新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『星合の空』の御杖さんが可愛すぎる件

『星合の空』。今期アニメの中ではダントツで素晴らしい。物語は、志城南中の男子ソフトテニス部の部長・新城柊真と、転校生・桂木眞己が再会するところから始まる。柊真の必死の勧誘もあり部に入部した眞己は、巧みな戦略によって部員達のやる気を引き出し、かつて弱小部と揶揄されていた彼らはどんどんレベルアップしていく。と同時に、部員達が抱える家庭の事情も浮き彫りになってきて…、という王道のスポーツアニメ。例えるなら、『響け!ユーフォニアム』の男子ソフトテニス版とでも言おうか。

だがしかし、そんな本作の最大の見どころは別のところにある。

第7話まで観てきた方々ならもうお気づきですよね。

そう。何故かソフトテニス部といつも行動を共にしている御杖夏南子さんの圧倒的可愛さこそが、『星合の空』最大の魅力と言っても過言ではないのです!

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御杖さんは眞己のクラスメイトで、髪はボサボサ、根暗でスクールカーストでは最下層にいるような女の子。自作イラストをSNSにupしてフォロワーの反応を見て楽しむのが趣味のオタク女子です。

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そんな彼女ですが何故か男子テニス部員達とは結構フランクに会話できていて、放課後はいつもグラウンドの隅で練習する姿を見ているんですが、その時の発言がもう色々ヤバい。

眞己が入部したのを見て「あんなカスの部活に入ってどうするつもりなんだ」(第2話)。

その直後、走り込みを始めた部員達を見て「バッカじゃないの? 走って爽やかソフトテニスかよ。アホらし。鳥肌」(第2話)。

再編し直したダブルスのペアに対して「余り者の2人じゃ見込みないんじゃない?」(第4話)。

マネージャーの飛鳥悠汰から「いつも眞己君のこと見てるね」と指摘されたら「アイツが転んで泣きっ面になるのを見たいんだよ」(第5話)。

もうね…。ホンマにもう…。コイツ性格ひねくれ過ぎだろ!

御杖さん、めちゃくちゃ口が悪いし、なんかもう色々こじらせ過ぎてて、一言でいえばヤベー奴なんですよ。

性格捻くれてるヒロイン、かわいいですよね~。最近で言えば、『はねバド!』の羽咲綾乃ちゃんとか、『SSSS.GRIDMAN』のアカネちゃんとか。御杖さんも彼女らに勝るとも劣らない捻くれ者なんですが、『星合の空』は男子の方もほぼ全員性格ひねくれてるんで、なんか、そういうところも『ユーフォ』に似ています。

とにかくこんな感じで部員の悪口ばっか言ってる捻くれ者の御杖さんなんですが、何故か知らないけど、コイツ、男子ソフト部のことメッチャ見てるんですわ!

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放課後、グラウンドの隅で一人ぽつんと座って、あるいは、飛鳥の隣らへんを陣取って、上に書いたような悪態付きながら、眞己達のことメッチャ見てるんですよ!

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そして、部活が終わったら部長や眞己達と一緒に下校。そのまましれっと眞己の家に上がり込んで、夕飯までご馳走になる始末。(しかも、柊真や飛鳥は手伝いとかしてくれてるのに、御杖さんだけは何もやらないwwwww)

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もうね…、本当にねえ…、君は一体何がしたいんだ?

極めつけが休日に強豪校と練習試合に行く回。前日は「私はそんなに暇じゃない」とか言ってたくせに、翌日部員達が相手校の校門前に着くとそこには…

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御杖さんいるしwwwwwwwwwwww

正直、アニメ見てる人も、作中の登場人物も、皆が皆「コイツ何やってんの?」って思ってるんですが、マジで理由が分かんないんですよ。

ほんと、部員でもマネージャーでもないくせに、コイツなんでいつもついてくるの? 眞己のことが好きなんか? あるいは、現時点で分かる断片的な情報からは、この子は教室や家で居場所がなくて、部員達と一緒にいるのが凄く居心地が良くてそこが唯一の居場所になってるのかなあとか推測されますが、そのあたりの事情は今後明かされていくのでしょう。

で、練習試合が始まって、志城南が想像以上に善戦して、その時の御杖さんの様子がさあ…

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メッチャ興奮してるやんwwwwwww

そして、試合が最も白熱してる時の御杖さんのカットがこちら。

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指の形wwwwwwwwwwwwwwww

いや、ホント最高だわ。以前は部員が努力してるのを冷めた目で見てた奴がさあ、試合が始まるとメッチャ興奮してガッツポーズとかしてるの! もう最高すぎるだろ、このアニメ。

そして、後日、息抜きのために多摩川河川敷でバーベキューをやることになったソフトテニス部の一同。

ええ、そうですよ。皆さんの予想通り。ここまで観てこられた方なら容易に次の展開が想像つくと思いますが、眞己たちが河川敷に行くとそこにはもちろん、

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また来たwwwwwwwwww

部員でもなんでもないくせに部のバーベキュー大会に当たり前のように参加する御杖さんwwwwwwwwww

もう、大っっっ好き………。何なの、この可愛い生き物?

この子が画面に出てきて何かしゃべるだけでもう大爆笑。

最終回に向けて、これからますます御杖さんから目が離せない日々が続きそうです。

エクセルのRAND関数で遊んでみた

【条件1】 普通のコイントス

エクセルのRAND関数は、0以上1未満の乱数を出力する関数である。エクセルのセルA2からA101に

=RAND()

と記入すると、下図のように0から1までの数値がランダムに表示される。

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次に、セルB2からB101に、

=IF(A2<0.5,1,0)

と入れる(A2のところには、A2~A101までのセル番号が入る)。これで、A列の値が0.5未満であれば1、0.5以上であれば0が表示される。

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そして、B列に出てきた1の総数を、セルC2に表示させる。

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これは要するに、100回コインを投げて何回表が出たかを記していることと等しい。

RAND関数の面白いところは、セルC2の値をコピペするたびに違う値が出てくるところだ。この図ではD列に値をコピーしていってる。

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では、この要領でC2の値を1万回コピーするとどうなるだろう。

………。

面倒くさいのでマクロを作って1万回コピペを繰り返した。

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この計算値1万個がどのような分布を示しているのか、グラフにしてみた。横軸が出力された数値、縦軸がその数値が出てきた回数を表している。

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これは要するに、「コイントス100回やって何回表が出るか確認」という操作を1万回繰り返して、出てきた数値の分布を見ていることと等しい。そして、この分布は予想通り、平均約50の正規分布となっていることが分かる。

【条件2】 スマホガチャモデル

今度は、ちょっと特殊なコインについて考える。セルB2からB101に、

=IF(A2<0.05,1,0)

と入力する。つまり、表が5%しか出ないコインである。これも同じように1万回繰り返してみた。

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図のようにピークがだいぶ左側に寄ったグラフになった。平均値はもちろん5で、表が10回以上出ることはほとんどない。一度も表が出ないパターンも62回あった。

これは、発生確率の少ない事象を何回も繰り返してるケースなので、スマホゲームのガチャで当たりを引く確率を示しているようなものである。

【条件3】 みんな平等モデル

では次に、もっと変なコインについて考えてみよう。まず、B列の上から1~5番目には、【条件1】と同じように、

=IF(A2<0.5,1,0)

を入れる。重要なのは6番目からで、

=IF(A7<(0.5-(AVERAGE(B$2:B6)-0.5)*0.8),1,0)

と入れる。何のこっちゃと思うかもしれないが、これは要するに、前回までに出た表の数によって表の出る確率が変動するようになっているのである。例えば、コイントス100回のうちn回目(nは6以上100以下の整数)のトスについて、

  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が0%ならば、n回目に表が出る確率は90%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が50%ならば、n回目に表が出る確率も50%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が100%ならば、n回目に表が出る確率は10%になる。

というような規則で、表が出る確率が10~90%の間で変動するように設定してある。例えば、1回目から20回目までに12回表が出たとすると、AVERAGE関数のところの値は0.6となり、21回目の確率は、

0.5-{(0.6-0.5)× 0.8 } = 0.42

で、42%となるのである。ここで0.8という数値は確率の変動幅を規定する定数で、私が勝手に決めただけなので、今はまだ気にしなくて良い。

この条件で1万回やった時のグラフは下のようになる。なお、表中のBnとは、n回目のコイントスで出てきた数値(表なら1、裏なら0)を表している。

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【条件1】と見比べてもらうと分かるが、とてもシャープなピークとなり、標準偏差も小さくなっていることが分かる。どうしてこんな事になるかというと、この【条件3】では、過去に表がいっぱい出ていれば表は出にくくなり、逆に、過去に表が少なかったならば表が出やすくなる。

要するに、みんな平等に計算値が50付近に収束するようになっているので、これは「みんな平等モデル」と命名しておこう。

【条件4】 格差拡大モデル

次は全く逆のパターンについて見てみよう。B列の6~100番目に入れる関数の符号を入れ替えて、

=IF(A7<(0.5+(AVERAGE(B$2:B6)-0.5)*0.8),1,0)

としてみる。この条件だと、

  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が0%ならば、n回目に表が出る確率は10%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が50%ならば、n回目に表が出る確率も50%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が100%ならば、n回目に表が出る確率は90%になる。

という感じである。例えば、1回目から20回目までに12回表が出たとすると、21回目の確率は、

0.5+{(0.6-0.5)× 0.8 } = 0.58

さっきは0.5の右横の符号がマイナスだったのに対し、今回はプラスになっていることに注意。これだとどういうグラフができるのだろう。

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ご覧のとおり、ピークがめちゃくちゃブロードになった! グラフの縦軸が先ほどとは全然違うことに注意してほしい。また、標準偏差も【条件1】と比べて3倍以上も大きくなっている。

この条件では、過去に表の出た回数が多ければ多いほど、表が出る確率は大きくなり、逆に、表が出ていなかったら表が出る確率がどんどん小さくなる。要は、裕福な人ははますます裕福になり、貧乏人はますます貧乏になるというパターンであり、これによって計算値は大きくばらつくことになるのである。

【条件5A】 生まれ重視モデル(左右対称)

では次に、B列の6~100番目に入れる関数を、

=IF(A7<(0.5+(AVERAGE(B$2:B$6)-0.5)*0.8),1,0)

にしてみよう。先ほどの条件では「B6」となっていたところが「B$6」と変わっている。つまり、6~100番目の表が出る確率は全て、1回目から5回目までに何回表が出たかによって規定される。

  • 1~5回目で表0回ならば、6回目以降に表が出る確率は10%
  • 1~5回目で表1回ならば、6回目以降に表が出る確率は26%
  • 1~5回目で表2回ならば、6回目以降に表が出る確率は42%
  • 1~5回目で表3回ならば、6回目以降に表が出る確率は58%
  • 1~5回目で表4回ならば、6回目以降に表が出る確率は74%
  • 1~5回目で表5回ならば、6回目以降に表が出る確率は90%

要するにこれは、生まれた時に備わっている条件(親の年収、健康な体、才能、etc.)によって、その後の人生が全部決まってしまうようなケースを表しているので、これを「生まれ重視モデル」と命名しよう。では、1万回繰り返した後の計算値はどうなっているかというと、

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なんかピークが6つに分かれている!

これはよく考えてみれば当たり前で、表が出る確率は、1~5回目のコイントス結果によって6タイプに分類されている。そして、この6タイプの確率で6~100回目のコイントスが行われた結果、値は(a)10%、(b)26%、(c)42%、(d)58%、(e)74%、(f)90%を中心とする6山に寄って分布することとなるのである。

(もし、計算回数が1万回ではなく、2万、5万、10万回と増えていったら、もっと滑らかな6つのピークが確認できたであろう。しかし、今回は1万回でご容赦いただきたい。回数をこれ以上増やすと私のパソコンがフリーズしてしまうのである。)

上図では、1~5回目までのコイントス結果、つまり5つの因子がその後の人生を規定しているわけだが、この数を色々変えていったらどうなるだろう。生まれ重視モデルで因子の数を4、3、2、1と減らしていった場合の結果が下図である。条件名の右端にある枝番が因子数を示している。

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要は、初期の因子数がn個の時、n+1個のピークが出てくるわけである(化学の研究でNMRを使った事がある人には馴染み深いピーク形状であろう)。最も極端なのが【条件5A-1】である。これはつまり、最初のコイントスが表か裏か(セルB2の値が0か1か)によって、その後の人生がガラッと変わってしまうというケースである。

逆に、因子の数を7、10に増やしてみた。すると、下図のように、ピークどうしが重なり合って効果が相殺された結果、1まとまりのブロードなピークが出てくるという形状になった。

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【条件5B,5C,5D,5E】 生まれ重視モデル(非対称)

では今度は、上で見た【条件5A-4】をさらに変形してみよう。【条件5A-4】ではB列の1~4番目が、

=IF(A2<0.5,1,0)

となっていたが、これを、

=IF(A2<0.4,1,0)

に変更する。つまり、最初の4回だけコインの表が出る確率が40%になったのである。すると、予想通り、5つのピークの大きさは非対称になり、全体の平均値も50からずれる結果となった。

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同じようにB列1~4番目の確率を30%、20%、10%という風に変えると、分布はますます左側に偏っていく。

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例えば、【条件5E-4】では、右側のピーク2つが完全に消えて、真ん中のピークもかろうじで見える程度である。そして、大部分のデータが計算値10か30の付近(つまり、最初の5回のトスで表が出た回数0か1のデータ群)に集中している。

【条件6】 生まれ&育ち重視モデル

【条件5】は、最初の数回のコイントスの結果によってその後の結果が大きく左右されるというモデル、つまり、生まれた時の環境によってその後の人生が決まってしまうというモデルであった。しかし、現実の人生では、「生まれ」と同時に「育ち」もまた重要である。以降では、そのようなケースについて考えてみたい。

そのためにまず、上で見た【条件5E-4】をさらに変形してみよう。B列の上から1~4番目までは、

=IF(A2<0.5,1,0)

とし、5~19番目を

=IF(A6<(0.5+(AVERAGE(B$2:B$5)-0.5)*0.8),1,0)

とする。ここまでは前と変わらないのだが、20~100番目を

=IF(A21<(0.5+(AVERAGE(B$6:B$20)-0.5)*0.8),1,0)

とするのである。つまり、20回目からラストまでの表が出る確率は、5~19番目までに表が出た回数によって規定される。模式図で表すと次のようになる。

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最初に1~4番目のコイントスが行われ、表が出た回数によって5~19番目の確率が5パターンに分かれる。その状態で5~19番目のコイントスが行われ、そこでたくさん表が出れば出るほど、20番目以降に表が出る確率が上がる。

「表が出る確率」を「人生で成功する確率」に置き換えて考えてみれば分かりやすいだろう。20番目以降に上手く表を引き当てるためには、5~19番目でたくさん表を出しておかなければならない。そして、そのためには1~4番目で「スタートダッシュ」に成功していることが重要なのである。だが、仮に「スタートダッシュ」に失敗したとしても、5~19番目である程度までは挽回可能。逆に言えば、1~4回目で上手くいっていても、5~19回目に油断してるとヤバい、というモデルである。

さあ、グラフはどんな感じになっているだろう。

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「生まれ」に由来するピークは、5~19番目の「育ち」の期間でならされて、右側に大きくテーリングした1本のピークとなった。

(本記事では詳しく述べないが、このピーク形状とそれが得られるまでの過程は、HPLCなどの分離カラムでピークがテーリングしてしまう理由を実に簡潔に説明しているものである。)

この形状を一番最初の【条件1】と比較してみると興味深い。実測値(ここではコイントスで表が出た回数)を横軸に、分布が正規分布に従っていると仮定した場合の期待値を縦軸にとったグラフを、Q-Qプロットと言う。詳細な説明は省くが、このプロットがy=xの直線状に並んでいればいるほど、その分布は正規分布に近いということが言える。

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【条件1】と【条件6E-4】でQ-Qプロットを比較してみると、前者はほぼ正規分布に従っていることが分かるのに対し、後者は直線y=xの下側にズレている。このような形状は、各値が対数正規分布に従って分布している時に見られるものである。

現実世界で正規分布を示すものには以下のようなものがある。

  • サイコロで出た目
  • ブラウン運動による粒子の移動距離
  • 大人の身長

一方、現実世界で対数正規分布に従う関係性には、次のようなものがある。

  • 人の所得
  • 市町村の人口
  • 各国のGDP

【条件6E-4】のy軸に、国数・市町村数・人口などを置き、x軸にGDP・市町村人口・年収などを置いてみるとなるほどと思うであろう。

この日本でたくさんの賃金を得るためには、良い教育を受けて知識や技術を身につける必要がある(育ち)。そしてそのためには、生まれた時の環境、つまり親の年収・遺伝子・才能等(生まれ)が重要となる。

国の経済活動が盛んになるためには、その国が建国してから今日まで常に発展し豊かになっていなければならない(育ち)。そのためには、その国の置かれた環境、つまり、肥沃な土壌・温和な天候・河川や山や海の配置・周辺国との位置関係など(生まれ)が重要となってくる。

「生まれ」は絶対ではなく、「育ち」で挽回することもできるが、あまりにも生まれた時の環境が悪いと挽回するのは難しい。「生まれ」が良くてもその後に没落することもあるが、やはり「生まれ」が良いほどその後の物事が上手くいく可能性が高いこともまた事実である。

【条件7】 教育機会均等モデル

生まれによって生じた格差を解消するためにはどうすれば良いだろう。1つ目の方法として、どんな家庭で育ったとしても同じように教育機会を平等に与えるということが考えられる。

【条件6E-4】のB列5~19番目を

=IF(A6<(0.5+(AVERAGE(B$2:B$5)-0.5)*0.6),1,0)

に変更する。【条件3】のところでチラッと述べた「確率の変動幅を規定する定数」を0.8から0.6に変えたのである。

この値を小さくすると、1番目から4番目までに出た表の数に関わらず、5~19番目の確率はだいたい同じくらいになる。

実際にグラフを見てみると、標準偏差が小さくなり、格差が解消していることが分かる。

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【条件8E-4】 累進課税モデル

もう一つ、格差を解消するやり方として累進課税が考えられる。

【条件6E-4】のB列20番目以降を

=IF(A21<(0.5+(AVERAGE(B$6:B$20)-0.5)*0.6),1,0)

に変更する。こうすることで、「生まれ」と「育ち」に起因する確率の差はある程度小さくなるので、所得の多い人ほど所得税率を上げる累進課税が行われていることと同じ効果がある。

この場合もやはり、ピーク幅が狭まり、格差が小さくなっていることが分かる。

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まとめ

このように、エクセルのRAND関数で乱数を作っておき、それを色々な関数で処理してやることで、様々なタイプのデータ分布を作り出すことができるのが面白い。

ただし、本記事の内容は私がエクセルを使って色々遊んでみた結果を考察しているだけであって、統計学的に厳密な議論をしているわけではないので、注意願いたい。

もし、何か内容に不備、あるいは他にもこういうモデルがあるんじゃないかといったアイディアがあれば、コメント欄かブックマークで教えてほしい。

  • 参考文献:古田徹也著『統計分布を知れば世界が分かる』(中公新書

『グランベルム』のアンナという強烈なキャラクターについて

日笠陽子。『けいおん!』の秋山澪役でブレークし、その後も天草シノ(生徒会役員共)、篠ノ之箒インフィニット・ストラトス)、遊佐恵美(はたらく魔王さま)、八神コウ(NEW GAME!)など、印象的なキャラクターを演じ続けてきた。もうすでにベテランの域に達しつつある彼女のキャリアに、また一つ、視聴者に強烈な印象を残したキャラクターが加わることとなった。

アンナ・フーゴ。魔術師の名門・フーゴ家に生まれ、幼い頃から立派な魔術師になる事を夢見てきた。しかし、彼女には魔術師としての才能は無く、彼女の母親も新月・エルネスタを養子にして家を継がせようとしていた。新月への嫉妬で怒り狂ったアンナは、魔術師達の戦い・グランベルムで執拗に新月への攻撃を繰り返すようになる。

物語の前半は、新月に粘着するアンナの姿がこれでもかと描かれる。とにかくこの粘着の仕方がハンパなくて、毎回、エルネスタああああああ!!!!!とか叫びながら、鬼の形相で攻撃を仕掛けてくるので、視聴者の誰もが「コイツ、ヤベえ奴や…」と思ったであろうし、それが一周回って最早ギャグの域にまで達していた。

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見てるだけならギャグでも、粘着される方からしたらたまったもんじゃない。アンナはまるで天災のように理不尽に襲い掛かり、暴れる猛獣のように制御不能だった。より分かりやすく例えるなら、高速で煽り運転してくるDQNみたいなものである。よくもまあこんなヤバいキャラクターを考え出したもんだと感心したが、これはまだほんの序の口でしかなかったのである。

第6話、自分の才能の無さに打ちのめされ、母親や新月から「魔術師以外の道で幸せになってほしい」と諭されたアンナ。一度は笑顔で新月を見送り、これで一件落着かと思いきや…

ED後のCパート、アンナは母親を襲撃、フーゴ家に伝わる魔石を盗み出し、「これでエルネスタに勝てる」とでも言わんばかりの凄まじい形相で不気味に笑っていました。

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で、ですよね~……。あれだけ新月に粘着してた奴がそう簡単に改心するわけないわ…。次回予告のナレーションでも「エルネスタを困らせたい、自分を嫌というほど意識させたい。それは全てを懸けたストーキングという名のライフワーク」とか散々な言われようで、もはや公式も完全にギャグとして描いてんじゃねえか!という感じになってきました。

そして第7話の最終決戦。新月にボコボコにされて降参する素振りを見せ、相手が油断した瞬間に反撃開始という卑怯極まりない戦いで新月を追い詰めていくアンナ。

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「アドレナリイイイイイン!」「ドーパ、ミイイイン!!!」「エンドルフィイイイイイイン!!!!!!」

って、もはや何言ってるか全然分かんねえよwwwwwwwwww

こうして新月を追い詰め、最後の一撃を加えようとするアンナの顔は、心の底から喜びで満ち足りて、恍惚とした表情をしていました。

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しかし、新月とアンナの間には決して埋まることのない才能の差が、歴然と存在していたのです。結局、新月に反撃を食らったアンナは、断末魔の叫び声とともに消え去っていきました…。

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そこには、アニメでありがちな、ハートフルで穏やかなエンディングなど一片たりとも存在しない。結局アンナは、最後の最後まで改心などすることなく、新月を恨み、妬み、嫉妬と憎悪に身を焦がしたまま消えていきました。この強烈なキャラクターを描き切ったアニメスタッフ、そして日笠陽子さんの名演に、最大級の賞賛を送りたい。

これは本当に凄い描写だ…。この話を振り返る時、私は、どうすればアンナは救われたのだろうと考える。

確かに、アンナの置かれた境遇には同情できる余地がたくさんある。すぐそばに圧倒的な才能を持った新月がいて、新月ばかりが周りから期待され、嫉妬で気がおかしくなってしまうのも分かる。それでも、アンナの周りの人達はアンナを救おうとしていた。その人達から差し伸べられた手を振りほどき、闇に堕ちていったのは、他ならぬアンナ自身の意思だ。

人は、不幸な状況に陥ったとしても、誰かしらが救いの手を差し伸べてくれる。けれども、その手を振り払ってしまったら、もう誰もその人を救えない。そういう人を救うことはとても難しい。

これは現実の社会でもあらゆるところで垣間見える現象ではないだろうか。「自分は病気ではない」と言って頑なに治療を拒む患者たち。「生活保護を貰うのは恥だ」と言って本来されるべきはずの支援を断る人達。

我々の社会は、こういう人達を救うことができない。『グランベルム』という作品は、このどうしようもない現実を我々に突きつけてくる。

『女子高生の無駄づかい』聖地巡礼

『女子無駄』ホント最高ですねえ。今期のアニメでは『荒ぶる季節の乙女どもよ』と同じかそれ以上に面白いです。

まず何よりギャグが最高に笑える。もちろん、あんまりハマらない微妙なものもあるにはあるんだけど、全体通して打率は非常に高いです。この作品のギャグというのはとにかく色んなタイプがあって、例えば、田中(バカ)はただひたすらバカで意味不明な言動が、赤﨑千夏さんの名演と相まって最高に笑える。オタやマジメについては、自意識過剰気味であるがゆえの自我の空転が描かれる。ヤマイやマジョについては、ただただ痛々しい言動がもう爆笑です。こういうふうに人によってギャグの構造が全然違っているので、いつ見ても飽きない面白みがある。

あと、キャラクターや風景の端にでてくるシュールな光景の数々。例えば、会話劇の背後にある意味不明な落書きとか、キャラがしゃべってるその隣でロボが電子工作してるのとか。それについて作中でいちいち説明されないのがまた良い味出してて素晴らしいです。

そして何より、作品の芯となるのは田中(バカ)の強烈なキャラクターと、赤﨑千夏さんの最高の演技。もうね、本当にね、殴りたくなるくらいウザい女子高生の役やらせたら赤﨑千夏の右に出る者は居ないですわ。

最も印象に残ってるシーンは、電車の中でバカとリリイが会うのと、ヤマイとバカがトイレに行くシーン。絶妙に汚らしい音を立てて指を舐めた後、それを服で拭く! トイレで手を洗ったあとスカートで拭く! このガサツさよ。これをアニメで表現できるのは本当に凄い。

『かぐや様は告らせたい』第15巻と『弱キャラ友崎くん』について

かぐや様は告らせたい』第15巻、いわゆる「氷のかぐや様」編である。

読んでいて涙が出た。

四宮かぐやは元々氷だったのではない。

多くの人から何度も何度も傷つけられて、かぐやの心は氷になったのだ。

この作品はこれまでずっと、誰かの小さな行動が他の誰かを絶望から救い出すことを描いてきた。世界がそのようになっているのならば、逆のこともまた起こり得る。これは、かぐやという少女に向けられた誰かの感情が、どうしようもなくかぐやを傷つけていく過程…。

彼女がもし、藤原みたいにIQ3の、良い意味でバカな奴だったら、嫌な事があってもその日だけ泣いて後はきれいさっぱり忘れてしまうことだって出来たかもしれない。でも、かぐやは、どこまでいっても真面目で、誠実で、誰かを傷付けたくないと真摯に願っていたからこそ、誰かを傷つけたり誰かから傷つけられたりするたびに、その傷はまるで酒瓶の底に溜まった澱のように、心の奥に蓄積し続けて、かぐやは心を閉ざしてしまう。

私達が第1巻の頃から見てきたのは、自分を変えようと努力するかぐやの姿だったのだ。そこには聡明で狡猾な四宮家の令嬢としてのかぐやも、御行のことが大好きで仕方がない乙女なかぐやもいる。でもその根底には、誰かを傷つけてしまう自分が嫌いで仕方なくて、自分を変えようと必死にもがき苦しむかぐやがいたのだ。

それは御行もまた同じである。最愛の人から見捨てられて、自分を変えなければ自分は誰からも愛されることはないと思い詰めた御行は、学校の成績に固執し、まさに「命を削る」と形容しても過言ではない壮絶な努力を繰り返して、かぐやと対等であろうとする。

自分を変えなければという思いに囚われ、そのために努力するなかで疲れ果て、心折れそうになっているのが、今のかぐやと御行なのである。では、彼らを救い出す方法があるとすればそれは何なのだろう。「あるがままの自分を肯定してくれる人がいれば救われる」なんていう月並みで単純な解決策など、本作には一切存在しない。御行が無理に無理を重ねて成績1位となり、かぐやもまた自分を変えて御行に歩み寄ろうとしたからこそ、2人の今の関係がある。それは疑いようのない事実である。今さらそれらを全て否定して素の自分でいるなんてことは出来ないのである。

彼らを本当の意味で救うのは、「半分」なのである。それは「中庸」と言い換えてもいいかもしれない。自分を変えようとしなければ何も始まらない、でも、無理をして自分を偽るのは苦しいだけでは? あるがままの自分を肯定して生きたい、でも、それって同じ過ちを繰り返すことにならないか? 自分を変えることに疲れたからといってその努力を全部やめてしまうのではなく、疲れたなら少し休む、そういう選択があってもいいのではないか。そのことに、かぐやと御行はようやく気付いたのだ。

結局人は0か100という極端な選択の中で生活しているのではなく、その中間の立ち位置で何とか折り合いをつけて生きることしかできない。その当たり前の事実を当たり前に描くことが、令和時代の物語の一つの潮流になるのかもしれない。

実は『かぐや様』第15巻と同じようなテーマを扱った作品として『弱キャラ友崎くん』がすでにある。それについても記しておかなければならない。

主人公・友崎はゲームオタクの陰キャで学校には友達もいなかったのだが、日南という女子生徒から指南を受け、服装や話し方を徹底的に変えていく。そうすることで友達も増え、少しずつリア充的な高校生活を送れるようになった友崎であったが、日南の指導方針への反発などもあって師弟関係を解消し、素の自分でいようと誓う。趣味が同じ女子生徒と休日に会い、何の気兼ねもなく楽しく会話することができて友崎は安堵する。しかし、トイレの鏡に映った自分の姿を見て、友崎は思った。

俺は今日は自然体で、素の自分で行くつもりだったから、特に服も考えずに着たし、髪に関しても、特にワックスを使ったりはしなかった。だから、ろくに鏡も見ずに、素のまま、ありのままの自分として、外に出た。着飾ることもある種の『スキル』のような気がしたし、それをするのは自分を偽っているようにも感じたからだ。
そしてその結果、鏡に写った自分の姿は。
気持ち悪いゲームオタク、だった。
背筋は曲がり、口角はだらりと下がっていて、しかも清潔感のない、決しておしゃれとはいえない服に身を包み、どこかうつろな目で自分を見つめる俺の姿は――
自分で自分に、嫌悪感があった。
(中略)
その自分の表情は、姿勢は。力なく、どこかうつろで幼く、端的に言って気持ち悪かった。
(『弱キャラ友崎くん』、第3巻、312~313ページ)

これこそが「中庸」の真髄なのである。ここに作者が言おうとしていることのエッセンスが詰まっている。日南と出会ってから友崎は良い方向に変わった、でも、日南のやり方がすべて正しいとは限らない。無理して着飾りすぎるのは苦しい、でも、完全に素の自分でいるのも駄目。

人は、変われない。でも、人は、変わることができる。矛盾しているように聞こえるが、結局、人とはそういうものなのだ。我々は、素の自分とか着飾ってるとか、変わる変わらないとか、そういう単純な0か100かの世界で生きているわけではない。そういう事実をこの2作品は描いている。

ところで、『弱キャラ友崎くん』のヒロインである日南は依然として、0か100かの世界で、完璧な自分を演じようと努力しているように見える。その姿はまさに以前の御行会長のようだ。部活にせよ、勉強にせよ、友人関係にせよ、あらゆることに全力で取り組み、普通の人ならとっくにぶっ倒れててもおかしくない尋常ならざる努力を続けているのが日南葵である。そして驚くべきことに、彼女がそこまでして自分を偽ろうとしている明確な理由が、今もなお読者には分からないのだ。物語はこれから、その謎を解き明かす方向に進んでいくだろう。

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