、進化の過程で自然淘汰されることなく今日まで共存し続けているということなのでしょう。

あるいは、若くて体力のあるオスは交尾の後に逃げて他のメスとまた交尾をするけれども、もう寿命が近づいてるオスは食べられることで今ここにいるメスに全てを託すという選択をするのかもしれません。

ウィルスも免疫系を持っている!

巨大ウイルスにもCRISPR様の「免疫系」が! | ネイチャー・ジャパン

CRISPRっていうのは以前の記事でも書きましたが、近年注目されている遺伝子改変ツールの名称です。これは元々、細菌が持っている免疫システムを利用した技術です。このCRISPRに似た免疫系がミミウイルスでも見つかったというのが、この記事の内容です。このミミウイルスというのは、生物学的にはウイルスに分類されるのですが、遺伝子を980個も持っていて、一般に「巨大ウイルス」と言われているものですので、こういった免疫系を持っていても何ら不思議ではないと思います。

哲学的な言葉を使えば、免疫とは「自己」と「非自己」を見分けるシステムのことだと言えます。現代の生物学では生物には分類されていないウイルスですら、自己と非自己を見分けることができるというのは、大変興味深いことです。中屋敷均さんという方が著書『ウイルスは生きている』の中で、ウイルスも生命と見なしていいのではないか、と述べられていましたが、今回の発見はそういった考え方をより補強するものであると言えます。

現代の生物学では、生物の定義として「内と外を分ける境界線があること」「自己複製能力があること」「代謝を行うこと」などが挙げられますが、ウイルスは他の生物の力を借りなければ増殖できないため、生物とは見なされていません。しかし、巨大ウイルスの発見と、今回の「ウイルスにも免疫系がある」ということの発見などを通して、生物の定義が変わっていくかもしれません。

上の著書の中では、ある科学者が提案した「生物とは、ダーウィン進化をする能力を持つシステムのことである」という定義が紹介されており、これは「なるほどな」と思いました。この定義に従えば「ある種の細胞小器官とか、人工知能を持ったロボットとかも、もしかしたら生物に含まれてしまうのではないか」という議論が出てくるでしょう。しかし、そういった議論の余地はあるにせよ、生物の定義はこれで良いんじゃないかと思います。何年後か何十年後になるかは分かりませんが、たぶん、これが一般的な生物の定義として定着するんじゃないでしょうか。

ウイルスは生きている

ウイルスは生きている (講談社現代新書)

ウイルスは生きている (講談社現代新書)

上でも紹介しましたが、この本面白いですよ~。特に、シンシチンという胎盤形成に必要な遺伝子がウイルス由来の遺伝子だった(つまり、我々の祖先がウイルス感染によって胎盤を作る能力を獲得し、それによって我々哺乳類が誕生したということなのです!)という話は実に興味深いですよね。

その他にも、ウイルスやトランスポゾンが発見されるまでの物語、ウイルスが増殖する仕組み、生物の進化においてウイルスが果たした役割、といった内容をかなり深いところまで掘り下げてあって読みごたえがあります。まさか、一般向けの新書で、分子進化工学なんて単語が出てくるなんて思っても見ませんでしたよ。

CRISPR領域の発見者

遺伝子操る「ゲノム編集」 技術のルーツに日本人:朝日新聞デジタル

当時阪大にいた中田篤男さん、石野良純さんらが細菌のゲノム中に奇妙な繰り返し配列(CRISPR)を発見。21世紀に入り、ダウドナとかシャルパンティエといった海外の研究者がさらに研究を進め、CRISPRを利用した遺伝子改変ツールを作りだしたわけです。これは、下村脩さんがクラゲの研究の中でGFPを発見し、その後ロジャー・チエンらがGFPを生物学研究に応用していった、という流れとよく似ています。

この件について、「日本が基礎研究に投資したからこそ画期的な技術革新ができた→だから基礎研究が大事」と見るか、「せっかく日本人が発見したのにその後の成果は全部海外に取られて残念→だからもっと応用を見据えた研究をすべき」と見るか、それは人によると思います。

余談ですが、Cas9・ガイドRNA・標的DNAからなる複合体の構造を解明したのも実は日本人だったりします(参考記事)。

北川進 京大教授

受験と私:京都大教授の北川進さん 「やりきって達成感を」 - 毎日新聞

上の記事とは直接の関係は無いのですが、記事を見て思い出したことを一つ。私は一度だけ北川進さんの講演を聞いたことがありますが、私のような素人にとっても分かりやすく、それでいてすごく内容の濃い、素晴らしい講演でした。

大学に長くいると有名な科学者の講演を聞く機会も結構あるのですが、その中には、まあ酷いものも有ります。何言ってるのかさっぱり分からない退屈な講演をする人もいました。科学とは何の関係もない自慢話を延々と語るだけの人もいました。講演中に独りよがりな持論を展開して「だから日本の文系研究者はダメなんだ」と悪口を言い出す人もいました。繰り返しますがこれらの例は全て、あまり名前の知られてない普通の研究者ではなく、ノーベル賞候補と言われている超有名な先生の話です。

でも、北川進さんの講演は全然違いました。「19世紀から20世紀は石炭(固体)と石油(液体)の時代」「でもこれからは空気などに含まれる分子を自由自在に分離・回収して様々な用途に使っていく『気体の時代』が来る」「でも気体の分離・回収はすごく難しい」「特に窒素と一酸化炭素を分けることは物凄く難しい(つまり空気と一酸化炭素が混ざってしまうとそれを再び分けることは不可能に近い)」「でも配位高分子なら分子設計次第でいろんな気体を分離できる」「分離だけじゃなくて貯蔵とかその他の用途でも使える」――そういったことを一から順に分かりやすく説明していくので、北川の頭の中にある研究のビジョン、それを達成するための戦略、その成果、そういったことが短時間でスッと頭の中に入ってくる。終わったあと、凄く有意義な時間を過ごせたなあと思える講演でした。

優秀な高校生が医学部ばかりに行ってしまう問題

優秀な高校生が医学部ばかりに行ってしまってよいのだろうか - 語られない闇を語る

医学部ばかりに人気が集中してしまうことの弊害として、記事の中で「本来なら工学などで凄い実績を残せた人が普通の医者になりかねない」というのが挙げられています。確かにそういう側面もあるでしょう。でも、記事にあるような「普通の医者」ならともかく、医学研究をやる場合には工学の知識がメッチャ必要なんじゃね?とも思ったりする。例えば、MRIとか人工関節とか人工心臓とか、最先端の医療機器っていうのは工学の知識がないと研究開発できないし、それらは日本が苦手としている分野でもあるよね。

だから、数学や物理の素質がある人がじゃんじゃん医学部の方に入ってくるのは、確かに他の分野にとっては困るのかもしれないけど、決して悪いことばかりではないのかなあと思いました。

シャープが開発した18万円の電子レンジ

会話ができるようになったシャープのオーブンレンジ「ヘルシオ」、天気や食材に合わせて献立を提案 - 家電 Watch

いや~、なんか目の付け所が全然シャープじゃないなあと個人的には思うんですけどねぇ。電子レンジに18万も出す物好きが一体何人いるんだろう。ましてや、日本より物価の安い新興国では、なおさら売れないと思うんですけど。

アニメ『サイコパス』で描かれていたような、人工知能と家電が連動して生活をサポートする未来(たぶん50年後とか100年後の話)を見越して、こういう家電を開発してるのであれば、まあ、それはそれで悪くない選択だと思います。そんな遠い未来までこの会社が存続しているとは思えないけど。

A380の生産縮小

エアバス、A380の生産大幅減へ 航空会社の戦略変化:朝日新聞デジタル

う~ん。どうするんだろうなあ。全日空A380をホノルル便に就航させるとか言っているけどねえ。なんか、エアバススカイマークANAで機体の押し付け合いしてるだけじゃね?と思ってしまう。

CTC検出

日立化成、血中循環がん細胞に関して米MDアンダーソンと4年間の戦略的提携 | マイナビニュース

血中循環がん細胞(CTC)を用いたガン診断がなかなか普及しないのは、結局のところ、血中にいるガン細胞がごく微量で、それを特異的に検出(捕捉)するのが難しい、という点に尽きると思ってます。

しかし、こういった診断薬というものは、体内に直接投与するものではないので、臨床検査や認証手続きの期間が通常の薬より短いとされています。そのため、何か画期的なアイディアさえあれば、実用化まで一気に進んで大きな利益を得られるかもしれません。なので近年は、あまり医療とは関係のない分野の会社まで、こぞってCTCとか遺伝子診断とかに手を出してるのだと思います。

通潤橋の修復

通潤橋復旧へ義援金募集 山都町-熊本のニュース│ くまにちコム

熊本城も大事ですが、こちらの修復作業も必要ですね。でも私は、たとえ修復が終わっても、もう放水は行わないようにすべきだと思うんですよ(少なくとも年数回とか、それくらいの頻度にすべき)。

通潤橋は、水不足の土地に農業用水を行き渡らせるための水路橋で、あの放水は水路に土砂などが溜まらないようにするために行うものです。ですので、あんな頻繁(去年は年間100回程度)に放水することを想定して作られてるものじゃないですよね。放水の時の振動などは確実に橋にダメージを与えるわけですから、文化財保存の観点からももう止めた方が良いでしょう。これは天皇陛下の生前退位の話題と同じで、もうちょっとご公務の負担を減らした方が良いんじゃねえの?っていう話です。

妊娠検査薬の科学

妊娠検査薬 (にんしんけんさやく)とは【ピクシブ百科事典】
妊娠検査薬とは (ニンシンケンサヤクとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

ピクシブの記事を見て興味が湧いたので調べてみました。

人が妊娠すると、胎盤からhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)というホルモンが分泌されます。一般的に市販されている妊娠検査薬は、尿中のhCGを検出することで妊娠の有無を調べるものです。検査キットに尿を付けると、尿中のhCGとキット内の標識抗体が結合します。その状態で、尿が紙の上を浸透していき、判定ライン(紙上にhCG抗体がたくさん固定化されてるところ)上を通過します。もし、尿中にhCGが含まれているならば、標識抗体によって赤くなったhCGが判定ライン上のhCG抗体に捕捉され、ラインが赤く見えます。ちなみに、もう一本のラインは、コントロール(測定が正しく行われたかどうかを確かめる)用のラインです(参考記事)。

ライン上の赤色は、標識抗体に結合している金コロイド(つまり金の微粒子)の色です。Pixivやニコニコ静画によくある妊娠検査薬を持った艦娘のイラストを見て喜んでいる閲覧者たちの果たして何割が、その興奮の元となるあの赤いラインが煎じ詰めればただの金コロイドでしかない、という事実を理解しているのでしょうか。