新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

朝香果林という女

アニメ版ニジガク、二周すると朝香果林の良さが分かってくる。

序盤は、エマといっしょに同好会の復活に向けて動き回る3年生として登場。普段は冷たくて少し怖いイメージすらある果林だが、第3話でかすみんから強奪したコッペパンをちゃっかりエマに分けてあげるなど、エマに対しては優しい一面を見せる。

そして第5話でついに本性を見せる。果林の部屋(意外と散らかってるのがまた良い)でスクールアイドルが載った雑誌を見つけたエマ(雑誌見られて顔赤くしてる果林さん可愛いすぎ)。エマが一緒にスクールアイドルやろうと誘うが、

「無いわよ、興味なんて全然」
「私、読者モデルの仕事もあるし、スクールアイドルやってる暇なんてないの」

いつも手伝ってくれてたから興味あるのかと思ってた、みたいなことをエマが言ったら、

「頑張ってるエマを応援したいと思っただけよ」
「そんな風に思われるならもう止めておくわ」
「もう誘わないで」

うわあ…

こいつ…めんどくせぇ…

振り返ってみれば、ラブライブの3年生は皆めんどくさかった。その中でも一二を争う面倒臭い女が朝香果林なのである。せっかく果林のこと思って誘ってきてくれてるのに、こんなふうに意固地になって反論してくるの、もうヤバいよね…。

そしていよいよ第9話。フェスへの参加が決まった同好会だったが、時間の都合で出られるのは1人だけとなる。周りに遠慮してなかなか誰が出るか決められない部員達。そんな中、果林一人だけが、対立を恐れることなく発言する。

その後、ダンススクールに向かおうとして重度の方向音痴ぶりを発揮する果林さん。そう。ラブライブの3年生はめんどくさい上にポンコツでもあるという伝統がここでも踏襲されている。

で、結局フェスには果林が出場することになるのだが、プレッシャーに押しつぶされそうになった果林さんは本番直前で楽屋から消え、心配してやってきた他メンバーに「ビビってるだけよ」と言い放つ。

果林さん…。あんだけ啖呵切っといて、本番前にこれはカッコ悪いよ…。

でも、その弱さが、人間らしい。

朝香果林は、クールで大人びた自分を演じ続けている人なのだ。いつも冷静沈着でカッコいい自分を演じ続けなければならないという強迫観念。上級生で読者モデルもやってるというプライド。皆の期待を一身に背負い、何としてでもライブを成功させなければという思い。そうしたプレッシャーで心折れそうになった果林は、はじめて他の部員の前で弱さを見せる。

そうして自分の弱さを曝け出し、大切な仲間の存在を意識することで、果林はようやく、なりたかった自分へと近づくのである。そこには、「在りのままでいい」なんて綺麗事は存在しない。勇気を出して一歩を踏み出せば、どんな自分にでもなれる。それこそがシリーズ全体を貫く大きなテーマ。

メインで活躍した回が2回(第5話と第9話)くらいしかないのに、この内面の掘り下げ方は凄くないか? 本作では侑ちゃんはずっと聖人君子だったし、かすみんは最初から最後までウザかったけど、それが一種の個性として機能していた。ところが、果林の場合は、とても一言で言い表せない、深みのあるキャラクターとして描かれていたように思う。

2期でどういう描かれ方をするのか、今から楽しみでならないですね。