新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

マアアさん学入門

今期もまた様々なアニメが放送されたが、自分はもう完全に、あるキャラクターに夢中である。それは『メイドインアビス 烈日の黄金郷』に出てくる最高に萌えるキャラクター。そう。深界六層の成れ果て村に住むピンク色のアイツである。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第3話より。

初登場は第3話。リコ達を見て集まってくる成れ果て達。そこにピンク色の成れ果てがやってきて、メイニャを掴み上げるのだが、力加減が分からなかったのか、そのままメイニャを押しつぶしてしまう! 幸いメイニャは無事だったものの、ピンク色の成れ果てに、自分より価値の高いものを傷付けた罰、「清算」の魔の手が迫る!

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逃げ惑うピンク色の後ろ姿が一瞬映るが、そのケツがあまりにも汚い! そして何故か、このシーンがDVDの宣伝に使われてるという…。

大切にしていたぬいぐるみを全部没収され、さらに皮と手をもぎ取られ、円盤の販促にまで使われ、まさにその身をもって我々視聴者に「清算」の怖ろしさを知らしめてくれた可哀想な成れ果て。ありがとう、ピンク色の人、君の事は忘れないよ。

こうして、名前も知らない成れ果ては、むごたらしい罰と汚いケツによって、我々に強烈なインパクトを残して消えていった。

ところが、次の第4話でアイツは意外とあっさり再登場を果たす。レグとナナチを探しに外へ出たリコとメイニャだったが、途中で成れ果てに襲われ大ピンチに陥る。そこに颯爽と現れるピンク色! 良かった、生きていたんだね。なんか清算で毟り取られたところ変色してるけど。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第3話より。

先日自分が傷付けてしまったメイニャを見て反省したのか、今度は素直に返してくれる。リコとメイニャが立ち去ると、ポロポロと大粒の涙を流して泣き出す。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第4話より。

ここで全ての視聴者はこの子に夢中である。はあ…もう、キュンキュンする。一体何なんだコイツは…。「まああああ」しかしゃべらないから何考えてるか分からないのに、この子の悲しみが痛いほど伝わってきて、胸が締め付けられる。これが、恋というやつか…。

その後、戻ってきたリコに「一緒に行こう」と誘われ、笑顔を取り戻すピンク色。さらにリコからマアアさんという名前も付けられて、二人仲良く手を繋ぎ歩き出す。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第4話より。

良かったね、マアアさん。相変わらずケツは度し難いけど。

そして第5話。レグとナナチを探すため村の外れの洞窟にやってきたリコとマアアさん。リコがロープを使って降りていくと、マアアさんもついてくる。いやいや、無理すんなって。上で待ってればいいやろ。どんだけリコとメイニャについていきたいんだよ。あと、その汚いケツをリコの頭に乗せるな。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第5話より。

案の定、洞窟の中で怯えるマアアさん。しまいには体調が悪くなって嘔吐してしまう。ほら言わんこっちゃない! でも可愛い。もう何やってても可愛い。

このあまりにも愛おしいキャラのことをもっと知りたいと思い、『メイドインアビス』第7巻を見返してみる。説明書きによると、マアアさんの全身はフサフサの毛で覆われており、体は伸び縮みができるのだという。また、足は無く、ひだのようなものを器用に動かして移動しているらしい。そして、体は「近くで見ると結構汚れて」おり、「乾いたうんちをやさしくしたみたいなにおいがする」らしい。要するに、ケツだけでなく全身汚い残念な生き物ということだが、その残念さが一周回ってますます愛おしく思えてくる。

続く第6話、「呼び込み」によってやってきた怪物に襲われ、またしても傷を負うマアアさん。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第6話より。

リコ達と出会ってからのマアアさんは、吐くわ、泣くわ、皮毟り取られるわ、酷い目にしか遭ってないんだよなあ。なんかもうもう見てて可哀想になってくる。悪気なくメイニャを傷付けてしまったこと以外、何も悪い事してないのに…。こんな酷い目にあってるのに、変わらずリコとメイニャを守ってくれるマアアさん。なんて健気で可愛いんだろう。まさに、ぐうの音も出ないほどの聖人

マアアさんも成れ果てである以上、かつては人間だったはずである。マジカジャいわく、成れ果ての形は人間だった頃に持っていた欲を反映するらしいが、マアアさんは一体どんな人間だったのだろう。ネット上では、マアアさんが言葉を話せないことから、小さい子どもだったのではという説もある。あるいは、ぬいぐるみに執着していることから、収集癖のあるオタクみたいな人間だったのではという説も。せめて後者であってくれ…。そうでないと、あの汚すぎるケツの説明がつかない…。

2022年11月3日 追記
マアアさんの正体について、10月13日に原作者であるつくしあきひと先生が解説していた。それによるとマアアさんは「呼び込みによって増えた『価値』や、村の信号などを使い村が作り出した細胞のような存在」とのこと(https://twitter.com/tukushiA/status/1580459515426009088)。つまり、元々人間だったわけではないので、上の仮説はどちらも違うという事になる。

いったい、マアアさんの何が我々をこんなにも惹きつけるのだろう。ここからはマアアさんの各要素について、簡単にまとめて考察してみよう。

ピンクを中心とした独特な色合いは、マアアさんの最も分かりやすい特徴の一つであろう。各部位に使われている色を以下にまとめてみた。

マアアさんの色の比較。『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第3話(右)および第4話(左)より。

腹部はほとんど色がなく、若干ベージュの混じった白色といった感じである。清算前の頭部は薄いピンク色であり、側面と背中はそれより少しだけ濃い目のピンク色となる。清算後は、頭部の左半分と腕がやや濃い目のピンク色になった。清算による変色がない頭部右側と側面・背中の色を同じ色にしている二次創作がたまにあるが、前者の方が若干薄いので注意されたい。いずれの色も刺々しい派手なピンクというわけではなく、まるで桃のような優しいピンク色で、見る者の心を暖かく包み込んでくれるような癒し効果がある。

それとは一転して、清算後の右手は毒々しい色合いをしている。色も見た目も明太子のようで、はっきり言ってキモい。臀部に関しては、さらに度し難い色をしている。紫がかった灰色とでも言うべきか。色単体で見るとそこまでキモくないが、これがケツに乗っかってくるとメチャクチャ汚く見える。暖かい癒しのピンク色と、度し難いグロテスクさの融合が、見る者の心をざわつかせる。

次に、マアアさんの皮膚がどうなっているのかについて、考察してみよう。原作第7巻の説明書きにもあるように、マアアさんはフサフサの毛で覆われている。マアアさんの顔を拡大してみると毛並みが見えることからも、それは裏付けられている(下図左)。さらに、よく見なければ分からないが、右腕の部分にも毛が確認できる(下図右)。

マアアさんの表面の拡大図。『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第4話(右)および第5話(左)より。

以上のことより、明太子状の右手を除く全身が毛に覆われていることはほぼ間違いない。さらに、マアアさんの毛に関して興味深い現象が観察されている。

マアアさんの毛が水をはじく様子。『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第4話より。

上図の点線で囲った部分のように、水滴(涙)が毛に引っ掛かって留まっている様子が見て取れ、水滴は毛に吸収されることなく丸い形状を保ったままになっている。このような現象は、マアアさんの毛に強い撥水性があり、水との接触角が非常に大きくなっていることによって生じる。毛の間に空気を含ませて水の浸入を防いでいるのか、あるいは、毛の表面に撥水性のコーティングがされているのか。

接触って確かめたいという抗いがたい欲求が沸き起こってくる。そのフサフサの毛を撫でまわしたい、ギュッと抱きしめてなでなでしたい。でもコイツ、乾いたうんちみたいな臭いなんだよなあ…。やっぱやめとくか…。

ご存じのとおり、アニメ版でマアアさんの声を担当するのは市ノ瀬加那さんである。多くの原作ファンは、想像以上に可愛らしい声で驚いたことだろう。ここでもまた、可愛い声と汚いケツというギャップが、見る者の心を混沌へと陥れる。スイカに塩をかけるとスイカの甘さをより感じられるのと同じように、汚いケツという残念ポイントが、マアアさんの可愛い声をより引き立てる。

また、マアアさんは「まあああ」という声しか出せない。言葉による意思疎通はできないが、それでもリコも我々視聴者も、マアアさんの感じた恐怖、悲しみ、喜び、あらゆる感情がまるで手に取るように分かる。これは、我々が赤ちゃんと接する時に抱くのと同じ感情ではないか。たとえ言葉が伝わらなくても、いや、言葉が伝わらないからこそ余計に、マアアさんの気持ちが痛いほど心に響いて、ただただ愛おしいと感じる。

マアアさんの形は自由自在に変化する。これは、マアアさんには決まった形が存在しないと言い換えてもよい。

マアアさんの手は伸ばすことができるし、体は前後・左右に曲げることができる。これは、ネコが周りの環境に合わせて形を変えて液体のように振る舞うのと同じである。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第5話より。

そして、体を曲げると、曲げた方向の皮が余ってシワみたいなものができる。そのシワはマアアさんの動きに合わせて刻一刻と変化していく。川の流れや、海の渦潮と同じように、形は絶え間なく変化し、二度と同じ形に戻ることは無い。

メイドインアビス 烈日の黄金郷』第5話より。

マアアさんの手が当たった箇所には、手の圧力によって窪みができる。皮の下には筋肉や内臓などがパンパンに詰まっているのではなく、ある程度隙間があることが伺える。

マアアさんの体の表面部は、ヘルメットのように固いものであってはならないし、ビニール袋のようにフニャフニャであってもならない。それは、マアアさんの形を維持できるだけの強度があり、同時に、押しただけで歪むくらいの柔軟性も持っていなければならない。

以上のような特徴は、人が着ぐるみを被った時に現れる特徴と似てはいないだろうか。実際、くまモンひこにゃんなどをゆるキャラを見ると、身体をひねったりした時にマアアさんと同じようなシワができる。マアアさんの形はまさに、我々がゆるキャラを見た時に感じる、本能的な可愛らしさ、愛らしさを体現している。

まとめ

以上の考察から分かるように、マアアさんには、

  • 桃のような温かい色合い
  • フサフサな毛
  • 赤ちゃんのような愛おしさ
  • ネコやゆるキャラと共通する体の構造

といった、人間が可愛いと感じるものが全て詰まっている、と言っても過言ではない。人類がマアアさんに惹かれるのは本能的に避けられないことなのである。

だが、ただ可愛いだけであれば、それは一時我々の心を癒すだけで終わりであろう。強烈な清算のシーン、グロテスクな右手、汚いケツ、うんちみたいな臭い。そういったグロテスクさや残念さが、可愛さと同居しているという点こそが、マアアさんを唯一無二の存在たらしめている。

こうしてマアアさんは人々の心に強烈な印象を残し、我々はマアアさん無しでは生きられない体にされるのだ。アニメ後半もどんな可愛いシーンが出てくるのか、楽しみで仕方がない。