新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

オタク趣味の残念女子がリア充女子高生と出会い仲良くなる作品―『ともだちマグネット』『トモダチログイン』

結構好きです。『わたモテ』的な自意識こじらせちゃってる感と、まんがタイムきらら的な女の子空間が、上手く相乗効果していて、読んでて楽しいですね。最近、ある種のスクールカーストのようなものに焦点を当てた作品が多い気がします。下位カーストのぼっち性を『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』みたいに徹底的に突き詰めていくか。それとも、『ともだちマグネット』『トモダチログイン』みたいに、上位カーストとの邂逅によって変化していく過程を描くか。同じスクールカースト系の作品でも、描き方によってこうも大きな違いがあるんですね。

どちらのタイトルにも「ともだち」という言葉が入っていることからも分かるように、ぼっち主人公であるマコちんもあやめちゃんも、性格がちょっとひねくれてる残念少女だけど、やっぱり友達が欲しいという本心は隠しきれないんですね。そして友達が欲しいと思うのは、作中に出てくるリア充女子だって同じだし、他の日常系の作品のキャラクターだって同じなわけです。ただそこには、現実の世界と同じように、実際に友達を上手く作れるか作れないかという格差があるだけです。その格差(『けいおん!』など、これまでの日常系でははっきりと描かれて来なかった事)を隠すことなく全面に打ち出しているのが、これらの作品だと言えるでしょう。

日常系作品を分類する方法はたくさんあります。例えば、りきおさんは、部室の有無によってそれを分類しています。『けいおん!』のように部活動がメインの作品もあれば、『ゆるゆり』『ゆゆ式』のように一応部室はあるんだけれどもそれ以外の場所での活動も多い作品もあるし、『Aチャンネル』『きんいろモザイク』のように部活動は一切関係のない作品もあります。中には『LSD~ろんぐすろーでぃすたんす~』のように、ガチの運動部が舞台となる作品まで登場しています。

一方、「感情の振幅」によって日常系を分類する方法もあるでしょう。女の子どうしの何気ない日常を描くのが日常系だとよく言われますが、よくそれを見てみると『けいおん!』のように季節のイベント事(文化祭や修学旅行や合宿)をメインに据えている作品もあれば、『ゆゆ式』のように本当に何もない普通の日常を描いている作品もあります。あるいは、『ゆるゆり』『桜Trick』のように百合描写が強めな作品かそうでないか、『のんのんびより』『ねこのひたいであそぶ』のように田舎が舞台になっているかどうかで分類する方法もあるでしょう。

それを踏まえた上で『ともだちマグネット』『トモダチログイン』を見てみると、上で挙げたような軸では上手く説明することのできない、また違ったタイプの日常系なんだという事が分かると思います。これは以前紹介した『彼氏ってどこに行ったら買えますの!?』も同様です。この3作品に共通する特徴として、主人公が非リア充で、リア充に対して強いコンプレックスを持っている点、友達を作る難易度に格差があることをはっきりと表現している点。そして、海燕さん・ペトロニウスさん・LDさんが指摘しているように、『僕は友達が少ない』的な「友達欲しい系」作品と同様の文脈を持っている点が挙げられます。

『ともだちマグネット』『トモダチログイン』は残念ながら連載終了してしまったわけですが、いずれこのような「友達欲しい系」の日常系版とも言うべき作品が注目されるようになるかもしれません。この2作は、日常系の1つのジャンルとしての「友達ほしい系」作品のパイオニア的作品となるのではないでしょうか。