新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

毎年恒例のTVアニメ話数単位10選。下記関連記事にあるように、

・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

というルールで、今年最も印象に残った話数を選出しました。

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『星屑テレパス』、第11話、「再戦シーサイド」

脚本:高橋ナツコ
絵コンテ:浜田将太
演出:鈴木真彦
作画監督:酒井孝裕、田中翼、高村遼太郎、平田雄三、迫江沙羅、reboot
総作画監督:酒井孝裕
まんがタイムきらら史上指折りのめんどくさいヒロイン・雷門瞬を攻略するクライマックス。かつて地球には自分の居場所はないと思っていた海果が、ユウや遥乃や瞬と出会って救われたように、今度は海果が瞬を孤独から救い出す。これまで何度も強い言葉を吐いて相手を傷つけてしまったがゆえに、自分はここにいてはいけないと思い込んでいた瞬。斜に構えた態度で孤独であろうとする一方で、心の奥底では自分が居てもいいと思える居場所を求め続けていた瞬。そのあまりにも不器用で臆病な生き様は、瞬と同じように孤独を抱え居場所を求め続けている視聴者の心をドンピシャで刺してくる。
関連記事:『星屑テレパス』の雷門瞬は、私達自身の心の写し鏡である - 新・怖いくらいに青い空

『スキップとローファー』、第6話、「シトシト チカチカ」

脚本:米内山陽子
絵コンテ:篠原俊哉
演出:平向智子
作画監督:天野和子、小島明日香、田中未来、中山みゆき、斉藤和也、岩崎亮
総作画監督:梅下麻奈未
この作品は主人公である岩倉美津未よりもむしろ、その周りのキャラクターに焦点が当てられていて、常に前向きで純真な美津未が無自覚のうちに周りの人を救っていくという群像劇的構造をしているが、この第6話では珍しく美津未自身に焦点が当てられ、彼女と聡介との関係性の変化を描いている。美津未を演じる黒沢ともよ氏のインパクトが強い本作の中でも、特に名演が光る回だった。

アイドルマスター シンデレラガールズ U149』、第3話、「海に沈んでもぬれないもの、なに?」

脚本:村山沖
絵コンテ:高橋正典
演出:高橋正典
作画監督:田典恵、小池智史、佐々木洋也
総作画監督:井川典恵
赤城みりあちゃんは、悪い大人たちによる曇らせには屈しない! みりあちゃんを演じる黒沢ともよ氏は、インタビューの中で、初期の頃はディレクターから「無邪気で、アイドルを遊びのように楽しめる純粋無垢な女の子」を演じてほしいというオーダーが多かったが、徐々に「もっとあざとくやってください」「もっと小悪魔っぽく」「元気いっぱいだけど、ちょっと大人っぽい艶っぽい瞳で見上げるような表情をイメージしたセリフのニュアンスが欲しいです」といったオーダーが増えてきたと述べている*1。天真爛漫な子どものようだけど、どこか大人を手玉に取るようなしたたかさも垣間見える、そんな赤城みりあちゃんの魅力を100%完璧に引き出したアニメ化だったと思う。

BanG Dream! It's MyGO!!!!!』、第10話、「ずっと迷子」

シナリオ:後藤みどり
絵コンテ:梅津朋美
演出:梅津朋美
作画監督:茶之原拓也、依田祐輔
CGディレクター:大森大地、遠藤求
バンドリIt's MyGOは、「居場所」にまつわる物語。高松燈や長崎そよにとってCRYCHICとは、人生で初めてできた大切な居場所だった。だがそれが無惨に崩れ去ってしまうという悲しい経験をしたからこそ、燈は今度こそは大切な居場所を守りたいと願う。どんなに裏切られ傷付けられても、相手を信じ続け、気持ちを言葉にすること。その尊い熱意が、ついには凍り付いた長崎そよの心をも溶かしてゆく。前回までの辛い展開を一気に打ち破る圧倒的なカタルシスを味わえる神回。

『SHY』、第1話、「シャイなので」

脚本:中西やすひろ
絵コンテ:安藤正臣
演出:安藤正臣
作画監督:末田晃大、田中雄一、小倉典子、中山みゆき
総作画監督田中雄一、末田晃大
近年よく見かけるコミュ障なヒロインと、ヒーローものの融合。日本を守るヒーロー・シャイこと紅葉山輝が圧倒的な可愛さ。と同時に、ヒーローが抱える孤独や、理想と現実の狭間でもがき苦しむヒーロー像など、ヒーローものの作品に欠かせないテーマを一通り見せていく構成。アニメ版1話として申し分のないエピソード。

『転生王女と天才令嬢の魔法革命』、第12話、「彼女と彼女の魔法革命」

脚本:渡航
絵コンテ:玉木慎吾
演出:玉木慎吾
作画監督:諸石康太、八幡佑樹、Mubon Hyeong Jun、Ryu Joong Hyeon、Jeon Hyun Jin、Jang Min Ho、Kim Shin Woo、Park Su Bok
総作画監督井出直美、松本麻友子、石川雅一
陽キャで面食いな女・アニスが、真面目な優等生タイプの女・ユフィのことを好きになってグイグイ攻めていく、という構造の本作。だが、ストーリーが進むにつれてアニスの抱える影の部分が浮き上がり、かつてユフィがアニスに救われたように、今度はユフィがアニスを救うという、王道の展開に。百合の攻守という面でも、2人の立場は見事に逆転し、全ての百合アニメ好きを歓喜させた最終回。

『君は放課後インソムニア』、第3話、「一つ星さん」

脚本:池田臨太郎
絵コンテ:池田ユウキ
演出:松井郁洋
作画監督:舛舘俊秀、鵜池一馬、香田智樹、上野卓志、畠山佳苗、パク・ミヒョン、ソン・ギルヨン
総作画監督:熊田明子
天文部のOG・白丸先輩の初登場回。やや中性的でクールな性格の女を演じさせたら戸松遥の右に出る者はいないと再認識させられる。後輩との距離感に悩んで悶々としているのもギャップ萌えで可愛い。

『僕の心のヤバイやつ』、第12話、「僕は僕を知ってほしい」

脚本:花田十輝
絵コンテ:吉川博明
演出:友田康
作画監督:前田園香、中城悦雄、柴田ユウジ、北川知子、降籏秀吉、真島ジロウ、壹岐悠ノ介、茂木琢次、渕脇泰賀、松尾亜希子、柳孝相
総作画監督:勝又聖人、瀬川健寿、茂木琢次
アニメ版の最終話。京太郎が自分の黒歴史と向き合うことで山田との関係性が進展していく。と同時に京太郎の姉・市川香菜が凄まじい存在感を放っており、さすが田村ゆかりだと言わざるを得ない。

ウマ娘 プリティーダービー Season 3』、第12話、「キタサンブラック

脚本:南幸
絵コンテ:及川啓
演出:成田巧、安川央里
作画監督:桐谷真咲、坂本俊太、冨永一仁、橋口隼人、中島順、福田佳太、三股浩史、はまだまこと、落合良亮、KAGO
総作画監督藤本さとる、福田佳太
ついに明かされるシュヴァルグランキタサンブラックへの巨大感情。「キタサンブラック…僕は君が嫌いだ…」から始まるあまりにもエモすぎるモノローグ。強靭な肉体、圧倒的な実力、誰からも好かれる性格…。自分が欲しいものを全て持っている強大なライバル。それは眩しい憧れの光であると同時に、そばに寄れば焼かれてしまうような強烈な光。それでも決して諦めることなく、キタサンの背中を追いかけ続けた先に見える景色。シーズン2のライスシャワーもそうだったが、主人公だけでなくレースに出るウマ娘一人ひとりにかけがえのない物語があるからこそ、これほど重厚な作品ができるのだろう。

『葬送のフリーレン』、第2話、「別に魔法じゃなくたって…」

脚本:鈴木智
絵コンテ:北川朋哉
演出:北川朋哉
作画監督:簑島綾香
総作画監督:長澤礼子
フェルンの魔法使いとしての成長と、ハイターとの別れ、ヒンメルゆかりの花の探索までを描く第2話。登場人物の動作一つ一つに意味のある緻密な演出、美しい風景描写、印象的な音楽。そのなかで、かつての勇者一行の姿を垣間見せると同時に、徐々に心を通わせてゆくフリーレンとフェルンも描かれる。交差する過去と現在を、静かに、美しく描き出してみせる序盤屈指の名エピソードだった。