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『巴里マカロンの謎』感想

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

さて、〈小市民〉シリーズとして実に11年ぶりの新刊にして、初の短編集である。忘れかけている細かい設定なども思い出しながら読み進めていったが、まあ、何というか、小佐内さんも小鳩君も言動が可愛すぎませんかね?

まず、小市民として平穏な生活を送るためにお互いが困っていたら協力し合うという互恵関係の一環として、放課後に2人でスイーツを食べるために名古屋まで行くという、その行動がすでに回りくどくて可愛い。

そして、何かあるたびに小佐内さんがいちいち可愛いことしてきて、それが小鳩君の視点から語られているのが、これぞまさに〈小市民〉シリーズだという感じである。

では、ここで、小佐内さんの可愛いシーンランキングを見てみよう。

第3位。マンションのオートロックの自動ドアの前で「開けゴマ」とか言ってる小佐内さん。可愛い後輩のピンチを救うためにその子の家を訪れるという場面なのに何やってんのお前?

第2位。小鳩君にマカロンについて意気揚々と解説してくる小佐内さん。「これこそがマカロンです」は流石に爆笑するわ。

そして、第1位。ドヤ顔で決め台詞を言おうとして噛む小佐内さん。その後、何事も無かったかのようにしれっと言い直してるのも最高に萌える。

という感じで小佐内さんだけでも十分可愛いのだが、本書で登場する新キャラ・ゲストキャラもまた実に良い味を出している。

小佐内さんのことを「ゆきちゃん先輩」とか言って慕ってくる古城秋桜ちゃんホント可愛い。というかこの2人が合わさって行動している時の破壊力がハンパない。文化祭でキャンプファイヤーがあるからって、その火でマシュマロを焼こうという思考に至るのはマジでヤバいと思う。

あと、個人的にイチオシなのは『伯林あげぱんの謎』に出てきた真木島さん。先輩との連絡役を買って出ているのにその先輩からメールを無視されて、その事を部の皆に知られたくなくて、支離滅裂な嘘付いて誤魔化そうとしてるのがホンマ萌える。

何というか、米澤氏の作品は本当によく人間の心理を突いていると思う。それはささやかな虚栄心だったり、保身だったり、そういう誰にでもあり得る微妙な心の動きを小説に落とし込むのが、圧倒的に上手い作家なのだ。これは仕方のないことではあるのだが、主人公である2人がある種キャラクター然として描かれているのに対して、1回か2回しか登場しないゲストキャラはこういう人間臭い描写に満ちていて、どの話も実に見ごたえがある出来だった。