新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

今期アニメのめんどくさい女

「めんどくせー!」「いいからそのめんどくさいの、全部ぶつけなよ、歌に!」(『ガールズバンドクライ』第2話より)

「ヨルってさ結構めんどくさいよね。達観してますってフリして意外と繊細だったり。私は大人、みたいな顔して実は負けず嫌いなとこあったり」(『夜のクラゲは泳げない』第5話より)

奇しくも今期放送されている2つのアニメで同じようなセリフが出てきたが、今期一番熱いキーワードがこの「めんどくさい」ではないだろうか。めんどくさいからこそ可愛い、めんどくさいからこそ好感が持てる、そういうめんどくさいヒロインが今ブームになりつつある。元々ネガティブな意味で使われていた言葉が、ポジティブな意味でも使われるようになるのは日本語でよくある現象であるが、アニメにおける「めんどくさい」もそうなのかもしれない。

かく言う私もめんどくさいアニメキャラが大好きだが、そもそも、どういう場合に「めんどくさい」が使われるのか。私の私見だが、以下の3条件を満たすキャラクターが、概ねめんどくさいキャラと言われていると思う。

①性格が捻くれていること。すなわち、発せられる言葉に棘があって、他人に対してあまり友好的でないこと。いわゆるツンデレで素直になれない性格であるとか、心に闇を抱えているような場合なども、広い意味で捻くれてると捉えられるだろう。過去アニメで例を挙げるなら、羽咲綾乃(はねバド!)、新条アカネ(SSSS.GRIDMAN)、雷門瞬(星屑テレパス)など。

②ある特定の人物等に強く執着していること。これは単に恋愛感情というだけでは言い表せない巨大な感情を抱えている場合が多い。具体的には、大場なな(スタァライト)、安達(安達としまむら)、長崎そよ(バンドリ It's MyGO)など。

③承認欲求が強いこと。すなわち、自分の能力を世間で認められて注目されたいといった欲求が強いこと。冒頭に挙げた場面に出てくる井芹仁菜(ガールズバンドクライ)、光月まひる(ヨルクラ)はこの傾向が強いと思う。

この3つの条件のうち、1つないし複数に該当するキャラクターは、めんどくさい性格をしている傾向が強いと言えそうだ。

また、最近流行りのガールズバンドもののアニメ、もっと言えば、女の子が集まって何らかの創作活動をするアニメは、承認欲求が重要なテーマとなってくるので必然的にめんどくさい女が出てくる頻度も上がるであろう。

井芹仁菜と光月まひるについては、①または③の観点からめんどくさい女とされているが、今後キャラクターどうしの関係性が深まる中で②のような観点が出てくるかどうかも気になるところである。

響け!ユーフォニアム』の主人公・黄前久美子もだいぶめんどくさいと言えるだろう。皆知っての通り、久美子は性格が捻くれている(条件①)し、麗奈に対して強く執着している(条件②)。そして、ユーフォニアムの演奏に関しては、実はメチャクチャ承認欲求が強いと思う。今後の展開のネタバレに成り得るのでこれ以上は述べないが。

ここで挙げたキャラクター以外にも、今期アニメは大勢のめんどくさい女が登場しており、「めんどくさい」は今期アニメを読み解くうえで欠かせない重要なキーワードとなっていると思う。